王都へ
その後も、軽く質問をしたりしながらボードに書かれている様々な内容を確認していく。
所々理解しちゃいけなそうな内容もあったので、そこら辺は目を瞑って見なかった事にしたが……。
俺が一番気になったのは、この大陸の周囲を囲っている森の最奥地、海の所に各方向毎に人工守護神獣がいるという事。王都にも人工守護神獣がいるらしいが、四方向の加護を得ない限りはその場所を見る事すら出来ないらしい。
「じゃあ、これ貰ってくけど良いよね?」
『是__』
レッサーザラタンの能力が付与された腕輪を左手に装備する。正直言えば、並べられている装備を限界まで持って帰りたかったのだが、一つまでしか許してもらえなかった。
腕輪のアイテムボックス機能は容量がとても広く、簡易取り出し機能も存在していたので、緊急時などのMP回復などに役立つだろう。
もう少し色々と見たい物などは有ったが、此処に来てからある程度の時間は経っているし、レイナさん達にも生存報告をしなくてはいけないと思い、後ろ髪を引かれる物の研究所を後にする。
来た時同様、円盤に乗って移動し、最初にいた魔法陣に飛び乗って転移すると…
「やばっ!?水ちゅ……?…」
無言で左手の腕輪を見て…取り敢えず拝む。上を見ても水面など到底見えず、暗闇が広がっているだけだったが、俺がいる辺りは魔法陣が起動していた際の光でまだ明るい。
……魚一ついない事、湖底に研究所がある事、レッサーザラタンという人工災獣がいる事…考えれば考える程人工湖な気がしてならない。
「まあ、いっか」
水中と強く認識すれば、浮力などの影響で体がふわふわしたりするが、速く動きたいと願えば、陸上と同じ様に体を動かす事が出来る。
まあ、泳ぐことが出来ないので海底を歩く事ぐらいしか出来ないが、溺死しなくなったというのは大きな違いだろう。
それよりも、メニューに表示されたメール通知。そこに書かれている内容の方が問題だった。レイナさんからのメールで
『レッサーザラタンをレンジさんのおかげで討伐する事が出来ました。デスペナルティ等あるかも知れませんが、お祝いをしたいのでクランハウスまで来る事は出来ますか?』
ここまでは良い。問題は…
『私が料理を出来ない様に、誰にだって得手不得手あるかと思われます。誰も気にする人はいませんから
…途中で閉じてしまったが、それも仕方がないと思う。レイナさんが料理出来ないのは何となく察していたが、これ溺れて死んだ事で何処かへ逃げたって思われてるよな?
研究所に入った際に強制的にパーティを解除されていたのが勘違いを加速させている。
確かに、研究所が無ければ溺れ死んだに違いないだろうが、俺は”まだ”溺れ死んでいないし、この腕輪さえあればもう問題ないだろう。
「…研究所行ってましたで良いよな…あれ?文字化け?っていうか書けてない?」
研究所に関しての情報は何故か書けない様になっていた。
「…え、何?俺、溺れ死んで無いって証明出来ない?」
証拠が無い状況で溺れてないと言っても、頑張って誤魔化そうとしている様にしか思われないだろうから、逆効果なのは間違いない。それに、泳いでみてと言われると詰む。
要するに…。
……
「姉ちゃんなぁ…」
姉の事だ。確実に揶揄ってくるのは間違いない。それだったら本気で気にしている風に装い…。いや、折角のクラン結成での勝利祝いだ。行かないのは流石に無しだろう。
だが、
「ここ何処だよ」
マップを見ても辺り一面湖。王都一つ分の大きさぐらいしか見えないとはいえ、それでも十分な範囲のマップが見えている。それなのに、一面湖という事は、あの巨大な湖のほぼ中心にいると判断して問題ないだろう。
北はほぼ王都一直線なので北に行けば間違い無いのだろうが、プレイヤーが誰もいない所から浮上して戻りたい。水中から歩いてくる奴になってしまうと目立ってしまうのは間違いない。
「取り敢えず、東行くか」
東であれば誰もいないのは間違いないだろうから、選択肢としては最善策だ。東で湖から出て、そこから湖に入らずに王都に戻る。これで目立つ事はそこまで無い筈だ。
「んじゃ、行きますか」




