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36話
まだ熱を持つフレイムゴーレムの破片——
ヴィオラ達四人はそれぞれが手に取って観察していた。
ちなみにフレイムゴーレムの炎が消えた後は、ワシが《魔力光》を出しておいたので、視界は明るい。
「こんなに固い岩が粉々になるだなんて……」
「戦闘時間が半刻もかかってないし……」
「わ、わたしだったら、最初の一撃で死んでました」
「なんだったんですの、あのすさまじくも洗練された魔力は……」
ヴィオラ達の気持ちが落ち着いたころを見計らい、ワシは言った。
「さて、お主たち。約束は覚えておるな?」
答えたのはヴィオラじゃった。
「フレイムゴーレムを倒したら言うことを聞いてもらう、だっけ?もちろん覚えてるわ。でも、一つだけ……その、聞いてもいいかしら?」
ヴィオラが不安そうに訊ね、ワシは頷いた。
「私も、あんたみたいに……いえ、あなたみたいに……なれるかしら?」
「先程の戦いレベルなら、十分可能じゃ」
「あの、ウチも質問してもいいかな?」
「もちろんじゃ、イリス。なんでも聞くがよい」
「ウチの武器は弓だし。それでも……強くなれるかな?」
「ワシが鍛えればお主の矢は地平に届き、岩どころか、金属の盾すら貫くじゃろう」
「わ、わたしも質問があります!」
「よいぞ、セレーヌ。なにか聞きたい?」
「わ、わたしの盾は、ゴーレムみたいな強い敵から、皆を守れるようになれますか?」
「お主の盾はゴーレムどころか、ドラゴンの爪すら防げるようになる」
「あの、わたくしも質問よろしいですか?」
「何でも聞くがよい、リリエットよ」
「わたくしとレイヴァリアさん……いえ、レイヴァリア様の魔力は、なにが違うのでしょう?」
「同じじゃよ。お主とワシとの違いは知識と経験、ただそれだけじゃ」
「それじゃあ……『私も』『ウチも』『わ、わたしも』『わたくしも』……強くなれますか?」
ヴィオラの、イリスの、セレーヌの、そしてリリエットの目が、期待と不安の色を浮かべる。
ワシは皆の気持ちすべてを包み込むように微笑むと、大きく頷いた。
「そのためにワシはここにおる」
「レイヴァリア様……」
ヴィオラが跪いた。
「「「レイヴァリア様……」」」
残る三人、イリス、セレーヌ、リリエットもヴィオラ同様に跪いた。
ワシを見上げる8つの瞳からは涙がこぼれ落ちておった。
「どうか今までのご無礼をお許しください」
「どうかウチの……」
「わ、わたしの……」
「わたくしの……わたくし達四人の師となり、魔導の深淵へのご指導を切にお願いいたします」
「引き受けよう」
この瞬間、スノーレギンスの四人——槍のヴィオラ、弓のイリス、盾のセレーヌ、魔術のリリエットがワシの弟子となり、共に武の道を歩む同士となった。
ワシの目的である『普通の生活』は……ま、まぁこれくらいなら支障はなかろう。
師匠だけに、のう。
なんつって。
カカ。




