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迫る美少女

 涼しい顔でとんでもない宣言をする金城さんに処理が追いつかず、硬直する俺。

 

 「はぁ? そんなデタラメ誰か信じると思ってるの?」

 「デタラメ? あなたこそなんの根拠があってデタラメだと言うのかしら?」


 そんな中2人の言い争いは激化していった。

 何故かこの場に現れ恋人を自称しだした金城さんと復縁を申し出た比嘉川。

 2人のおかげで俺の楽しく平和な高校生活は既に崩壊の兆候が見えている。

 今年厄年とかなのか?

 1度お祓い的なものに行った方がいいかもしれないな。


 「入学式してまだ3時間しか経ってないのに付き合うとか常識的にありえない」

 「それはあなたの狭い視野での常識でしょう? 根拠と言うには乏しいと思うけれど?」

 「くっ……でも2人、教室でほとんど話してなかったし……だからやっぱりありえないって。なんのつもりか知らないけど変な嘘吐かないでよ」

 「私の事見ていたのね」

 「ち、ちがっ。たまたま目に入っただけだしそもそもあんたなんて見てないし」

 「そう。じゃあ彼を見てたの?」

 「ぐっ…………」

 「何故黙るのかしら? 私はただ質問をしているだけよ?」

 「うっさい。今日はもう帰る! レンタ、続きは近いうちに。じゃあね」


 劣勢の空気に耐えかねたのか、比嘉川は逃げるように階段を降りて帰って行った。

 完全に足音が途絶えると、この場には俺と金城さんの2人のしかいない。

 金城さんは、腕を組壁に背中を預けて黙ったままその場にとどまっている。

 これどう考えても話しかけないといけないやつだよな?

 正直よく分からない人だし下手につついて蛇が出てきても困る。

 でもめちゃくちゃ話しかけられる待ってるよなぁ。

 なんかチラチラこっち見てるし。

 意を決して声をかけた。


 「あれは一体なんのつもりなんだ?」

 「あれってどれのことかしら?」

 「全部だよ全部。意味わからんぞ。特に、つ、付き合ってとか言い出したところとか」

 

 俺の記憶が確かなら今日知り合ったばかりの隣の席の口の悪い変な美少女。

 金城さんの印象はそれだけだ。

 付き合うとかそういう話はした覚えがない。


 「でも私が来たおかけであなたは助かったわ。そうでしょ?」

 「別に困ってなんて……」

 「嘘。私が様子を見た時、あなた困った顔をしていたわ。それも見事なまでの困り顔だったわ」

 「そんなことは」

 「ある。実は最初から見ていたの。ほんとに元カノだったのね。復縁を迫られていたようだけど1度振ったのよね?」

 「そうだけど」


 確かに出てくるタイミングは測ったぐらい絶妙なタイミングだったけどまさか、つけてきていたとは。


 「それですぐに断らなかったことを考えると、実はまだ未練がある、ううん嫌いにはなってないってところかしらね。でも即答して復縁出来ないだけの理由もある」


 また見事に当てられ言葉に詰まる。

 金城さんは一体なにが目的なのだろう。

 ただ自分の観察眼を自慢したいだけには見えない。

 他に目的があるのは間違いないが、それが見えてこない。


 「黙るってことは正解って言ってるのと同じよ? ……まぁいいわこれはあくまでも私からの提案なのだけど実際に付き合ってみるというのはどうかしら? そもそもあなたを追いかけたのもそれを伝えるために追いかけてきたわけなのだけど」

 「もしかして俺モテ期が来たのか? 俺の好きなの?」

 

 1日2回も告白されるなんてこれはもうモテ期と言えるはずだ。


 「どっちも違うわ。勘違いしないで」

 「え?」

 「何を間抜けな顔をしているの? あなたがモテないとは言わないけれどこんなのをモテ期とは言わないわ。私だって1日2回の告白ぐらい何度もあるもの。ちなみに最高は1日5人」

 「そんなことまで分かるもんなのか?」


 脳内を読まれたような発言にふとそんな疑問か頭をよぎった。


 「えぇ何となくなら。特に男子の思考は単純で読みやすいもの」


 なんだかちょっとバカにされているような気もするが。

 あとしれっとマウント取るのもやめてくれ。


 「こほん。話を戻すわ。私と付き合いなさい」

 「ちょっと待った。なんでそうなったのか全く見えないのだが?」

 「知らない方が幸せな事も世の中にはあるのよ?」

 「なんか怖いんだけど……聞かないと何も分からないし」

 「そうね。確かに説明する責任はあるわね、いいわ。教えてあげる。さっきも話したけれど私は1日5人から告白されるぐらいモテるの」

 「ソウナンデスネ」

 「黙って聞きなさい。……それで中学時代ほぼ毎日告白される大変な目にあったのよ。だから私はこの反省を活かしてどうすればこういう面倒を回避できるか考えたわ。そして思いついた」

 「それが人をストーカーしてプライベートを暴いて嫌われるってこと? 痛てぇ。軽い冗談だろ本気で足を踏みつけるなよ」

 「私、冗談は苦手なのよ。あまり言わないようにしてくれると助かるわ。それで私が考えついたのが彼氏を作ってしまおうという作戦よ」

 「なるほど? まぁよくある話だな。でも俺に偽の彼氏をやるだけのメリットはないと思うが? むしろ面倒しか無さそうだし」


 男避けに偽の彼氏を作る美少女は物語を探せば沢山出てくるようなよくある対策だ。

 物語では成立するものだが現実ではそれに付き合う男子はその間恋愛出来ないデメリットがある。

 その女の子のことを好きにでもならない限りは受けるメリットがないように感じる。

 入学そうそう彼女を作る可能性を捨ててまで協力する気にはなれないというのが本音だ。

 しかも元カノからの復縁の話もあるし。


 「勘違いしているようだから言うけど私はあなたに偽の彼氏を依頼しているわけじゃないわ言葉通り彼氏になってと、お願いしているのよ。理解して」

 「好きじゃないのに?」

 「好きじゃなくても付き合っている人なんて大勢いるじゃない。まだ不服そうね、わかったわ、ひとつメリットを提示してあげる。明日のお昼からお弁当を作って来てあげるわ。どうかしら?」

 「でも俺今、元カノから復縁迫られているんだけど?」

 「ならこうしましょう。私とあなたが1度付き合う。それで引くようならその程度で復縁を迫ってきたことになる。そんなの絶対長続きなんてしないわ。だからその覚悟を確かめるために私を利用するの。それならあなたにもメリットがある」

 

 金城さんは自分が何を言っているのかわかっているのだろうか。

 わかってて言ってるんだろうなぁ。

 目が本気だ。

 金城さんがそこまでして、俺と付き合いたい理由は結局分からないのだが、俺はその熱意に押される形でその提案を受け入れる事にした。

 いくら反論しても折れないし受け入れた方が早く帰れそう。


 「よろしくお願いします」

 「ええ明日からよろしく」


 連絡先を交換し、学校から出る頃には既に日が傾きつつあった。

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