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第187話

「えっ、クイーズが居なくなったって……どういうことラピス?」


 突然、ラピスが店にやってきたと思ったら、すぐさま部屋にエルメラダス姫様とカユサル様を呼び付ける。

 そして私にも、覚悟があるのなら同席してください。というので、何か分からないけどついて行った。

 そしたら突然、クイーズが居なくなったって。


 居なくなったって、何? えっ、家出とか? どうして、なんで?


「すいません、貴方に説明している余裕はありません」


 いつになく冷たいラピスの言葉に、その重要度を垣間見た感じで、心が急速に冷えていく。

 ラピスのこんな余裕の無い姿なんて始めて見た。

 いったいクイーズの身に何が?


 心臓が早鐘を打つように鳴り響く。


 ふと左手が暖かくなる。

 見ると左薬指に付けているエンゲージリングから熱が漏れている。

 そしてホウオウちゃんの声が頭の中に響く。


『大丈夫よ。私が居る限り、あなたを未亡人になんてさせないから』


 その熱は、何時の間にか冷え込んでいた私の体を温めてくれる。


「それで、そういったスキルに心当たりはありませんか?」

「その前に、その、反応が無いと言う感じか? どのようなものか教えて欲しい。よもや、クイーズが死んだ、などという訳ではあるまいな?」


 何時になく慌てているラピスは状況説明が疎かになっている。


「その可能性も……なきにしもあらずです」

「っ!?」

『落ち着いてエクサリー! 大丈夫、私達には蘇生や、輪廻転生なんてスキルを持ってる奴がいるんだから!』


 でもそのスキルは現在、使えないと聞いている。

 まるで足元に空いた大きな奈落に、落ちているかのような浮遊感に見舞われる。

 もし、クイーズが、居なくなったら……私は……わたしは……


「それだけでは分からん、詳しく話せ」


 姫様の冷静な言葉に、ふと現実に引き戻される。

 さすがは将軍職も務める姫様だ、私やラピスと違って、こんな時でも冷静に対応出来ている。

 私も両拳をギュッと握り締めてラピスの言葉に耳を傾ける。


 左手の指輪が、そんな私を応援するかのように少し温度を上げる。


 なんでも、ラピスの持っているカード統率のスキルは、各カードの存在する方角と距離が漠然とだけど分かるんだとか。

 それと同じような感じで、モンスターカード自体のスキルを持つ、クイーズの居場所も知ることが出来る。

 また、カード統率に+が生えてからは、クイーズの危機を察知することも可能になったとか。


「そいつは初耳だな……この腹黒ウサギめ。とはいえ、今更カイザーを手放す事は出来ぬか」

「別に俺は師匠に居場所を知られても何も問題ない。むしろ、セレナーデの危険を察知してくれるなら願ったり叶ったりだ」


 しかし、急にクイーズの居場所が分からなくなった。

 そしてどこを探してもクイーズが見当たらない。

 どんなに神経を研ぎ澄ませても、分かるのは各モンスターの位置だけ。


 ふとラピスの表情を見てみる。それはどこか、親からはぐれた迷子の子供のような、切羽詰った顔をしていた。


「お坊ちゃまが最後にいらした場所は、ヘルクヘンセンのライブハウスです」


 そこから忽然と姿を消したそうだ。

 誘拐に適したスキル。

 完全に外界との交信を遮断するようなスキル。


 その様なものがないかと、姫様とカユサル様に問いかけている。


「ない、ことはない。だが、完全には……新種の魔道具ならあるいは……」

「全てのスキル、魔法を遮断する。そのようなものは…………聖皇国の宝物庫!?」

「っ!? そういえば、すっかり忘れていましたが、あのダンジョン、外から中に入る仕掛けがあったのですよね」


 それにダンディも言っていた、今後そのようなスキル、が生まれる可能性も有ると。


「俺はその仕掛けの方を当たってみる!」

「ならば私は、そのようなスキル・魔道具が生まれていないか調査してみよう」

「恩にきます」


 二人が去った後、その場を動けないで居る私の元にラピスがやってくる。


「エクサリー、もしかしたら貴方は、私達の最後の希望になるかもしれません」

「えっ、どういう事?」

「お坊ちゃまの身に何が有ったとしても、貴方さえここに居れば、きっとお坊ちゃまは、どんな事をしてもここに戻ってくることでしょう」


 私はあっけにとられた顔でラピスを見やる。


 そうだ、クイーズは以前言ってた、何が有ろうとも私の元へ帰ってくると!

 そんなクイーズの台詞を私が信じなくて誰が信じるの。

 震える両足にグッと力をいれて立ち上がる。


「お坊ちゃま不在の今、貴方こそが今の我等のマスターです。なんなりとご命令を」

「ならば命じる。必ず、必ずクイーズをここへ、ここへ連れてきて」

「了解しましたマイマスター、必ず、お坊ちゃまをここへ連れ戻して見せます!」


 私とラピスは自然、共に微笑み合うのであった。

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