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帝国の花嫁は夢を見る 〜政略結婚ですが、絶対におしどり夫婦になってみせます〜  作者: 長月京子
第十八章:第二王子レオンの婚約披露

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99:理想を叶えるドレス

 スーは自室で新調したドレスに着替え、支度を整えていた。今日は第二皇子レオンの婚約披露が行われる日である。

 著名なデザイナーであるサンディ・ウォルトのドレスは素晴らしいできで、皇家の紋章をシームレスなデザインにした刺繍が青い生地にほどこされている。スカートは白いレース生地が覆う二重構造で、美しく形づくられていた。


「清楚で上品なドレスだわ! でも幼さがなくて聡明で、きちんと女性らしい色気もあるわ」


 姿見にうつる自分をみて、スーは感動していた。

 上半身の切り替え部分では異素材が使用され、それが体型を引きしめて美しくみせる。


 肌が露出するのは手と顔だけだが、ドレスのラインがこの上もなく優美で柔らかい線が目立った。黙って立っていると、一輪の花が咲いたように可憐な印象がする。


 ドレスに合わせた髪飾りで髪を結い上げ化粧をほどこすと、さらに怜悧な美しさが際立つ。

 スーの理想を完璧に叶えるドレスだった。


「ルカ殿下もそろそろお迎えに戻られるでしょう」


 スーが落ち着きなく、何度も姿見のまえでくるくると身を翻らせて自分を眺めていると、ユエンが室内の飾り時計をみながら呟く。スーははぁっと大きく息をついた。


「ルカ様にお会いするのも何日ぶりかしら」


 皇家の人間の婚約披露には皇太子であるルカにも相応の役割があるらしい。加えて軍の要件も山盛りのようで、最近のルカは多忙を極めている。私邸に帰宅することもままならない。


 レオンの婚約披露の当日になっても同じで、帰宅できないルカが私邸で支度を整える余裕はなく、王宮からスーを迎えにくる段取りになっていた。


「あまりにも久しぶりすぎて、ルカ様を見た瞬間魂が飛んでいくかもしれないわ」


 スーはどきどきと期待に胸を躍らせている。

 ルカと会えなかったのは数日のことなのに、スーには長い時間に思えた。


 最後に彼を見たのはいつだっただろう。

 王宮で開催される婚約披露について、ルカは包み隠さずスーに危惧すべき点を教えてくれた。自分が帝国クラウディアの後継者にとって証となる立場であり、そのために考えられる問題を伝えてくれた。


 スーは当日の王宮で細心の注意と警戒が必要であることを完璧に頭に叩き込んでいる。サイオンの王女である自分が表舞台に出る危うさも理解していた。

 まったく恐れていないかと言われると嘘になるが、今はルカに会える喜びで胸がいっぱいだった。


「はやくルカ様にお会いしたい! 声をお聞きしたい!」


 王宮内での注意点を教えてもらった時以来ルカとは話せていない。晩酌やお色気作戦どころか食事を共にすることもなかった。

 スーが「会いたい」と抑えきれない願望を口にしていると、オトが部屋にやってきた。


「そのお願いは叶いますよ。スー様、ルカ様がお迎えにお戻りになられました」


「ルカ様が!」


 がばりと立ち上がって、スーは勢いにまかせて駆けつけそうになる。あきれ顔のユエンと目があい、辛うじて思いとどまった。ドレスの裾をさばいて姿勢を正すと、はやる気持ちをおさえてオトに従う。


 私邸の玄関ホールにむけて大階段をおりていると、スーの視界にルカの姿が飛び込んできた。


 玄関ホールに差し込む陽光に照らされて、執事のテオドールと会話をしている。束ねた金髪の輝きが、スーのドレスと同じ生地で仕立てられた青い衣装に映える。軍の盛装ではなく今日のために仕立てられた皇太子の絢爛たる衣裳。


 肩章でとめられたマントが長身の背後を彩り、凛々しさに華を添えている。

 凛とした姿勢で談笑している様子を見て、スーの気持ちが歓喜に震えた。


「ルカ様!」


 泣き出したくなるような感情におかされて、ドレスの裾が乱れるのも構わず、スーは階段を駆け下りた。


「おかえりなさいませ!」


 何も考えられず、玄関ホールを横切ると目の前に迫ったルカに飛びつく。


「スー」


 久しぶりに聞く声がスーの胸に響く。自分を受けとめて抱きあげてくれる腕の力強さを感じた。

 同時にふわりと漂う爽やかな香りが、スーの気持ちを満たしてくれる。


「ただいま戻りました」


「ルカ様」


 感激のあまり、スーはルカに抱き上げられたまましがみついてしまう。


「お待たせしました。スー、王宮へ参りましょう」


「あ! は、はい!」


 我に返って離れようとすると、ルカはスーを抱き上げたまま歩き出した。玄関ホールに集った者に短く指示をだし、挨拶をしてから車へと向かう。


「ルカ様! あの、申し訳ありません。下ろしてください。歩きますので」


 抱えられていることに焦っていると、ふっと浮遊感があった。地面に降り立つのかと思うと、ルカの腕がスーの膝裏を支えて横抱きの状態になる。


「え?」


 至近距離にルカの美しい顔が迫り、スーはますます焦る。


「ル、ルカ様!?」


 会いたくてたまらなかったが、久しぶりのスーには刺激が強すぎる距離感である。


「あなたは愛しい婚約者なので、こんなふうに抱き上げたまま王宮へ参上するのも良いかもしれませんね」


 スーはすぐにルカの意図を察した。


「わたしはルカ様に溺愛されている魔性の王女を演じた方が良いのですか?」


 意気込んで聞くとルカが笑う。


「スーはひたすら周りに注意して警戒しているだけで充分です」


「はい! それはもちろん心得ております!」


「何もしなくても、あなたにはきっと視線が集まります。こんなに美しいのだから」


「サンディ様に仕立てていただいたドレスです。ルカ様とお揃いの生地で意匠もあわせてあって、とても素敵です」


「ーーそうですね。……ドレスの話ではないのだが……」


「何か仰いましたか?」


「いいえ」

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