クラン戦13
弟が……中1なのに厨二病と反抗期を兼ねたようなハイブリッド人間に成りかけてる……
「黙れ、下級民族」とか言われるとほんと……
「待て、レンジ」
「え……」
流石に倒しきっただろうと判断し、加護を全て解除してMP回復薬を飲んでいると横から短剣が飛んでくると共にナオが煙の中から現れた。
「生きてたんだ」
「守ってくれた奴等がいたからな」
「へぇ」
煙が晴れた後もその場にいたのはナオのみという事はナオ以外のプレイヤーを倒せたのは間違いない。ナオより硬そうなミウさん、ハクさんが死んだのにナオが生き残ったという事に些か疑問を覚えるが……、
「それと悪い──」
「ん?」
「此処からは僕が相手だよ」
「──今は無理だわ」
「ッ!?」
警戒していたといえば嘘になるぐらいには考えていなかったルトさんの不意打ち。それを真後ろからくらう形となった俺は……ギリギリの所で腕を切断されずすんだが、指を数本と弓を持っていかれた。
「……!」
「ごめんねレンジ君。僕としては真正面から受けて上げたかったんだけど……クランとして、負けるわけにはいかないんだ。レンジ君との対戦はソロ戦まで待っておく事にするよ」
「……俺は今も負けるつもりはありませんが?」
「弓を持てないだろう?」
「……」
確かに殆どの左手の指は半ばから持っていかれている。が、だからと言ってそう簡単に負けを認めて良い物では無いだろう。クラに協力をしてもらうのは厳しいし、コリィ、ラドの協力では物足りない。俺がルトさんに勝つには自分の手で……いや、精霊達の力で勝つしか無いのだ。地味に痛い指先が集中力を削いでくるが……頑張るしか無い。
「【精霊王の加護】」
「【竜王の加護】」
「【精霊魔法】【火精霊の加護】【炎精霊の加護】【水精霊の加護】【土精霊の加護】【樹精霊の加護】【風精霊の加護】【雷精霊の加護】【無精霊の加護】【光精霊の加護】【闇精霊の加護】【影精霊の加護】」
「【光竜腕】【闇竜腕】」
「疑似、竜の吐息」
「【炎竜の吐息】」
俺の周囲から発射された11色のブレスとルトさんの顔前から発射された炎竜の吐息。さすがは本家というべきなのか、11種類を併せ持っても同等か少し押しているといった程度にしかなっていなかったがそれで充分だ。ルトさんをその場に釘付けに出来れば良いのだから。
「【領域射撃】」
「んなっ【蜃気楼】」
「【領域射撃:攻殺陣】」
「なっ、【騎士王の誓い】【ハイプロテクト】【ファランクス】」
「疑似、エンチャント」
武器を持っていなくても、矢を番えていなくても使う事が出来、それぞれでクールタイムが被らない【領域射撃】が俺の唯一の勝ち筋と言っても問題なかった。【領域射撃】にはスキルの重ねがけが出来ないとはいえ、後付けは出来る。精霊達に思い思いのエンチャントをしてもらった矢でルトさんを倒し切る。それが俺の考え出した方法だった。精霊王の加護でMP消費量が抑えられている筈なのに、どんどんと減っていくMP。あと数十秒と持たないが、その間にルトさんを倒しきれば問題ない。
「【テンスアロー】【チェイサー】【ペネトレイト】」
一度だけ、親指に引っ掛ける形で弓を構え、矢を射る。その直後に弓を落としてしまったが、【チェイサー】がしっかりと発動した10本の矢は正確にルトさんの元へと飛んでいき……突き刺さった。
「くっ……あ、まく見てたよレンジ君。だけど、そう簡単に負ける訳にも──」
「疑似、ハンドレッズアロー」
【領域射撃:攻殺陣】を撃ち終わっても尚生き残っていたルトさんに、トドメと言わんばかりの大量の属性矢が降り注ぐ。例え俺が撃つ事が出来なくても、精霊達の力があればこの程度の事は造作もなく出来るのだ。ルトさんに負けたくない理由が有るように、俺にも……ん?まあ、負けるのが嫌なのは間違いないから倒させてもらおう。
「っつ……この借りは──」
「疑似、ハンドレッズアロー」
──ソロ戦で。多分、ルトさんが言いたかったのはそういう事なのだろう。最後まで聞いてあげれば良かったのだが、次の事を考えるとそんな時間は無かった。
「……待ってやれよ」
「ならMP回復薬飲んで良い?」
「いいわけ無いだろ【ダークスピア】」
「ッチ、【ショートワープ】!!」
当たり前のようにルトさんとの戦闘直後に仕掛けてきたナオの攻撃を、【ショートワープ】を使う事で躱す。まずいな……MPがほぼ……尽きた。
「んっ!?」
「っ!」
俺のMPが尽きる。それは要するに、俺が召喚していた全ての味方が送還される事に違いなく……グドラが消え、精霊達も消えた。当たり前のように解除された【気配感知】に【気配探知】の所為でナオの居場所が掴みづらくなり、グドラが消えた事で足場も元通りの状態になった事でナオが影へと潜りこんだ。
「負け、か」
「いや、あいこだな。次はフルボッコにしてやるから首洗って待ってろよ」
最後に見えたナオの顔は、好戦的に笑っていた。
……流石に右手の矢で倒すのは無理だったか。
ルトさんの敗因は舐めていたこと、緊急回避手段が【蜃気楼】しか無かった事、などです。
【ショートワープ】さえあれば負けなかったのに……。
次話どうするか……
レンジ視点のクラン戦
3人称視点のクラン戦
パーティ戦へひとっ飛び




