たぶん日本最初の国際結婚
○ラストオーダー。
:アメノウズメと猿田彦のいちゃラブ。
(作者返答) : どう答えたか忘れました。
ともあれ、タイトルが浮かばずずれ込みました。
今回もある意味残酷な描写があります。
調べものは、Wikipediaさんで。
国際結婚。
国際結婚とは、国籍を異にする者の結婚(婚姻)。
だ、そうです。
ほんとは冒頭だけでももっと長々と書かれていたのですが、今回は不要と断じてカットです。
天孫降臨の折、天孫たる 邇邇芸命 (ニニギノミコト) に随伴する神が五柱いたそうです。
五伴緒(注1)とよばれるチームを組んで ニニギノミコト と共に葦原中津国に向かいましたるは、天鈿女命 (アメノウズメ) こと ウズメ さん他四柱の神々でございます。
こちらの ウズメ さん、アマテラス お姉ちゃんの「天の岩戸事件」で活躍した(ということになっている)実績を省みて、天孫降臨に先だって アマテラス お姉ちゃんと 高御産巣日神 (タカミムスビノカミ) から、ニニギをよろしく頼むと念押しされたようです。
……プレッシャー…………ぁぁぁ…………。
そんな感じで、小話を交えつつ解説といきましょう。
アマテラス お姉ちゃんが何気なく呟いたことで、地上の都を奪い取ってあげようと躍起になる思金神 (オモイカネ)以下の老害どもにより、葦原中津国へ三度神が派遣されて交渉(注2)したのち、地上の都へ天孫たる 邇邇芸命 (ニニギノミコト) が移り住む運びとなりました。
その際、五柱の選抜メンバーに 五伴緒 というチーム名を付けて、 ニニギ に随伴する命令が下ります。
その中でも、特に念押しされたのが、天鈿女命 (アメノウズメ) こと ウズメ さんです。
「ウズメ さん、ニニギ くんのこと、よろしくね。本当に、よろしくお願いね」
ハラハラしっぱなしのアマテラス お姉ちゃん。
「お前は体が細く弱そうに見えるものの、度胸がよいので、誰ぞ見掛けたなら真っ先にお前が問いなさい」
冷静に命令する タカミムスビ 。
高天ヶ原における最高権力者と葦原中津国の都建造における影の立役者によって命じられ、半ばリーダー的なポジションに抜擢された ウズメ さん。
またしても、厄介ごとの矢面に立たされることになります。
そんな、トラブル発生待ったなしのような状況、誰も嬉しくなんてないです。
だって、ねえ? ニニギ は大層なワガママボーイなのですから。
不安を抱えながらも、天鳥船神 (アメノトリフネ) に乗り込み雲をかき分け地上へと向かう面々。
地上の都へ到着するまで暇な ニニギ 、退屈しのぎに命じます。
「アメノトリフネ、主砲発射用意」
「お、お待ちください! ニニギ さま、お戯れは」
「主砲発射」
いきなりのトチ狂った命令により、あわてて止めようとする ウズメ さん。しかし、命令の撤回は間に合わず。
「はははっ! 見よ! これが天津神の力だ! 圧倒的ではないか!!」
アメノトリフネ から放たれた光条が地上に降り注ぎ、キノコ雲が発生。その跡地には大きなクレーターができていました。
一方、地上の予定地で天孫のご一行を待っていた猿田彦 (サルタヒコ)、一瞬、天から光が降り注いだかと思えば、光が炸裂し数瞬後に強力な衝撃波に襲われます。
その際感じた理不尽なまでの膨大な神力により、その光が降り注いだ場所に天孫が降ると判断。現場に急行します。
やっとの思いで現場に到達すれば、信じられないほど大きく深いクレーターが発生していました。
しばし、呆然となる猿田彦。空が陰ったことで我に返り、地上に降りてくる神力を纏った船を見て、コレがやったのだと確信します。
地上に降り立つ船。そこから顔を見せるものたち。
