白蛇戦開戦
プロセカで10連中3体★4引くとかいう頭おかしいことをしました。
0.000027%かな?
『シャアァァァァァ!!!』
「【矢刻ノ雨】【矢刻ノ雪】【サウザンドアロー】!!」
劣化災獣の雄叫びと俺のスキルの発動を皮切りに、戦闘が開始する。首が8つもあるからか俺が思っていた以上に首同士の間隔が広く、パーティ戦というイメージはそこまで強くはないのだが、クヌギさんが1本、ナオのパーティで4本、俺とレイナさん、雫先輩で3本を担当する事でお互いの首に介入を出来ない様に戦うことになっていた。最初の俺の攻撃だけは例外だが……下位災獣の何倍もあるその巨体を見上げながらMP回復薬を飲む。
因みにだが……、
「【収束射撃】」
「【ポイズンエンハンス】『朽腐木』!!」
「【領域射撃】!」
俺とレイナさん、雫先輩の間では3本を更に三人で分担し、誰が一番早く首を吹き飛ばせるかの勝負が行われている。最初にMPを大量に消費した俺が圧倒的に不利ではあるのでレイナさん、雫先輩には参加しないと伝えていたのだが……二人共に謎の確信を以てライバル宣言の様な事をされてしまった以上、真面目に行うしかないだろう。
レイナさんが相対する首の片目が吹き飛び、雫先輩が相対する首に木が根付き、俺が相対する首には大量の矢が生える……と、各々で全く違った結果を見せていたが意外な事に一番うまく行っていそうなのは雫先輩だった。
「……雫さん?先程までは使っていなかった毒のようですけど……」
「ポイズントレントの毒を色々と混ぜていたら出来た唯一品だ」
「……色々?」
「ああ」
レイナさん、雫先輩が会話をしている間で黙々と攻撃を加え続ける。それにしても色々……唯でさえ宿り木の様な効果を発揮しているというのにクヌギさんが相対する首は動きが遅くなり、少しずつ色が変色してきていた。元々が白色だったというのに、紫になる部分や灰色になる部分。レイナさんが思わず聞き返したのも納得なヤバそうな毒だ。
俺が相対する首が雫先輩の相対する首を治そうと動き出したのを妨害しながら周囲を見渡す。一番左の首を相手しているクヌギさんは……何をやってるのか良く分からないが回復薬の様な物を劣化災獣に振り掛けながら首を斬りつけていた。で、その隣の雫先輩、俺、レイナさんは……余裕を見せ始めた雫先輩と負けそうだからか焦った様子のレイナさんぐらいしか変わらない。右四本を相手取っているナオ達は中衛であるナオとルファさんが少し手間取っておりうまく行っていなかったが、レイナさんへと影響がある訳でも無さそうだし放置で良い。
「レンジ、周囲を見渡している余裕でもあるのか?」
「……雫さんは余裕そうですね」
「まあうまくいってるからな」
「……」
「……」
一瞬後ろから無言の圧力の様な物を掛けられた様な気がしたので思わずレイナさんがいる背後を見るが……案の定レイナさんが此方へと視線を向けてきていた。得意気な顔をする雫先輩も大概だが……、
「【収束極射】」
こんな初期からHPの最大値を全消費して全力攻撃を放つレイナさんも大人気ない。雫先輩はブラッドスキルを使えないからこそ……【収束極射】によって吹き飛びかけている劣化災獣の首が雫先輩に効く。
「首をけしかけるのは……」
「雫先輩?」
「……冗談だ」
「……」
「それにしてもレンジ、ゲームだと言って──」
「シャァァァアアア゛゛!!!」
一つの首の雄叫びが響き渡り、思わずそちらへと視線を向ける。地面に転がっている劣化災獣の首と、クヌギさん。雄叫びをあげた首……は普通に生えてきていた。
「……?え??」
思わず二度見したのも仕方ないだろう。そもそも部位欠損を直すスキルは相当高位な魔法系スキルだった気がするし、相手に発動できるのかが怪しければ相手に発動する理由も無い。一瞬他の首に噛まれた事で回復したのかと思ったが、雫先輩の首を筆頭にそんな余裕がある首は無いのだ。
「クヌギのスキルに相手を即死させない物と相手の部位欠損を回復させる物があるらしいぞ」
「へぇ……」
混乱した俺を見て雫先輩が教えてくれたのだが、間違いなくブラッドスキルだろう。防御系では無いだろうから片方がバフ系、もう片方がデバフ系のスキルなのだが……どちらがどちらか分かりづらい。恐らくは……即死させない物がデバフだろう。
「【領域射撃】」
レイナさんはバフ系スキルでHP最大値の回復手段を持っているらしく……本当にブラッドスキルは人それぞれで全く違った物になっている。雫先輩はまだ持っていないのでどういった系統になるのかは分からないが──
「そういえばレンジはどういったブラッドスキルを持っているんだ?」
次話は水曜予定。




