矢の雨
ステータスの方も同時更新です。
文字数多くなりすぎたので分けました。
レイナさんがブラッドスキルを発動させた。その事で一番変わった戦況は……間違いなく俺と雫先輩の所だろう。流石に余裕のあった雫先輩も、俺の説明を受けた上でブラッドスキルを発動されてしまえば焦らざるをえないようで、自壊を続けて放置していれば倒す事が出来そうな首へと毒の技を使いながら攻撃を加え始めた。
その横では俺も勿論攻撃を加えるには加えているが……如何せん適したスキルが存在しない為、高火力を出す事が出来ない。俺の敵である首が雫先輩の敵である首に近すぎるため、俺の得意とする範囲攻撃、爆破攻撃を使う事が出来ないのだ。また、相手の体が大きすぎる為【領域射撃:攻殺陣】を発動させることも出来ない。
「……レンジ、抜かされる事はあると思うか?」
「正直言うと高確率で……」
周囲に赤いオーラを撒き散らし、動かなくなったレイナさんと赤いオーラを纏った劣化災獣の首を盗み見ながら雫先輩に問われたので、正直に返答する。【血ノ暴巫】、【血ノ暴覡】と言っていたが……スキルとしては俺の【矢刻ノ雨】、【矢刻ノ雪】に等しい。要するに、必殺技に近い技をレイナさんは放とうとしているのだ。しかも、俺のと違って事前に無防備な状態になるようなので……効果が高くなるだろう事も伺える。……そうだな、取り敢えずナオに連絡を入れて──
「【エンチャント】『腐邪竜』」
「……、すみません雫さん、ちょっと動けなくなります」
「ん?なに──」
「【チャージ】」
現MPは5000程。レイナさんも雫先輩も大詰めを迎えようとしているので、俺だけ倒せないなどとは言ってられないだろうと判断して行動を開始する。何度も首を切り落としているクヌギさんはさておき……決定打に欠けるナオ達の手伝いの様な事も含めて、自分の敵を削ぎ落としてしまおう。動けないものの、通知でナオから『了解』という連絡が来たのを確認して問題なく進められる事に少し安心する。
ナオ達が弱いとは決して言うつもりは無いが……個でパーティとして機能する俺や雫先輩、レイナさん、劣化災獣の首に対して、6人で一つのパーティであるナオ達は相性が悪いだろう。ましてや……ブラッドスキルを発動しない、秘匿している限りだと倒せるとは思えない。
「……レンジ?……会話も出来なくなるのか」
動けないので雫先輩に心の中で謝りつつも……視界に映るレイナさんへと意識を向ける。そろそろ発動しても良い頃合いな気もするのだが……先程【収束極射】を受けた事で片目が失明している劣化災獣の首がレイナさんに迫っていくが、それでもレイナさんは動く気配がない。
俺と雫先輩同様、首による直接攻撃が届かない所で動かなくなったレイナさんへと劣化災獣が水の玉を狙い撃つ……が、周囲に展開されている赤いオーラにかんたんに弾き飛ばされた。……防御系スキルなのだろうか?
──と思うが矢先、レイナさんがスキルを発動させる。
「【暴血ノ神楽】、【収束極射】!!!!!」
撒き散らされ続けた赤いオーラが線となり、水の玉、劣化災獣の首と繋がって色濃くなっていく。そしてそこをなぞる様に放たれた【収束極射】が赤い線の道を辿って劣化災獣の息の根を確実に仕留めに行く。
劣化災獣を貫き、なにかに跳ね返されたように曲がり、再び貫く。俺の【領域射撃:攻殺陣】を一つの矢で行ったような光景が広がっていたが……貫通力などは俺の【領域射撃:攻殺陣】とは比べ物にもならないだろう。
「……拙いな。……仕方ない【毒素暴発】」
「……は?……あ、準備終わった」
レイナさんの圧倒的な光景を見て雫先輩が発動した【毒素暴発】というブラッドスキル。そもそも雫先輩がブラッドスキルを持っている訳が無いので思わず固まってしまったが……突如崩壊速度が早まりだした劣化災獣の首を見るに、俺がビリにならない為に残された時間も少ない。問い詰めるのはスキル発動後でも構わないのだから。
「【ミリオンアロー】」
MP回復薬を飲み、スキルを発動させる。上空、真上方向へと射た矢が……数千、数万となって劣化災獣へと降り注ぐ。【吸魂】、【吸魔】というMP回復手段だけでなく、【侵食領域】という災獣の様なスキルによって初めて成り立つこの攻撃は……、
『シャアアアアアア゛゛!!!』
劣化災獣だけに留まらず、超広域に雨の様に降り注ぎ始めた。
スキル群は次回(水)説明。




