⑨ ヘビロテすぎるスパゲッティ(上)
この世には二種類の人間がいる。
好きなメニューなら毎日でも食べたい者と、そうでない者である。
こんにちは、こんばんは。
アフォリズムもどきのオープニングで始めました、今回の昼飯ミッション外伝。
キッチン担当者として悩ましい問題を孕んでいる箴言(笑)だと、密かに自負しております。
私は『いくら好きでも、毎日のように同じメニューが被るのはしんどいなあ』派なので、あまり根深い問題にならない(……多分。家族に聞かないとわかりません。テメーも大概おんなじようなモン作ってるぜ、と思われている可能性も、無きにしも非ず)でしょう。
でもキッチン担当者が『好きなら毎日でもwelcome!』派だと、家族にそうでない人がいる場合、困惑案件になります。
何故知っているか?
何を隠そうウチの母が、『好きなら毎日でもwelcome!』派だったからです。
一応、母の名誉の為に補足しますが、彼女は決して料理下手ではないです。
弟が小さい頃から内職に励み、中学に上がる前くらいから外でフルタイムで働いていましたから忙しく、メシの支度に時間をかけられない中で頑張ってもいました。
でもね。
彼女は本質的に『好きなら毎日でもwelcome!』派なので、結構、同じメニューがヘビロテで出てきます。
これは子供~学生時代、地味に困りました。
いえね、マズくはないですよ。
むしろ美味しい。
でもしょっちゅう出てくれば、やはり厭きます。
しかし遠慮がちに『あのう、たまには違うものを……』などと言おうものなら
『なら食うな!』『文句があるなら自分でやれ!私は二度と作らない!』
等々、『!』付きでまなじりを決して言われそうなので、有り難く黙々といただいておりました(笑)。
ま、作ったものにケチつけられるのは、私だって腹が立ちますけどね。
息子がまだ小さい時、テーブルに並んだおかずを一瞥して『他に何かないの?』とのたまった時は、幼児に近い子供が相手でもガチで切れましたしねえ(笑)。
私自身、昔から決して料理は嫌いではありませんし、中高生の頃からたまにはメシの支度を手伝ったり休日の昼飯ミッション(笑)をこなしたり、しておりました。
でも、子供~学生時代の娘さん、が、学校のかたわら毎日家族のメシ作りをするのは、ハードルが高いです。
今思えばさすがに母もそこまで要求しなかった気もしますが、彼女は、
『一度手を付けた家事は手を付けた人が担当者。やって当たり前。やらないなんて許さない』
的な謎規則を無意識に持っていて(と私は感じていました。例えば、いつの間にか夕飯後の食器洗いは私の仕事になっていて……、母を含め誰も代わってくれませんでした)、下手に食事を作ったりすれば
『メシの支度はれいちゃんの仕事。絶対』
認定されそうで、怖ろしくて手が出せませんでしたね(笑)。
就職と同時に私は社員寮へ入って実家を出たので、その後の実家メシ事情がどうなったのか詳しくはわかりません。
ただ弟が時折、『いくらウマいと言ったからって、おんなじものばっかりはなあ』的なボヤキを漏らしていましたから、変わらなかったのでしょう(笑)。
母にはきっと我々ガキ共のボヤキ、理解出来ないのだろうなと思います。
だって彼女は本質的に、同じメニューが苦にならないのですから。
これはもう、もって生まれた嗜好の問題と言いましょうか。
下戸には上戸の気持ちがわからない、嫌煙家は愛煙家の気持ちがわからない、のに近いくらい、両者には深い隔たりがある気がします。
彼女にとって『同じメニューばかりは厭きる』などという人間は、わがままな贅沢者という感覚でしょう。
別に贅沢なんじゃなくて、色々な料理とか味を楽しみたいだけで……などともごもご言おうものなら
『それが贅沢なんだ!』
と一喝されて終わりそうな気がします(笑)。
……長くなったので次回へ続きます。




