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第273話

「えっ、クイーズ君の居場所を知らないかって? 困るよキミィ、ボクの代わりにちゃんと護衛してくれないと、またラピス君にどやされるじゃないか」

「ガウガウ!」

「イダダダ、冗談、冗談だからって、ちょっと齧らないでよ!」


 この世界にも様々な観光地がある。


 とはいえ、生涯、生まれた土地から出た事がないといった人が大半な時代。

 観光地を巡れる人は、ごく限られている。

 地上を移動するには馬車ぐらいしかなく、道中ではモンスターの襲撃という脅威もある。


 飛竜という空を飛ぶ交通網もあるが、専用のスキルを持った人物が必要なので数が少ない。

 定期便なども存在せず、国から依頼を受けて貴族を運ぶ、といった限定的な運用になっている。

 その為、観光業で町おこし、なんてものは考えられもしていなかった。


 だが、それを一変させる人物が現れる。


 それが、古代王国の末裔であるエフィールだ。

 彼女は時空魔法・極というスキルを持ち、その熟練度も千年を超えるほどの人材。

 彼女はまず、最も魔境に近い場所に根差した街、サンフレアのあちこちに転移魔方陣を描いていく。


 その転移魔方陣を用いれば、同じ魔方陣が描かれた場所へ瞬時に移動できるのだ。


 本来、転移魔方陣というものは、時空魔法の使い手がいなければ発動できないのだが。

 転移先を固定する事により、魔力を持つ者さえ居れば、誰でも発動できるように改良したのだった。

 世界各地の国々と契約し、様々な場所へ、その街を起点として移動できる。


 そんな風に変わっていった。


 となると、人の動きも活発になり、新たな観光地も生まれてくる。

 その最も有名な場所が、聖皇国の首都、聖王都である。

 音の都と呼ばれるその地は街中に音楽が溢れている。


 軒先でも、店の中でも、常に音楽が流れている。


 その街は、ただ居るだけで楽しい気分にさしてくれる。

 元々、世界最大級の都市であり、大広場では様々な催しも行われている。

 転移魔方陣が普及して以降、最初に人々が目指したのが、その場所であった。


 そしてここ、ピクサスレーンの下町でも、新たな観光地が出来ていた。

 聖王都が音の都と呼ばれるようになった原因が、クイーズ・ファ・ゼラトースという人物が始めた楽器店である事は多くの人が認識している。

 ここでも、それは同様で、彼が始めたライブハウスが原点となっている。


 そのため、聖王都の音の都にちなみ、ここは食の都と呼ばれるようになっていた。


「ほら、ロゥリ君もどうたい、兄上と姉上が無料パスなんてものをくれてね。どこでも食べ放題なんだよ!」

「ガツガウ」

「そこのキミ! メニューの端から端までを持ってきてくれたまえ」


 元々は、聖王都で楽器店を立ち上げるため、エクサリーが居なくなった事から始まった。


 ライブハウスの目玉はお料理セットで作られる、様々な変わった料理。

 それはとても美味で街中の評判であった。

 食事時はいつも満席で、その名前は国外にまで轟くほど。


 しかし、その料理を作っていたエクサリーが居なくなった訳だ。


 居なくなって暫くは、おやっさんが料理を作っていたのだが、お料理セットを使ってもエクサリーのレベルには遠く及ばない。

 お客さんからはブーイングの嵐。

 そんなにブーブー言うんなら、自分で作りやがれ! という話になって。


 そしたら、とある料理人がお料理セットで食事を作った訳だ。


 するとだ、自分が生まれて来た上での最高傑作の料理が出来上がる。

 お料理セットにはオート料理というスキルがある。そのスキルは、何が自分に足りなかったが、何が余分であったのか、それを知ることが出来たのだ。

 料理人の世界は狭い世界、あっという間に料理人ネットワークを伝い、その情報が各地へ伝達された。


 そうしたら、我も我もと、高名な料理人達がお料理セットを使わせてくれと集まってきた。


 そこでおやっさん。ピキーンと、あ、こいつらに料理させたら人件費浮くんじゃね。と思いつく。

 お料理セットを使う代わりに、お客に料理を提供させる。

 そうすれば、材料費だけで料理人の人件費は浮く。


 料理人としても作った料理の感想を、その場で大勢の人々に聞くことが出来る。


 その発想自体は良かったのだろうが、後の事を考えていないおやっさん。

 各地から集まってきた料理人達がその後どうするか?

 当然、近場に料理店を作り出す。


 おやっさんが、あっ、やべっ。って思った頃には、周りは商売敵だらけ。

 料理店が集まれば人も集まって活気ができる、とは言うが、さすがに世界の果ての下町。こんな所においしい広場を作っても、圧倒的にパイが少ない。

 切磋琢磨して品質は良くなるだろうが、売上には結び付きゃしない。


 サンフレアの転移魔法陣の始動がなければ、人も集まらなく、破滅していたことは請け合い。


 時期的にも結構ギリギリで、まさしく紙一重の出来事であった。

 というより、ラピスに泣きついたおやっさんが原因で、転移魔方陣の開発が都市復興より優先され間に合った訳だ。

 その転移魔方陣のおかげで、各地から大勢の人が集まり、一大観光地へと発展していく。


 今はお料理セットはもうここにはないが、それでも、これだけの人が集まる場所。


 ここに来て、刺激を受ける料理人も居る。

 そうしたら、またしても料理店が増えていく。

 ここに来れば、世界中の郷土料理が味わえる。と更に有名になっていく。


「いや~、うまいね! なかなやるじゃないか、ここのシェフも! 褒めて遣わそう」

「ガウガウ」

「えっ、ボクが偉そうにするなって? ハッハッハ、ボクは偉いんだよ。なんたって、このパスには王様用って書いてるしね。ん、王様用?」


 そんな場所をカシュアが見逃す理由がない。


 ラピスが暫く留守にするのをこれ幸いと、なんだかんだで甘いクイーズに泣きつき、お小遣いをもらってピクサスレーンに戻ってくる。

 そうしたらなんか、カユサルの部下とか言う人が、どこでも食べ放題なチケットをくれた。

 何も考えずにそれを使って、食道楽を堪能しているカシュア。


 もちろん、そのチケットには裏がある訳で……


「食った食った、余は満足じゃ。なんてね」

「ガプゥ~」

「それでは殿下、お城にお戻り頂きます」


「ん? ボクはお城になんか戻らないけど?」


 お店の入り口から、大量の騎士達が入って来てカシュアを取り囲む。


「次期、国王陛下であるカシュア様には、何としてでもお城に戻って頂くようにとの、お達しでありますので」

「へっ?」

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