第22話 哀れな懇願
「────なるほど、ラトネを捨てたのか」
カナト共から何が起きたのか、説明を受けた。
要はラトネを犠牲にして、自分たちだけノコノコと帰還したという訳だな。
「違う! 俺たちは──」
「顔を上げるな、土下座のままでいろ。仲間を追放するような連中の言い訳なんて、聞きたくないんだが?」
「それは……お前を追放したことと、今回の件は関係ないだろう!」
「そんな態度でいいのか?」
「うっ……悪かったよ。……頼む、ラトネを助けてくれ」
こいつらはボスに敗北し、俺たちに救いを求めてきた。自分たちでは、どうにもできないことを理解しているのだ。
すでに俺のことが上だと、認めているのだ。
「ボク達がこんなに頭を下げているんスから、さっさと助けてくださいッスよ!!」
「そうですよ! 慈悲の心は無いのですか!? 私たちもかつては仲間だったじゃないですか!!」
「年増と腹黒聖女は黙ってろ」
「と、年増!?」
「は、腹黒!?」
頭の悪い女はこれだから嫌いだ。
情に訴えることしか能がない。話を乱し、面倒にする。
……だから嫌いなんだ。
「情けないな。テイマーをバカにした分際で、俺の力を求めるなんて」
「……あぁ、俺たちが間違えていた。テイマーは確かに不遇職だが、魔物の知識だけはズバ抜けている。有効活用さえすれば──」
短剣をカナトの手の甲に突き刺す。
「ぐ、ぐぁあああ!!」
「バカにしているのか? 舐めているのか?」
「な、何がだ!? 認めているだろう!?」
「不遇職だの有効活用だの、上から見下してるんじゃねぇよ。俺は既にお前よりも上にいるんだからな」
短剣を手の甲から抜く。
「う、腕が……腐る!?」
「後で治してもらえ。それよりも、これを見てどう思う?」
先ほど更新した冒険者カードを見せた。
「………………は?」
「え、SSS級……ッスか!?」
「あ、あり得ないです!? そ、そうですよ!! 偽装に決まっていますよ!!」
三者三様の反応。
中でも唖然としているカナトが、一番おもしろい。口をあんぐりと開けて、バカ丸出しだ。
「アルガくん、この人たちはなんなの? 見ていて鬱陶しいんだけど」
「俺を追放した連中ですよ」
「あぁ……例の。見る目がないね」
シセルさんは冷淡に呟いた。
「あ、アルガ……この人は?」
「シセル・ル・セルシエルさんだ。聞いたことくらいあるだろ?」
またしてもカナト共は、三者三様の反応を見せた。
「し、し、シセル様!?」
「あ、あ、あり得ないッスよ!! う、ウソに決まっているッス!!」
「そ、そうですよ!! 人類最強の御方が、底辺テイマーの仲間になる訳がないですよ!!」
かつての俺しか知らないのであれば、その反応は妥当だろう。
だが──
「信じようと信じまいと、そんな反応なら俺は手助けしないぞ?」
本当に腹の立つ連中だな。
本能的には俺の方が強いことなど、既に認めているだろうに。
「わ、悪い……。だ、だが……どうしても信じられないな」
「で、どうして欲しいんだよ。信じられないのならば、俺に助けを求めるのは止めるか?」
「い、いや! ……た、頼む。ラトネを救ってくれ。俺たちには……お前の知識が必要なんだ」
カナトの言葉を聞き、俺は2本の指を立てた。
「2つ、条件がある」
「な、なんだ? 俺たちにできることなら、なんでも言ってくれ!!」
「1つ。ラトネのいる迷宮には、俺とシセルさんの2人で挑む」
「お、俺たちは──」
「何もせずにジッとしていろ。たかがS級如き、何の役にも立たない」
「……わかった、2つ目はなんだ?」
「ラトネの引き渡しは、ギルド内で行う」
「……? あ、あぁ。わかった」
「あ、もう1つ条件を加えてもいいか?」
「な、なんだよ」
俺は右足を大きく後ろに伸ばし──
「これまでの──仕返しだ」
──カナトの顔面を蹴った。
「がッ……」
「たった一撃で気絶か? 情けないな」
「大丈夫ッスか!?」
「カ、カナト!?」
「これで交渉成立だ」
顎を砕かれ失神するカナト、それを心配するバカ女2人。
ついに、ついに、ついに。
千載一遇のチャンスが、舞い降りてきた。
俺の仕返しは、こんなものでは済まない。
救うと口では言ったが、ヤツらに……地獄を見せてやる。
バカ女2人が俺を糾弾する声を聞きながら、俺たちはその場を去った。
ごめんなさい、この話が抜けていました。
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