三又の流れ
パシフィック・フェデレーション・アシュランス専門校。
かつて、今もなお、世界を震撼させているゲート、インベーダーの存在。
異世界へ繋がる門より来たる、友好的な人類種──異類人、ネイバーとの交流。
それらに対する知識と経験、変化していく世界へ順応するべく創設された、小・中・高一貫の学術機関。
学園島と呼ばれる所以を内包する人工の土地には、現在三つの勢力が蔓延り、火花を散らしていた。
『大規模ゲートの破壊を確認! 残存していたインベーダー反応も消失! 戦闘終了です、お疲れさまでした!』
『終わったぁ~。今回のは中々ハードだったねぇ』
『以前のゲートより期間を置いて発生したからか、出てくる連中もしぶとく、手ごわかった印象を受けたな』
『被害が大きくなる前に食い止められてよかったです。ちなみにロゴス、夜叉の反応はどこに?』
『えっと……ゲートの破壊で生じた魔力の霧散に乗じて、行方をくらませました。……追跡も、不可能です』
『例の如くとはいえ、姿を消すのが上手すぎるな……』
一つはアストライア。
魔力偏向装置によって不定期に出現するゲート、インベーダーの対処に当たる人類敵対種対抗組織“アライアンス”の傘下組織。
その中で特設された戦闘部隊“ニューエイジ”。
特注のパワードスーツであるフレスベルグに身を包むマヨイ、リン、エイシャで構成された学園島の守護者。
そんな彼女達の活躍によって、人々の平和は守られていた。
「特位インベーダーや怪人は出てこなかったけど、不思議な奴らだったな」
『そうじゃのう。よもや亀が空を飛んで、高速で回転しながら突撃してくるとはな。超質量な外見に違わず、物理・魔力ともに防御力が高めであった』
「ナイトスタイルで全部粉砕できてよかった」
『いや、向かってくる敵を全て殴り壊すのはどうかと思うぞ……』
一つは夜叉。
フレスベルグを製作した本郷博士によって製作された、アーティファクト“殺生石”を核としたパワードスーツ“ヤシャリク”。
装着者の命を吸い尽くす性質を持つヤシャリクに宿る人工知能、リク。
その完全適合者である変身者、天宮司アキト。
彼らはリクのエネルギー源である魔核の確保、理不尽に脅かされる命を繋ぐ為、という二つの目的を主として活動するイリーガルヒーロー。
世間に認められずとも、身を張る英雄の姿が学園島にあった。
『警告。アストライアの索敵範囲が拡大されました。これ以上の観察、及びデータ収集は危険と判断。撤退を推奨します』
「個人的には粘りたいが、頃合いか。構成員をけしかけて失うよりはマシ……我らの掲げる至高へ到達する為にも、な」
『観測情報の全てをネビュラスサーバー内に保管。後に確認を』
一つはネビュラス。
近頃になって頻出する怪人……特位インベーダーの力を利用し、学園島に混乱をもたらす悪の組織。
人類を新たなステージへと至らせる為などと嘯き、命を命とも思わない非道の限りを尽くす存在。
ネビュラスによって怪人化した、された者は重度な後遺症に悩み、予後の経過も芳しくない程にだ。
それぞれの思惑、理想、願いがもたらす対立。
別たれた三つの勢力によって、学園島は混沌を極めていた──




