28 ヴィオラ達の普通
28話
「冒険者ギルドから来た『スノーレギンス』よ」
ヴィオラが告げると、門番の男はあからさまに嫌な顔をした。
「……なんの用だ?」
「ブラックミスト坑道の件よ。私達が受注したの」
「……入れ。すぐに迎えのものが来る」
男は門を開き、めんどくさそう歩いていく。
「——そこで待ってろ」
入ってすぐの場所にあるベンチを顎で示すと、欠伸をしながら元の場所へ戻った。
は?
いやいや。
意味がわからん。
なんじゃ、この扱いは?
ワシらは歓迎されておらんのか?
たしかにワシ等はアビーも含めて全員が女で、ワシに至っては5歳児じゃ。
冒険者としては頼りなく見えるかもしれん。
じゃが、そちらの要請で駆けつけたのじゃぞ?
村を助けに来たのじゃぞ?
いくらなんでも、その態度はなかろう。
ムカムカしながら座っておると、弓娘イリスが話しかけてきた。
「レイっち、超ピキッてんじゃん。マジウケる。
——まぁ気にすんなし。こんな扱い、ウチ等にとっちゃ普通だし」
「これが普通じゃと?」
「そ、そうだよ。わ、わたし達がクエストを受注した冒険者だって言うと、いつもこんな感じなんだよ?」
「つまり、女だからナメられてるってわけですわ」
盾娘セレーヌと杖娘リリエットが平然と言ってのけた、
「だからよ」
ヴィオラの声は少し震えていた。
「だから、私達はAランクにならなきゃいけないの。これ以上私が——私の仲間が馬鹿にされないために」
ヴィオラは、色が変わるほど強く拳を握っておった。
なるほどのう。
実際に戦った身からすると、この娘達は決して弱くない。
たしかに未熟じゃが、そこいらの男など逆立ちしても敵うまい。
先程の無礼な門番レベルなら、何人いても話にならんじゃろう。
なのに——こんな仕打ちを受けるのか。
これがヴィオラ達にとっての普通。
普通……か。
こんな普通——クソ喰らえじゃ。
ワシはヴィオラの背中をバシッと叩いた。
「痛っ!なにすんのよ!」
「ヴィオラよ、安心するがよい」
「は?急になんなのよ」
「お主らは強くなる。このワシが保証する」
「いや、だから、なんでそんな偉そうなのよ?」
「カカカ。まぁよいではないか。それより、約束は守るのじゃぞ?ワシがこのクエストを一人で達成したら——」
「何でも言うことを聞く、でしょ?はいはい。わかってるわよ。
でもどうしてかしらね。
最初は、何いってんのこのチビスケって思ってたのに、今じゃあんたなら、なんとかしてくれる、って思っちゃってるのよ。
——ふふふ。こんな生意気なおチビちゃんなのに、変な話ね」
「カカカ。たしかに変な話じゃな」
笑いながら心に決めた。
——ワシがこいつらを育ててやる。Aランク冒険者に——いや、一流の戦士にな。




