答え
自爆は浪漫……。
……。
「え、そんな事ある?」
俺が負わせた大きな傷跡、湖に漂う大量の血を見てなんとなくは死亡原因が思いつく。深手によるスリップダメージだろう。
だが……
「ボス…だよな?」
まあ、いい。クリアはできたのだし、まずはこのフィールドから離れよう。レイナさんに言われた集合時間である10時までは、ゲーム内時間であと3時間ぐらい有るのでその間に試練の森のスリップダメージの原因を解明しておきたいのだ。
視界に表示された定型文にはいと答え、フィールドを出て試練の森へと移動する。手持ちのHP回復薬の数、所持金をギルドに預けてきた事等を確認してから、試練の森表層へと足を踏み入れた。
「…相変わらず暗い。スリップダメージは……あるな」
前回同様表示されている『状態異常:麻痺・吸血』という文字。前回は時間が経ったらHP減速量が2倍になっていたので…時間経過でHP減速量が増えるフィールド特性かと考えたがそれだと状態異常の説明がつかない。
正直、ある程度は予想がついている。
最有力候補が蛭。で、このフィールドが昆虫が多いことを考えると蚊や蝿などの可能性も十分に有るが……カブトムシなどの大きさを考えると、蚊や蝿だけ小さいという事は無いだろう。大きい蝿とか、絶対に見たくないので、蚊や蝿はこのフィールドに存在しない事を切に願っている。
ブーツだと足元を確認できない為、初期装備である皮のシューズに履き替える。勿論、【隠密】【気配感知】【気配探知】を発動し、片手にバジリスクが落とした短剣を構えているが……
「いないな」
両足のズボンをまくったり、靴を脱いだりして確かめたが、足元に蛭はいなかった。その後もHP回復薬を飲みながら体の隅々を探したが…結局見つける事は出来なかった。
「……どういう事だ?」
蛭は疎か、蚊や蝿すらも見つけられない。蚊や蝿が出てこなかったのは安堵の方が大きいが困惑せざるを得なかった。
これだと本当に、状態異常の原因は分からないがフィールド効果と判断することになってしまうけれども……。
「シャアァァァ!!!」
「げっ」
唐突に振り下ろされた鎌をぎりぎりの所で躱す。目の前を通り過ぎた鎌を見ながら持っている武器を弓へと切り替えようとするが…
「あぶっ……」
後ろから来たもう一つの鎌に妨害され、ステータス画面の操作が出来なくなる。状況で言うと、前後をデスマンティスに囲まれ、その周囲を飛んでいるデスワスプ。とてつもなく絶望的だが、【影精霊の興味】が発生している以上、簡単に死ぬわけには行かない。取り敢えず、手元にある短剣で鎌での攻撃をガードすると…
「えっ」
鎌が、崩れ落ちた。
「…は?」
鎌へと侵食を開始する波。まるで、バジリスクの目線攻撃を食らったかの様な有様のそれは…絶望的な状況の中に見えた光だった。
「これなら…いけるか?」
鎌が崩れ落ちるという未知の体験をしているデスマンティスを他所に、もう一体のデスマンティスにも斬りかかる…が簡単に躱されてしまった。デスマンティスが躱したのも有るが、体が思い通りに動かないような感覚。
「デバフ?」
バジリスクと戦い、片腕を切り落とした時同様の平衡感覚が乱れるような感覚と、レベルが下がって動けなくなった様な感覚。
流石に一回斬りつける毎にこんな事になってしまっては到底戦うことないので、剣を警戒している魔物を他所に俺は出口の方向へと走り抜け、逃げ出した。
「はぁ…あ、HP」
前回の様な過ちを犯さない為にも、HP回復薬を飲み、短剣の効果を確認する。
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『バジリスクの腐剣』★★★★★★★
装備ボーナス
全ステータス5割低下
▼
斬りつけた際、
『状態異常:石化・腐敗』を付与する。
剣を振る毎に平衡感覚低下。
▼
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「……わお」
今まで見てきたどの武器ともタイプの違うその武器。つい声が出てしまったのも仕方ないだろう。HP、MPを見ると、最大値が半減しており、それ以外のステータスも軒並み半減していた。
「ただな……」
未だに減少を続けるHP。前回はフィールドを移動してすぐに死んでしまったので、確認できていなかったが、この様子だとフィールド効果という訳では無いのだろう。やはり、体の何処かに蛭が張り付いているとしか思えなかった。
「…水攻めしか思いつかねえ」
体の何処かに張り付いているであろう蛭。姿が見えないので、短剣で攻撃を加えるのは難しいと考え、体全体に加えられ、俺にダメージがこない方法を考えたのだが…。
「…湖行きたくない」
湖に行くのは最終手段。取り敢えず…適当に自分の体の周囲に斬りかかってみる事にした。
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デスリーチを倒しました。
15000G
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「土踏まずとか……」
考えただけで背筋がやばくなるが、土踏まずを斬りつけた際に手応えすら無く倒すことが出来てしまった。【気配感知】【気配探知】を使っても姿が見えなかったので、隠密性能はだいぶ高いのだろう。
…考えるだけでゾッとする。
感想返さなくなった自分を褒めたりしてましたが、想像通りの答えです。
隠密、特殊能力特化の蛭が足裏に……。
考えるだけでぞっとします。




