記録板type-monologue
うぃ……
神々の反応が消滅した。正確に言うと大地から神々の加護が失われたのだが、その状況を悲観的に捉えている人間はまずいなかった。私達の技術によって新しく開発された五柱の『人工守護神』。人口の増加など、様々な要因で新天地を求めていた我々は新しい大陸にその全ての守護神を設置する事に成功した。私達、俗に言う航海者は一切の不安も無く海を渡り、そして土地を得たわけだが、転移魔法陣を潜って故郷に戻り、一番最初に得た光景は地獄だった。
『有りえない』
そう、仲間の誰かが言った気がした。恐らく、誰もが同じことを考えていただろう。レベル300相当の強さを持つ『人工守護神獣』を私達は新大陸に設置してきた訳だが、あれ等は全て複製である。本来であれば500レベル。最大レベルとも呼ばれているそのレベル相当まで有るはずの5体の守護神獣にその複製の15体。それら全てが1体の魔物に滅ぼされていた。
私達によって繋がれた転移魔法陣が本来あった筈の場所である皇都は、その魔物によって半分以上えぐり取られ、強固な外壁に、自動防衛システムなど様々な物全てが何の意味もなしていなかった。
竜の様な見た目をしたそれ。
正確に言うと、とかげに黒い光で出来た羽を8個付け、毛玉に見える巨大な胞子のような物を飛ばし続けているその化け物。大きさで言うと、単位がkmになるような存在。
私達は何を考えるまでもなく、恐怖した。ある仲間は、その皇都の風景に絶望して自殺した。ある仲間は、その化け物に当てられて心が壊れた。
周囲を探索しようにも、その化け物が目と鼻の先に居座ってしまっている為、動けない。
目が、合った。
……数年が過ぎた。
毛玉の様な胞子は魔石、魔核などを所有する適性ある魔物に吸収されることで、驚異的な成長を促した。本来であれば、2歳の子供であっても銃を持っていれば倒せるような存在であるレッサーラット。そんな雑魚魔物であっても、適性が合ってしまえば私達では倒すことが出来ない様な存在になった。
生き残った数少ない人類達は、核事件が起きた際の為に作られていた地下空間が唯一の生活圏となっていた。
ある、男が言った。
『これも全て、加護を失わせた神々。竜神、獣神、精霊神が悪い』
と。男は続けて言った。
『竜、獣、精霊達はあいつらを倒す義務が有る』
理屈も何も通っていない暴論。だが、数少ない人類達にはこれがあまりにもウケた。人類、いや反信者等の思想は『助けてもらおう』から『利用しよう』にシフトしていき、いかにして上手く利用するかを真面目に話し合う様になった。
これを快く思わない私を含む数少ない人々は爪弾きにされ……地下空間から追い出された。
今だからこそ言える、あの時一番最初にするべきだった事。それは、反信者共を止める事だ。アイツ等は……アイツ等は……あの化け物よりもよっぽど恐ろしい科学兵器を作り上げてしまった。
私のやった事は、遅すぎたのだ。
今も尚生きている人々は、あの時、地下空間から追い出された人達だけだ。あの時、新大陸に落ち延びた私は、今までの事を無かった事にして新しい生活を送ろうとしている他の落ち延びた人々を止める事が出来なかった。
彼等、彼女等には各々の、そして家族の人生が有る。
私にはそれが眩しすぎて……
クローンの作成に成功した。
次話どうしよ……




