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ニューエイジの後始末

 夜の帳が降りようとする頃、ニューエイジ達は旧死体処理場を調査していた。

 不可解な点の多い今回の一件、怪しく感じていたのは当事者のみならず。

 アストライアの部隊が照明や機材を持ち込み、遅れてやってきた鑑識班の手で、夜叉により荒れ果てた地点はくまなく調べられていた。


『今回、我々の出番が無かったな……待ちに徹していた、というのもあるが』

『発生したインベーダーの質が高い上、夜叉が最速で駆け付けた結果、迅速に事態が解決しましたからね』

『その分、夜叉への負担が大きくて申し訳ないけどねぇ。しかも逃げられたし……そういえば、結局あの姿はなんなの? どうして騎士、それもデュラハンみたいな格好に?』

『そこに関しては私から補足しよう』


 作業の邪魔になる廃材をどかしながら会話するニューエイジ達。

 フレスベルグの機能を存分に活用し、最中に本郷博士から通信が入る。


『夜叉には戦闘対象に合わせて適応する能力が備わっている。装甲やスーツを構成するナノマシンの性質を切り替え、自在に変化させ、固着する。恐らくは、過去の戦闘データと吸収した魔核から限定的な強化案として作成したスタイルなのだろう』

『ほほん? つまりはパワーでごり押しする為の姿なんだ』

『マシロが推測した通りではあるな。剛剣を駆使する屈強なナイト、か』

『日に日に脅威度が増していきますね……』


 日頃から夜叉の捕縛、もしくは連行を目的とするニューエイジ。

 会話が出来るようになってからは明確に一時的な協力関係を結び、ゲートの破壊やインベーダーの討伐と行動する機会は増えた。

 しかし事あるごとに逃げられ、上手く事態が好転しない。加えて騎士として新たな力に目覚めたとなれば、目標の達成は更に厳しくなる。

 堅実、強烈。攻防を極めたナイトスタイルを相手にするのは骨が折れる。

 ため息を吐きたくなる心境は、誰もが理解できた。


『現状、いくら考えても仕方がない。夜叉への対策は今度協議するとして……目先の疑問解消に向けて動こうか』

『ええ。死体処理場で散見された異常な計測値、展開された結界』

『放棄された施設に何故か放置されたインベーダーの魔核、大量の爆発物』

『挙げれば挙げるほど、キリが無いくらい怪しい要素しかないよねぇ』


 明らかに不可解な点の多いインベーダーの出現。

 夜叉陣営のマシロが懸念していた内容に、アストライアも至っていた。

 この施設には、何かある。そうして探している内、巧妙に隠された地下へ繋がる階段を発見。取り寄せた図面には無い箇所だ。


 フレスベルグでは通れない幅の階段。

 各種ユニットを外し、最低限の装備でニューエイジは降りていく。

 乾いた靴音が響き、すえた匂いが鼻をつく。進めば進むほど不快さが増し、そして開けた空間に出る。


 地下室だ。懐中電灯が照らした室内は処理場へ展開されていた結界の発動装置を中心に、不気味な培養槽が所狭しと並んでいる。

 直近まで使用された形跡が見られ、近場には捨てられたのか資料が散らばっていた。しかしどれもが埃や血に汚れ、読み取れない。

 作戦室、そしてその場での解析結果がもたらすのは──インベーダーの素材を用いた、人体実験の数々。


「ふむ……劣化をいいことに放棄された施設へ機材を運び込み、極秘の生態研究場として利用していた組織がいるらしいな」


 エイシャは機嫌が悪そうに吐き捨て、壁に明かりを向ける。

 そこに描かれたマークは、幾重にも絡み合う木の根に眼球で構成された気色の悪いシロモノ。


「これ、なんか見たことあるなぁ。なんかの資料で……あっ、反社組織!」

『地球人にネイバーと人種に問わず集い、“インベーダーこそ生命体が行き着く先”と定め、アストライアの活動を妨害する組織──ネビュラスのマークだな』


 バイザーを通して作戦室にてモニターしていた本郷博士が声を上げる。


「先日のパフアを襲った襲撃者もネビュラスの構成員でしたね。あの時は、彼の在籍していた支部を取り押さえましたが……」

『生き残りはまだまだ大勢いる、そういうことだろう。現にこうした研究施設が存在しているようにな』

「しかし機材の磨耗具合を見るに、この施設はかなり前から使われていたようだ。……それこそ、この処理場自体がネビュラスの為に用意されていたと思ってしまうほどには」

「それって行政と反社がズブズブの関係性かもしてないってこと?」

「あるいは、施工会社がネビュラスのダミー会社だった、もしくは利用されていた可能性。……詳しく調べてみないことには分かりませんが」

『その辺りはこちらで精査してみよう。これだけの規模だ、何か大事を仕出かそうとしている恐れがある。ロゴス、関係各所へ連絡を』

『わかりました。ついでに、資金や資材の怪しい流れが無いか探ってみます!』


 平時と変わらない雰囲気に戻ったロゴスとのやり取りを最後に。

 マヨイは通信を切り上げて辺りを見渡し、地面に付いた擦過痕、地上へ繋がる搬入口のような場所を発見する。


「爆発物はここにあったみたいね……近日まで使われていた様子から察するに、元々爆破する予定だった?」

「ゴーレム系の魔核を放置してたのも意図的なものだろう。あれらは魔核さえ無事なら、周囲の魔素を吸収し復活する。再利用が容易い為、被害を起こすには打ってつけだ」

「インベーダーが暴れても、爆発しても事態がうやむやになればそれでいい、みたいな感覚だったのかもね」


 ネビュラスの考えを推測しながら、ニューエイジは地上へ戻る。

 鑑識班とすれ違い、未だ全貌の見えない組織への警戒をそのままに。

 フレスベルグを装着し直し、先んじて本部へと帰還するのだった。

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