夏休み約束編⑬~ジブラルタルへ~
ご興味を持っていただきありがとうございます。
9月12日に書籍第一巻が発売になります。
タイトルを改名して【ネトゲ廃人の異世界転生記】となっております。
アマゾン等で予約が始まっているので、よろしくお願いします。
何度も飛行機に時間を消費したくないため、この場所をワープ地点として登録する。
目的が済み、少し小腹が空いてきた。
(とりあえず、腹を満たそうか……)
花蓮さんと遊ぶためにスマホで周辺について調べ始めた。
ジブラルタルの岩山は【ザ・ロック】と呼ばれ、ミスリルなどの希少金属が採掘されている。
しかし、この山にはモンスターがはびこっており、鉱石を採るために人間とモンスターが争っているようだ。
そのため、ここで戦う冒険者はモンスターを倒すのと採掘を同時に行うために山へ挑むらしい。
つるはしを振るう人と戦う人を分けて、複数人で戦うのが基本と書かれている。
また、山頂には【ヒュドラ】と呼ばれる首が9つある水蛇がおり、今まで1度も倒されたことがないようだ。
(ミスリルが採れるってこと以外はゲームと同じだ……1回だけつるはしをもって突撃してみたいな)
ミスリル以外にも、ヒヒイロガネなどの金属も多少採れるようなので、確認のために登ってみたくなってくる。
近くで定番と書かれた看板の屋台で、チップ&フィッシュというものを売っていたため、それを食べながらロックへ近づいた。
岩山を囲うように上部へ有刺鉄線を施されたコンクリートの壁があり、中から銃撃の音が断続的に聞こえてくる。
入り口のゲートのようなところへ並ぼうとすると、肩をつかまれた。
「あっちは観光客の行く場所じゃないぞ」
「わかっていますよ。そのためにつるはしを買いたいんですけど、どこに売っていますか?」
熱いポテトを頬張りながら振り向くと、大きな銃とつるはしを持った大柄の男性が俺の肩へ腕をのばしていた。
食べていた物が油っこく、味も淡泊なため、おすそ分けをしようと差し出す。
「これ食べます?」
「これからロックへ行くんだ。そんなもの食べられない」
「そうですか……それでつるはしはどこに?」
「お前はまだ子供だろう? ふざけていると死ぬぞ?」
男性は首を振り、俺へ考え直すように説得をしてきていた。
良い人だと思いながらも、食べ物を持っていない方の手で冒険者証を見せる。
「一応、Rank4の冒険者です。あなたは?」
「お前がRank4!? 嘘だろ!?」
俺の冒険者証を男性が食い入るようにのぞき込んできた。
そのまま取られそうな勢いだったので、ポケットへしまって、男性からの返答を待つ。
「俺はRank3だ……つるはしはあそこのギルドで売っていて、ミスリルも買い取ってくれる」
「ありがとうございます。ミスリルはいくらで買い取ってもらえるんですか?」
「今は相場が上がって、1キロ100万くらいだな……中へ入るつもりなら、ギルドで手続きをしないと入れないぞ」
「そうなんですか、教えていただきありがとうございます」
頭を下げてから、男性の教えてくれたギルドへ向かう。
男性は両手を上げて、訳が分からないというジェスチャーをしていた。
なんとかフィッシュ&チップスを食べ終えてからギルドへ入り、受付で入山手続きを行うためにカウンターのギルドの服を着た短髪の女性へ声をかける。
「入山手続きとつるはしを購入させてください」
ギルド証を提示しながら言うものの、受付の女性は俺を見たまま固まってしまっていた。
おそらく俺が子供なのが理由だと思うので、少しむっとしながらも再び声をかけようとした時、いきなり陽気そうな受付の女性が笑顔になって手を握られる。
「なにを!?」
「エジプトの英雄ですよね!? テレビであなたがミノタウロスを一撃で倒したのを見ました!!」
「え!? 俺はそんな呼ばれ方をしているんですか?」
「会えて嬉しい!! サインをいただけますか!?」
その人は俺の言葉に耳を貸す様子もなく、色紙とペンを差し出してきた。
苦笑いをしながら受け取り、期待を込められた笑顔で見られていたので、サインを書くことにした。
しかし、俺はサインなど書いたことがないため、名前を漢字で筆記体のように書き、それっぽく整える。
色紙を渡すと、嬉しそうに胸に抱えながらカウンターからこちらへ出てきた。
「つるはしはこちらに用意してあります。ついてきてください!」
「わかりました」
女性の足取りは軽く、跳ねるように歩いているため、本当に喜んでくれているようだった。
「入山についてですが、手続きが終わっているので、入り口でギルド証の提示をお願いします」
「わかりました」
話をしながら歩いていると、女性が金属製の扉の前で止まり、鍵を取り出していた。
「ここがつるはしの保管庫です」
女性が重そうな扉を開け、俺へ中に入るようにうながしてくれる。
なかには様々な大きさや種類のつるはしがあり、値札が貼られていた。
(頑丈そうなやつはないかな……ん?)
