最上級職挑戦編③~レべ天の願い~
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「生き物はいつか死ぬよ。その時に後悔しないように今を生きるんだ」
「……ゲームのやりすぎで死にかけたあなたがそんなことを言うんですか?」
涙を流しながらにらみ付けてくるレべ天の横に座り、マロンを撫でる。
この世界に来る前に死にかけたことを忘れかけていたが、あの時の俺には微塵の悔いもない。
「あの時の俺はゲームがすべてだったからな。あのまま死んでも満足したよ」
「……私はどうすればいいと思いますか?」
俺へ人生をどうするのか相談をしてくる人なんて今までいなかったので、そんな人へかける言葉はわからない。
ただ、自分の経験から、人生をどうすごせばいいのかくらいのアドバイスはできる。
「やりたいって思うことに全力で取り組めばいい」
「抽象的すぎてわからないんですけど……」
「俺は天音じゃないからな。お前が何をしたいのか知らない」
「そうですよね……」
俺は空を見上げて、イスから転げ落ちた瞬間のことを思い出す。
ファラオを倒したことで全ダンジョンの攻略を完了し、自分の人生で思い残すことはないと心に強く感じていた。
(俺はこの世界で強くなって、全てのモンスターを倒す)
俺の願望は変わらず、あらゆるものを利用して自らを鍛え、最上級のモンスターも倒したい。
そのついでに、この世界がモンスターによる虐殺が起こるのを阻止できるので、レべ天の希望も叶えられる。
(ああ、そうだ。こいつはそういうやつだった)
この世界がモンスターであふれないようにするために、俺はレべ天に呼ばれていた。
目の前の少女が背負うものを察して、頭を撫でてやる。
「ただ、この世界の人たちを助けたいって気持ちで俺はここにいるから、お前は1つでも多くの命が幸せに過ごせるように考えているんじゃないの?」
「はい……でも、シューちゃんは救えなかったです」
「寿命で死ぬものまで背負っていたら、今の天音みたいに立ち上がれなくなるぞ」
レべ天の抱えるマロンの頭を撫でると、気持ちよさそうに鳴き声をあげた。
両親がこちらへ向かって手を振っているので、一目だけレべ天の瞳を見てから声をかける。
「昼飯の用意ができたみたいだから、あっちに戻ろう」
「わかりました……」
両親へ返事をしてトレーラーハウスへ戻ろうとしたが、ゆっくりと立ち上がったレべ天がなかなか歩こうとしない。
強引に腕を引っ張り、無理やり連れていくことにした。
「早く行くぞ、マロンもお腹が空いているってさ」
「い、痛いです!」
レべ天を引きずるように歩いていたら、急に抵抗を止めて普通に歩き始める。
それでも立ち止まらないように腕を放さないでいると、急にしおらしい声が聞こえてきた。
「一也さん、励ましてくれてありがとうございます」
「そんなんじゃない。お前が悲しそうにしているとマロンが俺のズボンの裾を噛み続けるんだよ」
「ふふっ。マロンもありがとう」
「キュー」
マロンが上機嫌に鳴き声をあげるのを、レべ天は涙を少し流しつつも笑顔で見ていた。
微笑んでいるレべ天がかわいいと感じてしまったのをごまかすように、腕を離して小走りをする。
「お腹が空いたからお前の分も食べてやる」
「あ! それは駄目です!! 私はバーベキュー初めてなんですよ!?」
両親のいる場所へ戻ると、父親が調整している火で串に刺さった食材が焼かれていた。
すでに食べごろになっており、おいしそうな香りにお腹が反応する。
「はい、一也。熱いから気を付けてね」
「ありがとう」
母親がよく焼けた野菜やお肉が刺さった長めの串を渡してくれたので、かぶりつくように食べ始める。
レべ天も小さな口をできるだけ開けて食べていた。
「おいしいです!!」
「そうか! よかった! たくさんあるから、お腹いっぱい食べなさい」
レべ天の反応が嬉しいのか、父親が火から目を離してにっこりと笑っていた。
耐熱グローブを付けながら薪の位置を調整している父親は、火から目を放さずに串から食材を外したものを少しずつ食べている。
そんな時、見覚えのある大きなワゴン車が遠くの道路を通過した。
鷹の目で注意深く見たら、荷台にキャンプ用品を積み込み、どこかで会ったことがあるような横顔の人が運転をしている。
(あれは佐々木さん? なんでここに?)
たまたま同じキャンプ場へ同じ日に予約をしていたと思っていたら、次々と車がやってきた。
その中には、静岡県ギルドの職員さんたちが乗っており、続々と来ている。
まさかと思って、火に気を配りながら食事をしている父親へ質問をした。
「お父さん、キャンプへ行くことを誰かに相談した?」
「ああ、佐々木さんに相談をしたら、この夏休み真っ只中に予約を取ってくれたんだ」
「そうだったんだ」
「普段から予約待ちなのに、こんな時期にこられるなんて運がよかった」
父親は耐熱グローブを付けた手で薪を持ち、微笑みながら話をしている。
俺はある予感がしてきたので、食事を終わらせて別のトレーラーハウスの様子を見てくることにした。
「ちょっと周辺の探索をしてくるよ」
「そうか、大丈夫だとは思うけど、気を付けろよ」
「わかってる」
少し離れたところで母親と一緒にマロンやレべ天がおいしそうに食事しているため、気配を消して歩き始める。
急に俺が消えたため、マロンが食べ物をくわえたまま首を左右に振って、困ったように首をかしげていた。
「どうしたのマロン? 焼けてなかった?」
「キュキュ!」
「どうかしたの天音ちゃん?」
「いいえ、なんでもありません」
「そう? 焼けたやつを取ってくるわね」
「ありがとうございます」
2人のやり取りが聞こえなくなるまで離れ、車が走っていった方向へ足を進める。
このキャンプ場にはトレーラーハウスの他にログハウスが建てられているエリアがあり、その一角に数十人ほどのグループが集まって何かの準備をしていた。
(全員見たことがある……静岡県ギルドの人たちだ)
ギルド服ではないものの、そこにいた全員が静岡県ギルドで働いている人だった。
別の場所には見たことがない人も多々いるため、ギルドだけではなく他のところからも来ていると思われる。
様子を探りながら複数のログハウス周辺を歩いていたら、ギルド長と晴美さんがキャンプ用のテーブルを用意しており、他の人はバーベキューをするような器具を広げていた。
(見つかったら面倒だから帰るか……)
おそらくギルドの人たちだけで楽しんでいると予想したので、部外者である俺は誰にも気づかれることなく退散する。
自分のトレーラーハウスへ戻ると、父親が楽しそうに誰かと会話をしているようだった。
「佐々木さん、この度は予約を取っていただきありがとうございます」
「いいえ、普段から一也くんにはお世話になっているのでこれくらい、任せてください」
俺が探索中に佐々木さんが来ていたのか、父親が手を握りながらお礼を言っている。
レべ天と母親はトレーラーハウスの中でくつろいでいるように見えた。
佐々木さんが父親の持ってきていたキャンプ用品を褒めており、手に取って眺めている。
父親へ近づきながら2人の会話を聞いていたら、急に佐々木さんが声のトーンを下げた。
「一也くんですが……月末のWAOの会議でRank5に上がる可能性が出てきました」
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