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 30話


「入れ、無礼な振る舞いは許さんぞ?」


 おま言う?なことを言われ、扉を開けると、そこはまるで別世界じゃった。


 意味のない装飾品に囲まれた豪華な部屋。

 まるで『金が有り余って仕方がない』とでも言わんばかりに、飾られているきらびやかな品々。


 高そうな椅子にどっしりと腰を沈める男が口を開いた。


「よく来ましたね。ワタシが村長のガルディス・ブライトです」


 でっぷりと肥えた体躯。

 腕を組み、無駄に広げられた足。

 脂でギトギトな顔には 胡散臭い笑みが張り付いておる。

 ふんぞり返った姿は、 『ワタシの前に立つ者は皆、ワタシの下僕である』 などと、心の中でうそぶいてそうじゃ。


 眼差しは軽蔑と傲慢に満ち、スノーレギンスの娘達を値踏みするように、ネットリとした視線を向けておる。


 ワシは、静かに息を吐いた。


 この男は村人の貧困など気にも留めておらぬらしい。

 己の贅沢だけを優先し、権力を振りかざすことしか興味のない人の形をした豚じゃ。


 ——不快じゃな。実に、不快じゃ。


 じゃが、怒りを表に出すのはまだ早い。

 隣を見ると、ヴィオラ達も少なからず不愉快に感じておるようじゃ。


「……Bランク冒険者『スノーレギウンス』のヴィオラ・エイスターよ」

「同じくイリス・フェルマルだし」

「お、同じくセレーヌ・ヴェルシアです」

「同じくリリエット・ノルヴィエですわ」


 娘達は礼儀として頭を下げた。


 村長は舐るようにニヤニヤと娘達の全身を見つめておる。

 なんというキモい男じゃ。


 やがて湿度の高い視線がワシに向き——


「ブフフ。それで、そこのお嬢さんは?」


 ワシの自己紹介は必要なかろうと思っておったのじゃがな。

 仕方あるまい。


「レイヴァリアじゃ」


「ん?家名はないのですか?」


 村長は怪訝そうに眉をひそめた。


「ただのレイヴァリアじゃ。なにか問題でも?」


 村長は吹き出した。


「ブフッ!てっきり貴族のご令嬢が物見遊山で同行しているかと思って警戒してしまいましたよ。

 ブフフ……そんなに美しい見た目なのに平民とは……かわいそうになぁ。ブオッホッホッホ」


 ああ、なるほど。

 つまり、こういうことか。

 この男は自分の見た目に劣等感を持っており、それを補い、覆い隠すように金に執着するようになったのじゃな。


 この国では、貴族の血筋を持つものが家名を持つ、と言われておる。

 じゃが実情は違う。

 家名は金で買えるのじゃ。

 商売をするものは、相手に舐められないために高い金を払い権威のある家名を買う。

 もしかしたら、スノーレギンスの4人も、そうしたのかもしれん。

 少しでもナメられないように。


 村長の馬鹿笑いする中、ヴィオラが庇うようにワシの前に立って、言った。


「そんなことはどうでもいいわ。

 話があるならさっさとしてちょうだい。

 私達はすぐにでも討伐へ向かいたいの」


「討伐? お前たちみたいな小娘がですか?ブオッホッホッホ!」


「なにがおかしいのよ?」


「無駄なことは止めておきなさい。

 どうせ逃げ帰ってくるだけです。そんなことより——」


 ニチャリと顔を歪めた笑みを浮かべ——


「今からワタシの相手をしませんか?

 お前たちなら、一人10万ZL払っても構いませんよ?」


 おぞましい提案に、ヴィオラは慣れたものなのか、冷静に返した。


「遠慮させていただくわ。

 プライドを捨てて端金をもらうより、クエストを達成して300万貰ったほうがいいもの」


「300万ですと?ブオッホッホッホ。

 バカも休み休み言いなさい」


「は!?ど、どういう意味よ!?」


「お前たちのような女だけのパーティーに300万ZLも出せますか。

 せいぜい50万ZLがいいとこです」


「な、なに言ってんのよ!

 ギルドに正式に依頼した内容を現場で変えるなんてできるわけないでしょ!」


「ブオッホッホッホ。嫌なら受けなければよろしい。

 ワタシはどっちでもいいのですよ?

 それとも、ワタシに体で奉仕しますか?」


「いいじゃろう」


「ぶへ?」


「「「「え?」」」」


 ワシの言葉が意外じゃったのか、村長だけでなく、ヴィオラ達も驚いた顔をしておる。


「な、なに勝手に了解してんのよ!

 私達に体を売れって言ってんの!?

 ふざけんじゃないわよ!」


「なにを言っておる?その前の話じゃ」


「前の話?」


「50万ZLで討伐を受けるってことじゃ」

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