湖…と危険物
多分水曜日に1回更新します。
「……………」
「…本当に大丈夫なの?」
「だ、大丈夫です…よね?」
「いや、聞かれてもわからないよ…」
イサが腰を引かせながらつんつんしているが、それでもソラは一切反応しない。イサもだんだん不安になってきたのかつんつんするだけでなく、揺らし始めた。
「…緊急ログアウトって無かったっけ?」
「あ!あります!じゃあ…問題なさそうです、かね?」
「分からないけど、まあ大丈夫なんじゃない?」
取り敢えず、ストレージ内に有る石化回復薬などのいくつかの状態異常回復薬を振りかけた訳だし…まあ、問題ないだろう。
「……あー、イサ」
「なんですか?」
「ごめん、俺用事でき」
「回復次第湖のボス行くって」
「……」
「……」
戻ったら色々と聞かれるのは目に見えているので、先にお暇させてもらおうと外への扉に手をかけると、タイミングよく姉が出てきて、俺を見て笑いながら言い放った。
まあ…
「ごめん、急用!」
「十六夜!捕まえて!」
「?分かった」
「【精霊召喚:雷】『ライ』【精霊魔法:雷】【雷精霊の加護】」
「【精霊魔法:風】『フウ』【精霊魔法:風】【風精霊の加護】」
「見逃してください!」
「駄目、皆で仲良く」
姉め…俺が泳げないの知ってるだろうが。
今のAGIは550ぐらいまで有ると言うのに十六夜さんを引き離せることは無かったので仕方なく、人通りの多い道から路地裏に入り、【歩術】を使って建物の上に隠れた。
「【気配感知】【気配探知】…レンジ、出てきて」
「【隠密】」
…泳げないし水が苦手だから行きたくないというのに。
言いたい事は凄く分かる。クランを結成したから親睦を深めるために皆でボスを倒しに行くと言いたいのだろう。だが、俺にも尤もな言い訳…言い分が有る。
「フルパーティでも6人が限界ですよね!?俺行く必要ないんじゃないですか!?」
「……?…あぁ、レイドボス。30まで」
「……」
「出てきて。じゃないと…行くよ?」
…論破された。
「…分かりました。行きます」
「うん」
「……?え、十六夜さんどうやって登ってきたんですか!?」
「壁を蹴った」
俺が葛藤の末出した決断に、すぐ横から返事の声が聞こえたので見ると…普通に十六夜さんが立っていた。
「…凄いですね。てか、素のAGI値どのぐらいなんですか?」
「…400?」
「俺より低いし…。なんで俺と同じぐらいの速度だったんですか?」
「中級、強い」
「あぁー」
…影精霊と闇精霊。
正直言うと、下級風精霊だった時と下級雷精霊では、属性の違いぐらいしか体感出来なかったので、普通に影精霊では無く闇精霊にするのも有りだ。…あと、湖に行くのであれば乗り物が欲しい。クロがデスペナルティをくらっているから……丁度乗り物になる魔物でも出てこないかな。
「すみません、先に戻っててください。俺ちょっと準備してくるんで」
「ん、逃げ」
「無いです」
「分かった」
こちらを確認しながら去っていった十六夜さんを尻目に、闇精霊を召喚する。
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条件を満たしました。
闇精霊の進化が可能です
下級闇精霊
▶中級闇精霊
▷下級影精霊
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視界に表示される2つの選択肢。影精霊にするとどうなったのか見てみたかった感も有るが、中級闇精霊を選択する。と、黒い卵の様な物にヤミが包まれ、
『〜〜♪』
「あ、やっぱ声が出るようになった」
卵がひび割れると共に、中央から黒い和服を着た幼女が現れた。見た目的に言うとあまり変わっていないが、10秒辺りMP3消費でINT値を30%
「30%!?…え、強すぎ」
まあ、良いか。強くなる分であれば全然問題ないわけだから。
取り敢えず、1つ目のやりたい事は終わらせることが出来たので次は乗り物となってくれそうな獣魔を探しに行くため、第五の街同様西にある事を期待して、獣魔ギルドへと向かった。
道中は勿論、建物の上を走っているので人通りも少なく、あっという間に西区につき、それらしき建物を見つけることが出来た。
「…っと」
使う魔石は俺が持っている中で最高級の物であるバジリスクの魔核を。本来であれば水関連の魔石が良かったのだが、それだとランクがいくつも落ちてしまうので仕方なくバジリスクの魔核となった。因みに、魔核というのは魔石の上位版の様な物らしい。
バジリスクの魔核を持っている理由だが、プレイヤーで初めて到達した敵を倒したからとか言う物だ。到達した敵というのは恐らくあのバジリスクの事だろうし、称号に【到達者】という物が追加されている。…こんな理由で使って良い魔石じゃないような気もするが、まあ良いだろう。
「ふぅ……」
地下に降りると部屋が幾つも有り、それぞれで空いているか空いていないかが表示されていた。その中から空いている部屋を見つけ、中に入って魔法陣の上に魔核を置く。
「…でか」
大きさで言うと、人の頭を少し大きくしたぐらい。これは否応なく期待が高まり…
「【召喚】!!」
その掛け声と共に魔法陣は一瞬膨張した後、急速に縮んでいき…最終的に、魔核と同じぐらいの大きさの苗木が召喚された。
「は、え?……苗木?え、は?…バジリスクの魔核で苗木?は?」
…え、弱いなんて有りえないよな?…世界樹とかの苗木だったり…はする訳がないか。見た目が悪いし、そもそもこのゲームに世界樹が存在するかどうかすらわからない。ただ…バジリスクの魔核で召喚した魔物を【解放】する気にはなれないので…そのまま、一抹の望みにかけて
「【召喚契約】『グドラ』」
見た目がちょっと世界樹とは思えない苗木だったが、やはりステータスを見ると世界樹なんて神聖な物では無く、ちょっとヤバい物だった。
……因みに、乗り物としては使えない魔物だった。
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