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帝国の花嫁は夢を見る 〜政略結婚ですが、絶対におしどり夫婦になってみせます〜  作者: 長月京子
第十三章:第三都ガルバ

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73:未知の鉱石

「ところで、私はそろそろ本題に入りたいのですがね」


 用意された珈琲をすすった後で、リオが何かを企んでいるような笑みを浮かべた。彼の皿を見ると、すでに綺麗に平らげられている。


 リオは元々このような会食の場が好きではない。偏食のせいで好き嫌いがおおく、食に興味がうすいせいもあるだろう。ルカも彼が珈琲以外を口にしているのを初めてみた。


 もっと言えば、綺麗にヒゲをそり、正装して現れたことがすでに珍しい。社交に興味のない彼が、この場に現れるには、面倒ごとを上まわる理由があるはずだった。


「ようやく殿下に面白い報告ができると思って楽しみにしていましたよ」


「あなたのことですから、何かあるとは思っていましたが」


 予想どおり、この場は彼にとって面白みがあるのだ。ルカが口元を拭ってリオを見ると、彼は普段は滅多に見せない溌溂とした笑顔をしている。


 興味深い報告がある証だった。ルカも何が聞けるのかと、思わず期待してしまう。

 リオが勢いづいて語りだすのを見守っていたが、彼は隣のコルネに視線をうつした。彼女は頷いてルカにつげる。


「実は殿下にお見せしたいものがあります」


 テオドラが邸の者に指示すると、宝石を鑑賞するときに用いるような容器が、ルカの前に姿をみせた。透明なガラスで蓋をされているが、不思議な光沢をした何色とも表現のしにくい塊が、紺青の天鵞絨(ビロード)の上で鎮座している。


 石のようにみえるが、透明感はなく、宝石の原石というよりは鉱石のように見えた。

 ルカにはこれが何の石であるのかわからない、隣のルキアを見るが、彼も小さく横に首をふった。


「こちらは鉱石ですが、リオによると、これまでに同じ組成のものはありません」


「新しい発見ということですか?」


「はい。でも、すでに流通している気配があるのです」


 ルカはすぐに事態の深刻さをのみこんだ。ルキアが隣から身を乗りだすようにして、箱の中の鉱石を観察している。やがて鋭い視線がコルネにむけられた。


「ルクスはどうやってこれを手に入れたのですか?」


「それは、……裏の伝手というより他はありませんが、問題はこれを定期的に仕入れている者があるということです」


「定期的に?」


 ルキアがいぶかし気な表情をしている。


「はい。しかも本来ならば利用価値もわからないはずの石が法外な値で取引されています。表向きはレアメタルを偽装しているようですが……」


 ルカはコルネが何を言おうとしているのかを悟った。知らずに眉間にしわがよる。


 稀少鉱物であるレアメタルについては、帝国が厳しく管理しているのだ。サイオンが残した超科学技術に劣ろうとも、帝国が築いてきた技術が、すでに地方や他国にとっては脅威となる高い水準にある。


 古代兵器を永劫にねむらせても、帝国はサイオンの古代技術から無尽蔵に供給される動力と、資源の占有権を保持すれば、帝国の技術力と共に優位に立てるだけの地盤が築かれている。


 けれど、だからこそレアメタルの流通先も限られていた。


「レアメタルの主な流通先は、第零都と第二都以外には、第一都、第五都、第六都辺りですね」


 ルキアも同じことを考えているのだろう。ルカは頷いて見せた。


 第一都はべリウス大公家ーールキアの生家の管轄であり、第五都はルカの異母弟、第二皇子レオンの管轄となっている。第五都については、第六都を管轄するディオクレア大公家がレオンの後見として管理しているに等しい現状だった。


 管轄都に関しては、議会の承認を得たのち、皇帝の号令のもとに、各都の裁量に運営が任されている。

 ルカは未知のレアメタルが第五都と関わらない事を願ったが、希望はすぐにコルネの声に打ち消された。


「ルキア様の仰るとおり、この鉱石は第五都で取引されているようです」


「ややこしい事になりそうですね」


 ルキアが険しさを帯びた表情でルカをみた。ディオクレア大公がかかわっていては一筋縄ではいかないだろう。自身の管轄都ではなく第五都を利用しているあたりに、すでに嫌な気配がにじみだしている。


 未知の鉱石をいったいどのように活用しているのか。にわかには検討もつかない。

 険しい表情で黙りこんでしまうルカに、リオが浅く笑う。


「殿下、ここからようやく私の話になりますが、よろしいですか?」

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