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球の一投

「戻りましたー」


 道中……水中?

道中は魔物などが一切いなかった為安心して走り抜ける事が出来、地上に出てからは雷精霊を召喚したため一層速く帰る事が出来た。西方向の森が見えたがあのボードを見た限りだと今は吸魔の森中層、試練の森表層のボスを倒すべきだと判断した為、初討伐だけ掠め取って帰った。


 …寄り道ぐらい許してもらえるよな?


「あ……レンジさんお帰りなさい」

「ぷっ」


 口元を抑えた姉は十六夜さんに無言で叩かれていたが、流石に気を使われすぎだろう。そもそも、溺れていない訳だから…風評被害だし溺れてないし……。


「ちょっとソラ……」

「ん?」


 ソラを手招きで呼び出し、部屋の外に出る。


「これ、見える?」

「は?」


 腕輪の部分を指差し、ソラに見えるかどうか確認する。これが見えてくれれば余裕で無実を証明できるのだが……。


「何が見えるんだ?」

「え、腕輪だよ腕輪」

「ごめん、聞き取れない」

「…まじ?」

「まじ」

「分かった」


 メールが駄目だったからもしやとは思っていたが、会話ですら伝えられないとは思っていなかった。

 となると、やっぱり無実を証明する方法は……


「装備?」

「レンジ?」

「装備を失ってないって事を……」

「おーい?」

「ソラ!俺溺れてないから!溺れてないからな!?」

「お、おう」


 目の前で手を振っていたソラに、自分が全ての装備を持っている事を見せながら溺死していない事を説明していく。俺が持っている装備は全て楓さんに作ってもらった物だから、一つしか持っていない事はそれで証明できるだろう。


「…ふむ。レンジがなんで溺れた事を否定したいのかは知らないが…それレンジが作った弓がデスペナで消えたんじゃないか?」

「……」


 全く信じてもらえてないなこれは。


「レンジ。お姉さんがさ、あの後結構慌てて必死に探してたんだぜ?なのに見つからなかったから……まあ、誰も気にしないから大丈夫だよ」

「……いや、あのな…あの人工湖の下には研究所が」

「…さっきからさ、レンジが口を動かしてるのは分かるんだけど、何も伝わってこない。何を言ってるんだ?お前」

「……認識阻害がかけられた」

「…すまん聞こえん。取り敢えず戻ろうぜ?」

「ああ」


 ソラに促され部屋の中に再び入ると、気まずい雰囲気が蔓延していた。これはどう考えても誤解を解こうとしても尚更雰囲気が悪くなるのは分かりきっているので……諦めようか。


「すみません、ちょっと取り乱しました。なんか不思議な感覚でしたよ」

「へ、へぇー……」


 ん?


「まあ、ドロップで良い物も貰えたんでプラマイ0って感じです」

「……」

「そ、その、湖行くの断っても良かったんですよ?」


 ……実際にカプセルというのは使い捨ての水中行動アイテムなのだが。この様子だと泳げない事をだいぶ気にされているようだ。

 …逃げたという事実が有るから一層強く意識してしまっているのかもしれないが、俺としては無理やり連れて行かれたという気は一切していない。


「そう言えば、西の森行っちゃいました。すみません」

「いえいえいえ。全然気にしてませんよ!?大丈夫です、レンジさんが周囲の森を率先して攻略しているのは周知の事実ですから!」

「……?」


 俺が率先して周囲の森を攻略しているというのは……そうなのか?まあ、そこら辺は今は良いだろう。


「…姉ちゃん」

「何?」

「おいで?」


 姉を呼び出し、部屋から出た。勿論、扉は閉めて中からは聞こえないようにする。


「探してくれたんでしょ?ありがと」

「…気にしないで。本当に溺れてるとは思わなかった」

「あー…それはログアウトしたら色々と話すよ」


 マナー違反な様な気もするが、身内に話すぐらい良いだろう。


「何それ?」

「『Black Haze』とかに関する事で大きいの知れた。出来れば十六夜さんにも聞いてほしいんだけど」

「此処では言えないの?」

「研究所や人工災獣……まあ、こんな感じに聞こえなくなる」

「……」


 取り敢えず、姉には理解してもらえたみたいなので良いだろう。それのお陰で今後一切溺れなくなった訳だから、別に湖に行くことになった事は恨んだりはしない。


「伝わらないんだけどね……まあ、それだけ。雰囲気は、どうにかする」

「が、頑張って」


 姉を部屋に押し戻し、後に続いて部屋に入って有るものをレイナさんに放り投げる。


「…なんですか?これ」

「レッサーザラタンのMVP報酬。カプセルです。効果は10分間の水中行動。これ、予備が欲しいので皆でもう一回行きませんか?俺はデスペナくらってないですし」

「えっと……そうですね。先程の戦闘は納得がいかなかったのでもう一回一緒に行かせてもらってもいいですか?」

「ええ、是非」


 レイナさんが周囲を確認した後に誘いに乗ってきてくれたので、もう一度レッサーザラタンの討伐に行く事になった。最初からこれをしていれば手っ取り早かった様な気もするが、これは俺がもう一度MVPを取る宣言に他ならないので何となく嫌だったのだ。

 ただカプセル一つを投げ渡すだけで、デスペナの否定、悪い雰囲気の払拭、皆のレベル上げ。全部が出来る訳だからこんなに効率が良いものはないだろう。


クラン設立騒動終了……もうやだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 姉が関わってからグダグダになったね~
[一言] お疲れ様です
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