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後日談

 複数の小型ゲート発生。

 特位インベーダーの出現。

 減衰フィールド装置の発射。

 魔導二輪アクトチェイサーの譲渡。

 逆波マシロの提案から協力関係を結ぶ。

 立て続けに起きた、予想外を含む様々な展開を経て、それぞれの家に帰宅したアキト達は念願の連休を過ごしていた。

 そもそも当初は与えられた宿題を終わらせるつもりで彼らは集まっていたのだ。当然の帰結と言える。

 祝日込みの休みで英気を養い、テレビに流れるワイドショーで語られる先日の騒動について。

 アストライアの愚策だとか、反政府組織の暗躍だとか、夜叉の存在は極めて危険だとか。いつも通り、ありもしない根拠や自論からもたらされる好き勝手な風潮を聞き流し……連休最終日。

 それぞれの情報端末であるマギアブルにマシロからメッセージが届く。


『サプライズを用意したから、お昼は弟君の家に集合!』


 朝食を、あるいは惰眠を貪っていたアキト達は唐突で、しかし妙に心が沸き立つ文言にソワソワしながら。

 約束の時間に集い、間もなくしてやってきたマシロの自家用車に乗り込み、彼らは揺られていった。

 時間にしては数分。商業区の中心地から少し外れ、奥まった場所にある平屋の建物に到着した。


「マシロさん、ここは?」

「一ヶ月くらい前かな。個人的に懇意にしてたお客さんが本土に移るから、これまでのお礼にって建物を譲ってくれたんだよね」

「うぇ!? なんつーか、剛毅な人だなぁ」

『そうじゃのぅ、こんなにも立派な店を……』


 三人が見つめる先、大きなガラス窓の奥に内装が見えた。

 カウンターに椅子、ソファにテーブル、本棚。

 キッチンに多種多様な瓶詰め、袋詰めのコーヒー豆が置かれた棚。

 壁掛けの小型テレビに天井から吊り下げられた空気循環用のファンがある。レトロでモダンな喫茶店──外の看板には“ポラリス”と書かれていた。


「経営を引き継いで偶に開店してるんだけど、先代と比べてアタシの腕じゃ閑古鳥が鳴いててね。最初の頃は常連さんも来てたんだけど、全然来なくなって……でも人気が無い分、秘密のお話をするにはうってつけの場所でしょ?」

「もしかして、夜叉関連の会議をする場所として紹介してくれたのか? アキトん家じゃ、姐さんの目があるしな」

「それもある。けど、本命はこっちかな」


 風情がある建物の隣にはシャッターの降ろされた車庫があり、先導するマシロは後続のアキト達へ笑いかけながら手を掛けた。

 開かれたシャッターの中は逆波モーターズ第三工場で見た覚えのある機材、工具類が並んでいる。作業机にはアクトチェイサーの物と思われる部品、インベーダーの素材が転がっていた。


「ここは私が所有するガレージ……つまりは、秘密基地ってわけ。本社工場と同じ加工設備、独立したネット環境も揃ってるからアクトチェイサーの改造・整備はハードとソフト、どっちも万全に行える。ヤシャリクの細かな調整も問題なく出来るよ」

『おっほほほほ! 至れり尽くせりじゃのう!』


 興奮気味に声音を上げたリクがガレージ内を飛び回る。


「つまり、喫茶店とガレージ、この二つが……」

「アタシ達の隠れ家、アジトってやつね。何かにつけて集まりたいってなったら、ポラリスを使って」


 メッセージで言われた通り、これ以上ないほどにサプライズな光景にアキトは呆気に取られていた。


「やべー……なんか今まで以上にやる気が出てきた気がするぜ!」

『いっひっひっひ! ここでならヤシャリクの機能解放も、性能調整も容易い! 今後のインベーダー戦は、もっと楽になると保証するぞ!』

「ただし! 普段の生活をおろそかにしないように、ちゃんと課題や宿題は済ませておくこと! 夜叉として活動を続けていく上でこれだけはちゃんとやってもらうよ。ヴィニアに不審な目で見られたくないでしょ?」

「それはもちろん。こんなにも良くしてもらってるし、前から勉強には力を入れてるから大丈夫です」

「よろしい! それじゃ、喫茶店の方に来て。お昼、食べてないでしょ? 荷物の搬入ついでに仕込んだ料理があるから、皆で食べましょ!」


 腹の虫が鳴りかけていることを見透かされ、ガレージから喫茶店に進む扉を開き、店内に入る。

 カウンター席に座り、対面で昼食の準備を手早く済ませたマシロが山盛りのカレーライスを人数分並べた。

 先代店長から頂いたレシピを元に作成したという、カレーの香りは食欲をそそり、自然と涎が出てくるほどだ。

 遅れてサラダと取り皿、飲み物をもってきたマシロも席に座り、コップを片手に辺りを見渡す。


「それじゃ、夜叉陣営結成とこれからの活動を祝して……乾杯!」

「「『かんぱーいっ!』」」


 商業区の路地裏。

 隠れた名店から寂れた印象を抱かせていたポラリス。

 積年の繁盛していた雰囲気を取り戻したかのように。

 店内からは数日ぶりに和気藹々とした声が響き、名物料理であるカレーの香りが漂ってきていた。











「そうだ、弟君にこれを渡しておくよ」

「ん? 本……交通安全マニュアル?」

「リクちゃんは人工知能用の教程をこなしたみたいだけど、君は未成年だからね。基本的に運転するのが彼女だとしても、ちゃんと学んでおかないと。後日しっかりテストするからね」

「この歳で……? マジで……?」

「宿題が増えたな、アキト」

『難儀じゃのう』

これにて5話は終了になります!

仮面ライダーに必須な要素、バイク・おやっさん・喫茶店が登場する回の連続で楽しかったです。

次回からニューエイジの掘り下げと夜叉の機能解放を絡めたお話にするつもりですが、メイン作品の更新もそろそろ始めていきますので滞ると思います。ご了承ください。

改めて、ここまで読んでいただきありがとうございました! 次の話もよろしくお願いします!

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