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帝国の花嫁は夢を見る 〜政略結婚ですが、絶対におしどり夫婦になってみせます〜  作者: 長月京子
第十六章:試される皇太子と王女

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91:サンディ・ウォルトによる王女の採寸

 スーは自室の真ん中で、けたたましいほどに明るく笑う高名なデザイナーに身体を採寸されていた。

 レオンの婚約披露に着用するドレスを新調するためである。


 ユエンとオトもデザイナーである女性の活発さにすこし圧倒されているのか、黙って様子を見守っていた。

 褐色の肌が艶やかな、意欲に満ちた女性だった。ものすごくおしゃべりなのか「お会いできてよかった」「創造性がかきたてられる」「お人形さんのよう」と感激しながらスーの容姿を絶賛し続けている。


「スー王女のドレスを任せていただけるなんて、本当に光栄です!」


 女性はスーがサイオンにいた頃にも名を聞いたことのある名店の筆頭デザイナー、サンディ・ウォルトである。

 衣装を仕立てるにあたって、高名なデザイナーが赴いてくる事実に、スーはあらためて帝室のもつ影響力を思った。


「わたしもサンディ様にドレスを仕立てていただけるなんて光栄です。わたしの国では考えられません。本当に夢のようです」


 素直に喜びを伝えると、サンディは「まぁ」と破顔する。


「そんなふうに仰っていただけるなんて嬉しいです。スー王女の映像を一目見た時から、機会があればドレスを担当したいと母に相談したのです。母はユリウス陛下には御恩があるらしく、珍しく今回の帝室からの依頼を引き受けてくださったみたいで」


「そうだったのですか。では、わたしは本当に運が良かったのですね」


 現在の帝国は、好みの針子にドレスを仕立ててもらう。そんな時代ではなくなっていた。

 帝国貴族の服飾の在り方が大きく変わったのは、ユリウスの治世に設けられた高級仕立て店の組合が発端だった。


 古くは好みの針子に出資し、繁盛店を設けるという投資が貴族の間で流行っていた時代もあり、その名残で名店が数多く誕生していた。


 結果として、帝国の服飾は貴族の独占市場となり、針子の地位は向上せず、異文化が流入するにつれ、自由な商談や、針子の地位向上が求められるようになった。


 ユリウスの治世になり、当時、名を広めつつあった異国の新進デザイナーの提唱のもとに、帝国は高級仕立て店の組合を作った。

 針子が貴族の支配から抜け出し、自らの店を構える。やがて彼らの意匠は万人に向けて発信されるようになっていった。


 デザイナーという新たな職業が生まれ、今では人気の意匠を貴族が独占するようなことはなくなっている。

 サンディの話によると、ユリウスに組合について提唱をした異国の新進デザイナーが、サンディの母であるらしい。


「もう何度母に聞いたのかもわかりません。帝国貴族の利権を解体して、服飾の市場を万人に解放して下さったと。しかもユリウス陛下はとても見目麗しい方で、母の初恋の方なのです。皇帝陛下に恋をするなんて、本当に恐れ多い話ですね」


 サンディは朗らかで気さくだった。服装も性格を表すように華やかで、奇抜で賑やかな柄がとてもよく似合っている。すこし早口で、帝国の貴族令嬢のおっとりとした空気感がない。おしゃべりをしていても、手元は忙しなくきびきびと動いていた。働く女性の颯爽とした凛々しさがある。


「スー王女と皇太子殿下はとてもお似合いです。今回のお二人のお衣装は、素晴らしいものに仕上げて見せます。スー様はなにかご希望はございますか」


「そうですね。ルカ様に見劣りがしないように、女性らしい色気のある……」


 スーの希望に割って入るように、傍らで採寸を見守っていたユエンの声がする。


「いいえ、姫様!」


「ユエン?」


「現在のご自身の状況をご理解しておられますか? 帝国に咲いた夜の華などと噂されているのですよ。姫様の場合、ただ立っているだけでも扇情的なのです。ルカ殿下にだけお披露目するのならともかく、公の場でのご衣裳で色気を強調するのは愚策です」


 ユエンが容赦のない現実をぶつけてくる。スーも噂については憤りしかない。同時に自分のこれまでの振る舞いや、周りへの警戒が足りていなかったのだと反省していた。


 ルカに迷惑をかけないように振舞っていたつもりだったが、全く足りていなかったのだろう。貴族令嬢との交流だけでは、自分の名誉すら守れない。


 噂が立つのは仕方がないが、スーには圧倒的に味方が少ないのだ。自分がもっとうまく立ち回っていれば、煙が立った瞬間に鎮火してくれる味方が得られたはずである。


 今もそうだ。ユエンに指摘されるまでもなく、公の場での周りの目を気にしなくてはいけなかったのに、ルカの目に魅力的に映りたいという欲を優先していた。


「スー様、ルカ様は品のある装いがお好きなので、ご自身の婚約披露の時のように、露出の少ないご衣裳の方が喜ばれるかと」


「そうね、ユエンとオトのいうとおりだわ。サンディ様、わたしは清楚で賢くみえるようなドレスにしていただきたいです」


「お任せください!」


 サンディがはりきった笑顔を見せる。


「今日は実際にスー様のお身体を採寸させていただいて良かったです。お身体のサイズについて、数か月前の情報をいただいておりましたが、少し変化されていらっしゃいましたので」


「そうなのですか? 身長が伸びていたり? あ、もしかして太っているのかしら?」

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