鑑定を行いながらつるはしを眺めていたら、俺よりも大きな筒状の岩石が置いてあり、【???】と表示されたものがあった。
値札も貼られていないため、不思議に思い女性へ質問をする。
「これってなんなんですか?」
「それは、えっと……それは100年以上前から存在している石柱で、なぜか機械を使っても動かせないため、保護するためにこのギルドが建てられたと聞いています」
「へー……持ってみてもいいですか?」
「……どうぞ」
困ったように眉をよせている女性から許可をもらったので、鑑定できない物体を抱えるように手を広げる。
直径が60センチほどあり、俺の身長よりも大きな岩を力を込めて持ち上げようとしたら、ものすごく軽かった。
見た目に反するあまりの軽さに、勢いをつけた反動で後ろへ転がってしまう。
その拍子に抱えていた石柱が腕からすっぽぬけて、宙を舞った。
床に打ち付けられると、豪快な音がして粉々になり、地面に破片が散らばっている。
受付の女性はあまりの音と予想外のことで腰を抜かし、両手で口を覆っていた。
(やばい……壊しちゃった……)
俺は片付けようと立ち上がって、散らばった破片を拾うために大きめの石へ手を伸ばす。
すると、すべての破片から金色の光が放たれ、勝手に俺の手に向かって集まってきた。
(もしかして、これは!!)
金色に輝く石が俺の手の中で結合しており、1本の武器になるように形成されている。
光が収まると、俺の手には石でできたメイスが出来上がっていたため、鑑定を行う。
【神石の戦棍 種類:メイス】
鑑定結果を見て、思わず俺が手に握っているメイスをまじまじと観察してしまった。
70センチほどあるメイスの先端は鋭利なフランジが放射状に組み合わさっている。
この大きさにもかかわらず、ほとんど重さを感じることはない。
しかし、軽く振るだけで周囲に風が巻き起こり、尋常ではない質量を持っていることが分かる。
風を受けた女性が軽く悲鳴を上げて怯えるような目で俺を見ていたが、そんなことへ気を配っている暇はなく、俺は自分の持っているメイスに感動していた。
(本物の【神器】だ……こんなところにあったなんて……)
このメイスは攻撃力と頑丈だけが取り柄で、他の神器のように能力が上がったり特殊なスキルが使えたりするものではない。
その分、長所である攻撃力と耐久度は他の神器が比較にならないほど高い。
この武器の使用条件が【上級職以上】となっているため、今まで使える人がいなかったと思われる。
(この様子だと持っていっても問題なさそうだな)
長い時間、誰もあの石柱を持てなかったことを考えると、これを知っているのは俺と座り込んでいる女性だけだ
石のメイスを担いで、まだ立ち上がれない女性へ手を差し伸べた。
「立てますか?」
「ちょっと無理そうです」
女性は俺の手をつかんで立ち上がろうとするものの、諦めて何度か首を横に振っている。
無理に立たせるわけにはいかないので、一言だけ伝えてこの場を去ることにした。
「これには値段が貼っていなかったので、持っていきますね。案内ありがとうございました」
「はい……」
鼻歌交じりにギルドを出て、何度かメイスを振り、感触を確認する。
時計を見たら日本はまだ夜だったため、ロックへの入り口へ向かって歩き始めた。
(下見にでも行ってみますか!)
ご覧いただきありがとうございました。
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