いくらなんでもあんまりな状況に、皮肉の一つでも言ってやろうと近づきます。
その際、見目麗しい女神が前に出て、いきなり上着を脱ぎ一回転してから胸を反り指を突きつけ高らかに問いかけてきます。
「そちらは何者であるか?」
「猿田彦と申す国津神の一柱でございます。天孫とそのお付きの方々と見受けられますが、いかが?」
「いかにも、こちらにおわすお方が」
「うるさい、面倒だな。そんなことより、国はどこだ?」
天津神と国津神、双方の面子とか威信とか誇りとかそこら辺をかけた型式張ったやり取りも、ワガママボーイにしてみればめんどくさいだけのようです。
猿田彦、さっきの砲撃をやらかしたのはこいつだなって、なんとなく理解しました。
額に血管浮かばせ口をひきつらせながら、どうにかこうにか反撃を試みてみます。
「国はここです。ここにありました。どうぞ、お好きなようになさってください」
言外に、テメーが消し飛ばしたんだよこのボケナスが! と嫌みを言ってみますが、ワガママボーイは「ふーん、なにもないな」と全く気づいた様子がありません。
「こんななにもないところに用はない。都を探そう」
ニニギ によってスルーされそうな猿田彦。しかし、他の随伴する神から耳打ちされます。
「ちっ……。そこなサル、天孫たる我の出迎えご苦労である。褒美を与えよう。ウズメ、貴様、このサルの案内で地上に這う者どもに、天孫たる我に従うよう命じるがよい。サル、このウズメ はいつまでたっても結婚しない行き遅れであるが、器量良しの舞姫である。くれてやろう。喜べ」
あんまりな物言いに、猿田彦呆然。
ウズメ さんも呆然。
「ではな。二度と会うまいが」
アメノトリフネ から蹴りだされる ウズメ さん。
あっという間に空を翔る船は去っていきました。
猿田彦、呆然。
ウズメ さんも呆然。
しかし、そのままいてもなんも良いことないので、とりあえず挨拶と自己紹介から。
一目惚れしたという猿田彦。
優しく接してもらう内、徐々に心を開き惚れ込んでいく ウズメ さん。
その後は、猿田彦の地元へ帰り正式に夫婦として共に歩み、ニニギ より命じられた「天孫に従うべし」という勅令を広めていく活動に従事します。
大小様々な魚を呼び集め、一種族ごとに丁寧に声をかけ、天孫に従うよう命じます。
その際、ナマコだけは従うと明言しなかったので、ウズメさん に口を裂かれたとか。
そんなナマコですが、食用としての文化はとても古く、色も形状も様々なようですね。
ともあれ、ナマコの返事を待つことで旦那さまとのいちゃラブの時間が減ることに大層ご立腹なウズメさんの説得(物理)によって、一部の地域から献上される海産物は ウズメ さんに与えられることになったそうです。
その後も、夫婦のいちゃラブはずっと続き、二人の間に産まれた子も、父である猿田彦の道案内という特性を引き継いだといいます。
なんだかんだで、日本神話一番のリア充ってこの アメノウズメ と サルタヒコ なんじゃないですかね?
おしまい。
(注1) : 五伴緒 (いつとものを)。現代読みだと、五つ、伴う、緒、でしょうかね。
緒は、下駄の鼻緒、へその緒、というように、細いひもを指します。
五柱の神がひもで繋がるように一緒に行く。とも読めるでしょう。
つまりは、五人でチームを組んで、葦原中津国へ向かう ニニギノミコト を支えてほしいという アマテラス や タカミムスビ の親心が透けて見えるようですね。
(注2) : 連載内の「一騎討ち」「ハニートラップ」参照。
一度目は天之菩卑能命 (アメノホヒ)。
二度目は天若日子 (アメノワカヒコ)。
三度目は武御雷 (タケミカヅチ)。
ちなみに、三度目は交渉(物理)。
艦砲外交ともいえると思います。




