クラン戦1
プロローグ的な何かで他者視点を入れてみました……。
「う、嘘だろ……!?」
俺達蒼炎騎士団の初期集合地点となるはずだったマップの中央には、木が生えていた。
自分でも何を言っているのかイマイチよく分からなかったが、二つの木が生えていた。
ところどころにある森に生えている木の数倍、下手したら10倍近くの高さが有る木。初期配置でマップの中央を選択したリーダーがナニカしたのだと願いたかったが、示されているデバフがそうではないことを告げている。
「……な、んだよこれ」
クランメンバーも横で唖然としていたし、他にも中央を集合場所としたであろう幾つかのクランのメンバー達がみな、口を開けて呆けていた。
集合場所へと移動しようとしたその矢先、唐突に出現した木に俺の思考はフリーズさせられていた。
「きゃっ!?」
少し離れた所にいた女が、か弱い悲鳴をあげながら地面に沈んで死亡する。そう、沈んだのだ。いつの間にか地面が毒沼になり、俺の足元を不安定な状態にさせていた。気づいたら首を飛ばされていたクランメンバーに、光り輝く粉の元、動きを止めたプレイヤー。腐毒の森へと行っていた俺ですら毒のダメージを受けているんだから、殆どのやつが何も出来ずに死亡する。
「────ァァァアアアアア!!!!」
唐突に真正面から受けた光の中、見えた生き物は──
【PRECEDER】が北東外側に集合すると決めた中、俺は南西内側で、ソラは北西外側で個人行動をする事が認められた。満場一致の多数決結果によってリーダーをする事になった楓さんは十六夜さんの近くを初期転送地として決定し、クラン員──俺とソラを除く──は北東の外側端の方を目標に集まる事になった。
因みに、最初はマップのど真ん中を目標にしようとしていたのだが、それはお願いして止めてもらった。どうせグドラを設置するのならば真ん中に根付いてもらう。これは俺の中では絶対のことだったのだ。
「っし、行くか」
南西内側の、マップの中央からそれ程離れていない所に転送されたのを確認してから、一直線でマップの中央へと向かっていく。出会ったクラン員しかマップには表示されないが、俺の【気配察知】は先客が複数人いる事を示していた。因みに【気配察知】は【気配探知】の上位スキルで感知度合いは下がるが、MPを消費せずに常時発動するスキルだ。
「おっしゃてめえらは俺様、蒼炎騎──」
「私の──」
「やっぱ人い──」
「【領域射撃】」
何か言っていたプレイヤー達を一撃で散らし、速攻で二つの苗木を地面に設置する。3人を倒しただけで討伐ポイントが9も入ってた事に少し驚きながらも、どんどん大きくなっていくグドラを横目に残りの4体の従魔も召喚する。
「【召喚】『クロ』『コリィ』『クラ』『ロスト』」
4体それぞれに速攻で母樹の効果を付与する事で毒完全無効など様々な特殊効果を付与する。因みに、クロは一度だけ進化してナイトメアキャットになっていた。進化の際に選択肢としてアサシンキャットかナイトメアキャットの2択があったのだが、前衛にロストという頼もしすぎる従魔がいるのでナイトメアキャットにした。
ロストという名前は……たまたまその場に立ち会った複数人全員が装備ロストを思い出したからという単純な理由だった──
「なっ!?バジリ──」
「シャアアァアアァァァァ!!!」
「……やっぱロストだな」
光へと変わっていくプレイヤーを眺めながらロスト、バジリスクを見て呟く。バジリスクの魔核から当たり前のように召喚されたバジリスクだが、深層のバジリスク程度であれば囲まれても倒せる程度には強くなっている。グドラの効果でHPやMPが自動で回復するし、攻撃に毒属性、毒特攻も追加されるし……と深層のとは比べ物にならないぐらい凶悪過ぎる存在へと変貌を遂げていた。
もはや召喚士が最強職なのではと思ったりもするのだが、召喚士をメインにしている人でないと育成時間やSKPなど色々なものが割に合わないので、十六夜さんの様に乗り物を獲得する程度に留めるのが普通らしい。称号数によるSPの暴力……と思わないでもないが先駆者の特権だろう。
既に視界から消え去ったクロ、コリィ、クラの行き先を想像しながら、自分の討伐ポイントを見てみると……14。
クラン戦は勝ったと判断して良いだろう。




