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たぶん日本最初のハニートラップ

 いつの時代も、男ってアホだと思うのです……。


 調べものは基本的にWikipediaさんで。



 ハニートラップ。


 ハニートラップは、スパイが行う色仕掛けによる諜報活動。女性スパイが男性に仕掛ける場合を指すのが通例。



 だ、そうです。

 最近では、ハニトラなどと略されていたりしますね。



 日本神話において、ハニトラに引っ掛かったアホな天津神がいたようなのです。


 そのアホのことを記す前に、そこに至る経緯も小話を交えて説明していきましょう。



 スサノオ くんが地上に向かう際 アマテラス お姉ちゃんと交わした誓約により、幾柱の神が産まれました。


 そこから時は流れ、地上の スサノオ くんが()の国(黄泉(よみ)の国)へと向かった後、王不在の地上は乱世の様相へ。


 そこに現れた若き神、大国主 (オオクニヌシ) と 少名毘古那神 (スクナビコナ) によって、芦原中津国 (あしはらなかつくに)は平定され国が(おこ)(みやこ)が築かれていきました。


 ある日、ふと、地上の様子を見下ろした アマテラス お姉ちゃん、ポツリと漏らします。


「はぁー……。大きな都だねぇ……」


 スサノオ くんとの誓約により産まれた神も子を設けて、高天ヶ原(たかまがはら)はだんだん手狭になってきました。


 耳(さと)思金神(オモイカネ)、余計なことを言い出し議会にかけます。


「アマテラス様が地上の都を欲した。誰ぞ、都を明け渡すよう説得に向かうにふさわしいものはおらぬだろうか」


 地上の都が欲しいなんて一言も言ってない アマテラス お姉ちゃん、焦って弁明します。


「なんのなんの、お孫様方がお住まいになるにふさわしい繁栄ぶり。是非とも都を献上して差し上げましょう」


 アマテラス お姉ちゃん、嫌な汗がたらり。こうなると重臣たち(老害ども)は話を聞きません。

 他にもお仕事たくさんな アマテラス お姉ちゃんは、時間になったらその職場の者たちから連れ出されて議会から閉め出されてしまいます。


 まあその、重臣たちの気持ちもある程度分かる(注1) アマテラス お姉ちゃんは、議会が変な方向に転がらないよう報告は密に受けます。


 あれこれ仕事しながらたまに口を挟みつつ、地上に派遣するために選抜された神の名を聞いて、ちょっとホッとします。意外とまともな神だったので。


 その名は、天之菩卑能命 (アメノホヒ)。


 アマテラス お姉ちゃんと スサノオ くんの誓約によって産まれた、真面目で誠実な神です。


 この人選なら大丈夫だろうと思っていたのです。誰もが。そのときは。



 しかしこの アメノホヒ ことホヒーくん、 オオクニヌシ に都を明け渡すよう説得するうちに、 オオクニヌシ の器の大きさに心服して地上に住み着いてしまうのでした。


 ……いやその、ホヒの父にあたる スサノオ の話を直接会った オオクニヌシ から聞かされた上で、死者を甦らせる力を持つともいう生太刀(いくたち)生弓矢(いくゆみや)を見せられてしまえば、無理もないかもしれません。

 父でもある偉大な三貴人により認められた存在ともなれば、フィルタ越しに見てしまうのも当然なのかもしれませんね。



 天津神の面々は、三年待ちました。


 しかしそれでも状況は変わらないようなので、次の者を派遣する段取りへ。


 次の者は、天若日子 (アメノワカヒコ)という若きイケメンです。


 親に当たる神の系譜は存在しないそうですが、派遣される以上は交渉ごとに一定の評価を受けていたのでしょう。

 また、 天佐具売 (アメノサグメ) (注2)という補佐もつけたので今度は万全でしょう。


 しかしながら、この 天若日子 ことワカヒコは、地上に降りた早々に オオクニヌシ の娘 下照比売 (シモテルヒメ) と結婚し、仕事を放棄します。



 天津神側、今度は八年待ちました。


 それだけ待っても二人は新婚気分でイチャイチャしっぱなし。

 なので、雉の 鳴女ナキメを派遣して職務放棄の理由を尋ねさせました。

 そしたら今度は、天佐具売 (アメノサグメ) が雉の 鳴女ナキメの声を不吉と断じ、ワカヒコに射殺してくれと(そそのか)します。


 高御産巣日神 (タカミムスビ) の神力が宿った弓矢は、雉の 鳴女ナキメを射殺しただけでは足りず、高天ヶ原まで届き危うく アマテラス お姉ちゃんに刺さってしまうところでした。


 地上で害悪の襲撃に対抗するために持たせた弓矢が天津神を害しようとするのはおかしい。そう判断した タカミムスビ は、天まで届いた矢に神力を込めます。


「天若日子に、高天ヶ原を害する邪心があるなら矢よ刺され。そうでないなら外れろ」


 投げ返したその矢は、ワカヒコの胸に命中。邪心ありと判断されてしまうのでした。


 ……そのワカヒコ、脂の乗った雉を義理の父の オオクニヌシ に分けずに自分達で美味しくいただいたことにちょっぴりの罪悪感を感じていたところ、矢がぶっ刺さって命を落としたのでした。



 その後、天津神側がワカヒコの葬儀に参列した際若干のトラブルもあったようですが、それはまた別のお話。




 拙い仮説にお付き合いくださりありがとうございます。



(注1) : アマテラス の子や孫は、絶大な権力を持っていたと思われます。

 具体的にいうと、 ニニギノミコト みたいなワガママボーイがのさばっていた感じ。

 ……真面目で誠実な神もいたようですが……。



(注2) : 天佐具売 (アメノサグメ)は天探女などとも書き、天の邪鬼(あまのじゃく)の語源になったとする説もあるようです。

 その由来も、天津神なのか国津神なのか文献によって違うためはっきりとはせず、国津神側だったのなら、ハニトラ要員その2だったのかもしれませんね。

 どちらにせよ、高天ヶ原からの遣いである雉の 鳴女ナキメ) を射殺すよう(そそのか)したのは、天を恐れるというよりは今の生活を壊されたくなかったからと思えます。



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― 新着の感想 ―
[一言] ハニトラ怖い……( ˘ω˘ )
[良い点] 1回だけかと思ったたら、続けざまにハニートラップに引っかかっていたので、笑ってしまいました。 死因の理由がそれかーい!と、ツッコミ入れてしまいました(笑)。 [気になる点] (*´꒳`*…
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