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帝国の花嫁は夢を見る 〜政略結婚ですが、絶対におしどり夫婦になってみせます〜  作者: 長月京子
第十三章:第三都ガルバ

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71:第二都バルティアの鬼才リオ・コモン

 食事の後、デザートが運ばれてくる頃合いになって、テオドラはようやく空席につく者をルカに紹介した。


 工業都市である第二都バルティアに、ルカが設立した飛空挺の製造機関ガイアがある。現れた男はガイアで動力開発にかかわるリオ・コモンだった。


 三十を少しこえたばかりのどこにでもいそうな男である。色白で顔色はさえない。痩せ型の体躯はいかにも研究員らしく、ひょろりと背だけが高かった。


「お久しぶりです、ルカ殿下」


 いつもは無精髭をはやしている印象があったが、今日はつるりとした顔をしている。皺の寄った白衣とはちがい、きちんとした装いだった。皇太子であるルカに対して、あまりに気さくなリオの様子に、テオドラがぎょっとした顔をする。


 ルキアも驚いたように、ルカとリオを見くらべた。


「リオ、なぜあなたがここに?」


 ルカにとっては予想外の人物との再会となったが、顔なじみのリオの登場には素直に安堵した。

 テオドラも驚きを隠せいない様子でルカとリオを交互にみつめている。


「まさか、殿下とリオはお知りあいだったのですか?」


「はい」


 ルカがうなずくと同時に、リオ・コモンがおかしそうに笑う。いたずらが成功して喜ぶような無邪気な笑い方をみて、彼がルカとの関係をテオドラに何も説明していないことを悟った。


 あいかわらずの奔放さだなと、ルカはそっと嘆息をつく。


「殿下、いったいどういう経緯(いきさつ)で彼と?」


 ルキアも興味深げに詮索してくる。リオが席につくとテオドラとコルネが詫びる。


「殿下とリオがお知りあいであったとは存じませんでした」


 親子は恨めしげに末席についたリオをみつめた。ルカも苦笑がうかぶ。


「彼の性質はよく知っていますので、総帥が気になさることはありません。どうせリオは何も話していないのでしょう?」


「はい。しかし、なぜルカ殿下がリオをご存知なのですか?」


「私が彼とはじめて出会ったのは、第零都の軍の施設です」


 ルカが帝国元帥を拝命してから、皇帝ユリウスの助言をもとにガウス・ネルバを補佐につけている。ガウスはユリウスが元帥であった時代に、総司令として軍を任され、軍事力に固執しないユリウスの理想に寄りそっていた。


 ルカの父が元帥となった時に、ガウスは父と対立し総司令を解かれたのだ。

 それは同時に、皇帝ユリウスの軍事力を足がかりにしないという理想が、大きく後退するという意味を伴っていた。


 思えば父の目ざす道は、皇帝ユリウスの目にもにがく映っただろう。だからこそ、五年前の内乱について、ユリウスがルカを責めることはない。ただ肉親としての憐憫が増しただけである。


 サイオンのもたらした恩恵を放棄するための道のり。

 そのために、父の粛清が必要だった。


 ユリウスとルカの抱く理想を、ガウスは心得ている。

 ルカがリオと出会ったのは、元帥を拝命し、ガウスの力を借りて武力強化に傾倒していた第零都を、ふたたび以前の状態に立てなおしはじめた頃だった。


 ユリウスが帝国のために欲しているのは、武力ではなく動力なのだ。

 古代王朝サイオンがのこした動力供給。ユリウスの治世に八割だった依存率は、五割にまで削減された。新しい動力源の確保。皇帝が推しすすめてきた第零都の主要な研究の成果である。


 リオは軍の動力開発部に席をおく軍人だったが、内乱に至るまでの軍のあり方に嫌気がさしていたらしく、ルカが出会った頃は自暴自棄で、上官に対する不敬罪を問われるほどだった。


 第一印象は互いに最悪だったが、ガウスは熱心にリオの能力をルカに説いた。たしかに彼は逸材であったが、ルカは彼を第二都バアルティアのガイアへ引き抜くことにした。


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