閑話:書籍化記念SS
この都度、TOブックス様より拙作『不遇職の弓使いだけど何とか無難にやってます』が書籍化する事になりました。
記念SS、ライ目線の日常です。
楽しんで頂けると幸いです。
ゴロゴロしてたい。面倒くさい、ずっとぐでぇーっとしてたい。
やっぱり、ゆっくり揺られながらぐでぇーっとする時間は私の心を満たしてくれていた。
いつからそんな事を考えてたのかよく分かんないんだけども、一つだけ間違いなく言える事がある。
それは……
「……【ハンドレッズアロー】【インパクト】【ブラスト】」
彼、レンジの近くにいれば、美味しい魔力が食べられる。
隣にいるまくr……ではなく闇精霊、ヤミは何を考えてるのか良く分からないけれど、私はやっぱり思うのだ。
レンジの頭の上は、風で作ったベッドにも勝る。
頭上にいる私とヤミを気遣ってか、あまり乱暴に頭を動かす事もないレンジは優しいし、時々くれるパックァという果物はとても美味しい。このベストポジションを見つけたのが私では無いのは癪だけれども、れべりんぐ?という良く分からない事をしているレンジを見ながら思うのだ。一緒に日向ぼっこみたいなの出来ないのかなぁーって。
私……というよりも、レンジの周りには変な精霊が沢山いる。隣でうつ伏せのまま眠っているヤミに、何が駆り立てるのか良く分からないけれども、いっつも飛び回ってるファイ。振り回されてるアースには同情するけれども、それを止めようとする精霊がいる筈もなく、いつ見ても目を回している。他にも、何を考えてるのか良く分からないファンに、いつも笑ってて逆に不気味なリムに、おどおどしっぱなしでいつもリムの近くにいるティア。
まともな精霊は私ぐらっ……?ほらやっぱり。レンジにバレない様に光弾で攻撃してきたリムは頭おかしい。
私がまともだったから良かったものの、私も変だったらレンジが気疲れしちゃうのは間違いない。今はヤミを枕に至福な一時を過ごすのだ。なんか笑みが深まったリムなんかに構っている時間はない。
そう言えば……ファンはいっつも何処を見てるんだろう?
んー……、んー?まあ、いっか。
あ、待って起き上がらないで私の枕!
久しぶりに動いたヤミを倒して、再び良い形に枕をセットする。うん、これでよし。私の枕はたまに動いちゃうけれども、それ以外は完璧なんだ。『ふぎゅ』みたいな音が出かかった様な気もするけれども、レンジにバレてないなら問題ない。ファンを引っ張って近づいてきたリムも、この際気にする必要は無い。今は……ファンと目が合った。
………。
……。
……?
ファンに手を引かれ、レンジの頭上から飛び立つ。相変わらずファンの表情は何一つ変わらないし、指さした方向に有るのは木だけだ。よく見ても何か有るわけでも無いしファンを見ても首を傾げるだけ。
んー……、やっぱり良く分からない。取り敢えずもどサンダーボール!
「うわ、ちょっ、ライ!?」
……。
「ライ、程々に……」
私の枕と居場所を奪ったリムに、レンジに被害が無い程度に攻撃をしたけれども、上手く受け流されてレンジにバレてしまった。
やっぱり、あの笑みは悪い笑みだ。レンジに向けて攻撃するのはファイぐらいで十分なのに、これじゃあ私もそういった扱いをされてしまう。最後のまとも精霊である私が何とかレンジの心のオアシスにならないと。
「守ってくれてありがとう、ヤミ」
あ、リムの笑みが固まった。
守ってくれてありがとうでの笑みの深まりからの急落下。うん、すごく良い気持ち。
確かに、いつも頭上でファイからレンジを守ってるのは私かヤミだ。私じゃないとなったら、ヤミ一択だったんだと思う。リムもそれが分かっているのか、悔しそうに笑いながらも私の定位置から離れていった。
あー、ようやく枕を使って眠れる。私の至福の一時はようやん?光が……
目が、目が!?
レンジの頭頂部に一瞬見えた光は一瞬で大きくなり、私の視界を塗りつぶした。リム……絶対リムだ。まだ上手く見えない視界の中からリムを見つけ出すと、案の定笑っていたし。
今は怠いからやらないけど。
絶対いつかやり返す。
枕の温もりに身を委ねながら、薄れゆく意識の中私はそう誓ったのだ。
あれ、これ誓うの何回目?




