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帝国の花嫁は夢を見る 〜政略結婚ですが、絶対におしどり夫婦になってみせます〜  作者: 長月京子
第三章:他人行儀な微笑み

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15:殿下の思いやり

 殿下の妃として認めてもらうための道。スーはようやく歩み始めたばかりなのだ。


 何度思い返しても、帝国のことを学んでこなかった自分を呪いそうになる。


「殿下とのデートで、気持ちを浮わつかせている場合じゃないわね」


「姫様?」


「明日の外出でも、学ばなければならないことがたくさんあるはず」


「いえ、スー様」


 オトがすこし慌てた声をだす。


「明日は本当に息抜きが目的ですので、そんな風にかしこまることはございませんよ」


「でも、わたしは本当に何もわかっていないから」


「それに、ルカ様も休日は羽を伸ばしたいはずです。スー様がそのようにかしこまってしまわれると、お疲れになります」


「大丈夫! その辺りはきちんと考えるわ!」


 はりきって笑うと、オトが困ったように吐息をついた。どうしようかと言わんばかりの顔で何かを考えている。


「オト? どうしたの?」


 ふうっと大きなため息をつくと、彼女が仕方がないと言いたげに打ち明けてくれた。


「ルカ様は、スー様がこちらでの生活に息苦しさを感じていないかと案じておられるのですよ。だから、外に連れ出して気分転換をはかろうとお考えなのです。だから、どうか明日は何も考えず、お楽しみください」


「殿下が?」


 こんなにも無知な自分を案じてくれている。スーはじぃんと胸が温かくなった。


(ほんとうに、殿下はなんて素敵な方だろう)


 思いやりにあふれている。スーはぎゅうっと気持ちを噛みしめた。絶対にどこに出しても恥ずかしくないような、立派な皇太子妃になってみせる。

 ルカの思いやりにこたえる方法は、いまのところそれしかないのだ。


 スーはさらなる意欲をたぎらせ、やる気を新たにしながら、ひとまず明日を思い切り楽しもうと頭を切り替えた。


「たしかに気分転換は大切ね」


「はい」


「わたしも明日は絶対に殿下に楽しんでいただきたいわ!」


「はい」


「では、はりきりましょう、姫様」


 ユエンが立ち上がって、クローゼットの方へと歩いていく。


「あまり華やかでない方がいいとなりますと……」


 衣装のための部屋が、すでにスーのサイオンでの自室に匹敵しそうなほど広い。

 スーとオトもユエンの後に続いて、クローゼットの中へ入った。


 既製のサイズで、あらかじめ用意されていた衣装が並んでいる。スーにはこれで充分だったが、近日中に体を採寸して仕立てたドレスと総入れ替えになる段取りになっていた。


「姫様はどんなお衣装がお好みですか」


「どれも素敵だけど……」


 帝国らしい意匠のドレスが多いが、サイオン風のものもきちんと揃えられている。


「こちらに来てからも、スー様はサイオンの形を好んで選んでおられますが、帝国の意匠は窮屈ですか?」


「あ、そういうわけじゃないの。オト」


 スーはルカと初めて対面した日のことを思い描く。


「実は殿下と初めてお会いした日、サイオンのスタイルが天女みたいで綺麗だって褒めてくださったから……、それで」


 なんだか気恥ずかしくなってしまう。熱くなった顔を手で扇ぐと、オトが「そうだったのですか」と、柔和な笑顔を浮かべた。


 スーは並ぶドレスの中から、馴染みのあるサイオンの意匠を手に取った。

 ルカの目には、帝国式のドレスよりも、やはりサイオンのドレスが新鮮に映る気がする。いずれ皇太子妃になれば、いやでも帝国式のドレスを纏う日々になるのだ。


「明日も、殿下の前ではサイオンのドレスがいいかもしれないわ」


「そうですね、姫様」


「では、大人びた印象のお色にして、簪などをつけてみられては?」


「そうね」


「せっかく殿下と一日ご一緒できるのですから、姫様、ここは絶好のアピールの機会です」


「わかっているわ! ユエン!」


「スー様、明日は絶対に女性として意識していただきましょう」


 スーはルカの隣に立っている自分を想像する。彼の隣にいても相応しい姿になるように、ユエンとオトのアドバイスを受けながら、衣装を選んだ。

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