問題
精霊達の進化を目標とした以上、すぐにでも行動を開始すべきだと判断した俺は王都の墓地区にある迷宮へと移動してきていた。
精霊達の進化が目標なのでわざわざ戦闘をする必要はなく、加護を発動し続けるだけで良いのだが……どうせなら経験値を入手するに越した事は無い。第三の街にある迷宮では既に最深層である120層に到達しているし、第五の街にある迷宮は魔物の遭遇率がそこまで高くないので来た……最深層が更新され続けており、高レベルの魔物との遭遇率もとても高い墓地区。
「って、スライムのゾンビってなんだよ……」
元々薄緑色だったとはいえ、更に毒々しさを増しているスライムを精霊達の力で討伐しながら奥へと潜っていく。因みにゲームや小説などで最初の雑魚敵として出現しがちなスライムだが、このゲームでは俺は2種類の存在しか知らない。厳密に言うと今戦った良く分からないゾンビスライムを含めて3種類なのだがそれは置いておいて……1つ目が、災獣『レイクスライム』。名前だけしか知らないが、湖と見間違う程の大きさをしているらしい。
で、今戦ったゾンビスライムの元となっている『スワンプスライム』。元々は第八の街の解放条件であり、名前の通り湿地のボスとして君臨しているスライムだ。魔法耐性が高く、武器を溶解させる能力も持っているので【遠距離物理】だと楽に討伐……いや、精霊達の魔法で軽々討伐出来たからそこまで魔法耐性は高くないのか。
「これは……ポイズンワイバーン、か?」
新たに現れた敵を吟味しながら、それに適した精霊にお願いして討伐をしてもらう。その後もオーガジェネラルのゾンビやグランドタートルのゾンビ、デスマンティスのゾンビなどをどんどん倒しながら奥地へと進んでいく。
因みに、現在の俺の精霊だが……中級光精霊、中級聖精霊、上級闇精霊、中級影精霊、中級火精霊、中級炎精霊、中級土精霊、中級鉱精霊、中級風精霊、中級雷精霊、中級無精霊、中級幻精霊、中級水精霊、中級氷精霊である。
【Recorder】の方々曰く樹精霊を主として他にも様々な属性の精霊がいるらしいのだが……現状契約をする手段が分からないので仕方がないと諦めている。
その後も基本的に戦闘を全て精霊達に任せながら進む事数時間、雫先輩からイベントの件についてレイナさんが了承したとの連絡を貰うとともに、毒作りに成功したという何とも物騒な内容をとても嬉しそうな文面で伝えられた。結構気になりはするのだが……藪蛇としか思えなかったので手短に返信するに留め、再び狩りを再開する──
──事数分、今度はレイナさんから連絡が寄越された。内容はイベント戦での勝負を楽しみにしています、という物。雫先輩がどんな誘い方をしたのか大体察せられた文面だったのだが、しっかりと俺も勝負に参戦させられているのが何とも言えなかった。対等な相手として認められている様な気がして悪い気はしないのだが……かと言って雫先輩やレイナさん程勝負、好敵手には餓えていない。取り敢えず無難な返答をしてから再び狩りを再開する──
──事数分、今度は雫先輩から毒でレイナさんに対抗できるか?というちょっと不安そうな文面の連絡が送られてきた。これに関しては何とも言えなかったので、微妙ですと返しつつ、後で毒薬に使える素材──ポイズンスパイダー、ポイズンワイバーン、バジリスク等々のアイテムを持っていく事を伝えて、再び狩りを再開する──
──事数分、今度はレイナさんから……。
「──って事があってさ」
「へー、蓮司とレイナさんと雫?さんで組むんだ」
「うん」
時は変わって夜ご飯。いつもどおり姉と二人でご飯を食べていたら近況を聞かれたので、連絡が大量にあった事を話してみた。姉は姉で想像通りというべきか十六夜さんと組んでおり、なし崩し的に残りの【PRECEDER】とも組んでいたらしいので……雫先輩がレイナさんを誘っていなかったらレイナさんだけあぶれる事になっていたのだろう。
「全員戦闘職だけど……食料とか、どうすんの?」
「あ……持ってく?」
「アイテム制限あったでしょ」
「あー……確かに」
姉に言われてから初めて気づいた食料問題。矢は自作出来るので全く問題無いだろうが、食料となってくると話は変わってくる。満腹度を回復させるアイテムは【調理】スキルなどを保有していないと作る事は出来ないし……イベントに持っていけるアイテム数には限りが有るので現地で全く入手しないという選択肢は取れない。
SKPには余裕が沢山あるので問題ないが……【調理】スキルを何レベルまで取得するか……。雫先輩、レイナさんが共に取っていない可能性も考えると……安全策を取って最大まで上げておくか?
早くイベントに入りたいので巻きました。
多分次から入ります。
話数予定は1章分程度(闘技場イベ程にはならない筈です)




