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兎最強説

 ワイバーンは落ちてからすぐに行動を開始した。俺としてはもう少し転げ回ってくれれば、その間にHPの大半を削れたと思うので、行動を開始しないでほしかったのだが仕方がない。

 火球を放ちながら接近してくるワイバーンと一定の距離を保ちながら、先程と同じスタイルで攻撃を続ける。時々MP回復薬を飲みながら、MPを使う技を使う回数を少しずつ減らしていった。今のまま攻撃し続けると、MP回復量が消費に到底追いつかないのだ。仕方がないので、ワイバーンの体の鱗が剥がれている部分を重点的に狙い続け、最終的にはダメージをくらうこと無く倒すことが出来た。


「よし」


 取り敢えず、第五の街へ行くための条件はこれで満たしたので、第五の街へと向かうことにした。因みに、第五の街への行き方は2つ有る。一つが、第四の街と第五の街の間に有る草原を抜けるルート。もう一つがこの山から北へと下山するルートだ。ただ、山の北は魔物の群生地なため、そこを通るのはあまりおすすめではないらしい。


 まあ、わざわざ第四の街へと戻るのも面倒臭いので、北から抜けることにしている。『密蛇のローブ』を装備しながら【隠密】を発動して下山すれば、まず気づかれることはないだろう。出来ればレベル上げもしたかったのだが、この山は頂上以外には猿系魔物しかいないらしいので、深淵の森で使っていた方法は使えない。


 10分程かけて下山し、第五の街周辺にいる魔物を無視して第五の街へと移動する。第五の街ではプレイヤーなどはまず見かけず、NPCしかいなかった。取り敢えず、第五の街のギルドで達成したクエスト等を消化した結果、ギルドランクが6に上がっていた。そして、ギルドランクが6に上がったことで石化の状態異常を回復する薬も売られていた。


 ただ、今の状況では石化を回復する薬はあまり必要はない。今必要なのはどちらかと言うと火力だ。全力火力というわけではないが、ほぼほぼの全力火力をもってしても2割しか削れなかったバジリスクを削りうる火力が欲しい。


 …そういえば、迷宮の宝箱からレアな武器などが出るんだったか。第五の街にも迷宮は有るようなので、そこに挑むことにした。

 第五の街にある迷宮は、第五の街から北東へ少し出た所にある湖の横に有るらしい。湖の横に有ると言っても、今まで確認されている層では水没層は無いらしいので、カナヅチの俺でも安心して挑むことが出来る。



 迷宮は第三の街のものとは違い、草原フィールドだった。迷宮で一番最初に発見したのは罠だった。ここへ来るには確実に第三の街の迷宮で罠を経験する必要があったとはいえ、1層から罠が有るとは思わなかった。しかも、どんな感じなのかと発動させてみると、落とし穴が発生し、下には剣が大量に刺さっていた。


「殺しにかかってる…」


 第三の街の迷宮では、罠が発動しても矢が飛んでくるなど、運が悪いと死ぬ程度だったが、ここでは確実に殺しにかかっている。それから、周囲を見渡しながら進むと狼の群れを見つけることが出来た。ただ、兎の群れと戦っている狼だが。少し興味がわいたので、戦いに加わること無く戦闘を見ていると、数分後に狼が全滅した。


「俺が知ってる兎と違う」


 狼に攻撃を入れられてすぐに死んでいたのを見るに、HPが少ないとはいえ、俺が知ってる兎は空中を蹴ったりしないし、蹴りで狼を吹き飛ばしたりはしない。それに、ジャンプで10mを超えたりしない。ジャンプで10mを超えるなんて、今の俺のSTR補正では無理だろう。いや、もしかしたら出来るかもしれないが、軽いジャンプで10mを越えてライダーキックで相手を吹き飛ばしたりはしない。


 取り敢えず、折角見つけた獲物だ。今いる場所から70m程は離れているので【隠密】を発動している俺に気づくことは出来ないだろうし、攻撃することにした。


「【クイック】」


 ただ、蹴りで弾かれた。ちょっと意味がわからない。それに、矢が飛んできた方向である俺の方へと近づいてこようとしたので、全力で逃げさせてもらった。


 それから数分後、狼の群れを見つけたので、攻撃をした。


「【ダブルショット】【インパクト】」


====================

グラスウルフを倒しました。

▼ドロップ▼

グラスウルフの肉×1

グラスウルフの牙×1

2000G

====================

====================

第五の街迷宮の初討伐者になりました。

▼報酬▼

称号【初討伐者(第五の街迷宮)】

STP5

SKP5

スキルレベル限界上昇チケット×1

10000G

====================



 それから数時間程狩りを続けた結果分かったのは、この草原の頂点は兎である。という事だ。狼やらゴブリンやら蛇やら、様々な魔物がいたが、一番強かったのは兎だった。


 …意味がわからない。

色々と疲れたので時間も時間だし、一度第五の街に戻ってログアウトすることにした。


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