グドラの世界

　その後、グドラを入れる入れ物などを買いにギルドに行き、自作の矢の在庫も心細くなっていたので市販の矢を買い足してからクランへと戻った。

「戻りまし…あ、ソラもう大丈夫なんだ」

「ああ…今回のもやばかったぜ」

　クランに戻って一番最初に視界に入ったのは、狼の上に乗りながら寝っ転がっているソラ。周囲には色んな魔物を愛でている女性陣と、一人寂しくしている姉がいた。…クロも召喚できたら良かったな。今俺のバッグに入っているグドラはそんな愛でるような見た目をしていない。

「因みに、どういった状態異常に？」

「あぁ、【平衡感覚半減】【盲目】【硬直】だ。盲目と硬直が少しずつなっていく奴だったから助かった」

「…それ助かってんの？」

「あの飲み物は時間経過で状態異常が解除される様になってるから前回よりは楽だった」

「やばそうだった気がするんだが」

「最初は唐突に来るから仕方がないだろ。まあ、お姉さんは許さないけど」

　その結果が一人寂しくしている姉か。まあ、自業自得だろう。

「そう言えば、この魔物知ってる？」

「ん？」

　バッグの中でおとなしくしていたグドラを取り出し、ソラに見せる。…が、知らない様であまり良い反応は見れなかった。グドラの使い方は何となくは分かるが…

「この魔物、フィールドを作り出すタイプの魔物何だけど、そういった魔物って知ってる？」

「いや、聞いたこと無い。てか、フィールドを作り出すってどういう事だ？」

「なんか、地に根を張るらしい」

「…一回見てみないと分からないな」

「死ぬかもしれないけど良い？」

「は？」

　グドラの効果を考えると、死ぬ可能性は十分に有るだろう。正直、即戦力になるのは間違いないのだが…能力の確認をせずに戦いに使うのは自殺行為にしかならないと思っている。

「レイナさん、湖に行くの数時間待ってもらっても良いですか？」

「良いですよ」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「グドラ、此処に根を張ってくれ」

　俺がそう言うと共に地面に根を張り、周囲の木を張り倒しながらぐんぐんと大きくなっていくグドラ、いやマザーツリー。正式名称はポイズンマザーツリーと長ったらしいが”マザーツリー”だ。ステータスを見た時は普通に驚いた。

名前：グドラ

種族：ポイズンマザーツリー

レベル：１

ＨＰ：３００／３００

ＭＰ：０／０（固定）

ＳＴＲ：０（固定）

ＶＩＴ：２０

ＡＧＩ：０（固定）

ＩＮＴ：０（固定）

ＤＥＸ：０（固定）

【スキル】

【母樹Lv.1】【眷属生成Lv.1】【分株Lv.1】【苗木化Lv.1】【侵食Lv.1】

ＳＴＰ：０

ＳＫＰ：０

主：レンジ

【母樹】ＰＳ

眷属と主、守護者に特殊効果を付与する。

Lv.1【毒完全無効】

０／１

【眷属生成】ＰＳ

母樹１体につき、

眷属を１０分毎にランダムにレベル×８体生成する。

大地に根を張っている間のみ有効。

【分株】ＰＳ

１００時間に１体、母樹を作り出す。

大地に根を張っている間のみ換算。

０／１

【苗木化】ＡＳ

体を小さくし、苗木となる事が出来る。

０／２

【侵食】ＰＳ

根を張った場所を中心に、世界を作り変えていく。

１ｍ／分

０／５０ｍ

である。因みに、全てのスキルがスキルレベルを上げるのに２００ＳＫＰ必要だった。

　【眷属生成】はソラが似た様な物を知っており、ソラの持っているゴブリンジェネラルが【眷属召喚】を所有しているらしく、数でゴリ押したい時などに重宝しているらしいが、それ以外は知らないと言われてしまった。

　まあ、これは…うん。

　木に空を覆い隠され、暗くジメジメしていた筈の試練の森は…グドラの手によって一変していた。

　紫色に光る粉が辺り一面を飛び回っており、木はどんどん萎れ、最終的には毒の沼と化している地面へと崩れ落ちていく。流石に魔物は蛭を除いてそう簡単には倒せないようで、基本的にダメージを与えるのは俺の役割となっていたが、それでも、圧倒的な風景が広がっていた。

　【侵食】が発動すると同時に、根の先までは一瞬で毒の沼と化し、俺に取り付いていた蛭は１分とちょっとで死亡した。【眷属生成】が発動すると共に現れたトレントや小動物は、レベルが低いので一瞬で溶けていったとは言え、役立つ肉壁となっていた。

　そして、一番の戦果と言えば、

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特殊クエストが発生しました。

『水精霊の興味』

クエスト達成条件は、

一回も死なない。

自作の★★★★以上の武器のみで敵を倒す。

０／１００

です。

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水精霊のクエストが発生した。

　グドラは１レベル毎に１２ＳＰ貰える様で、最終的に４７レベルまで上がったので５５２ポイントずつ残っている。取り敢えず、【母樹】と【眷属生成】を上げ、ステータスはＨＰに３００、ＶＩＴに残り全てを振った。

　因みに、【母樹】のレベル２の特殊効果は【ＨＰ自動回復】だった。どこがポイズンマザー？

「…これ大丈夫だよな？」

　目の前に広がる毒の沼。グドラは既に取り払っているので徐々に毒は消えていくらしいが、倒れた木などはどうなるのか…考えただけでやばいんだけど、警告とか来てないし大丈夫だよな？

「ま、まあ戻るか」

　気にしたら負け。という事で、使いどころが難しすぎるとは思った物の、取り敢えずはクランに戻ることにした。