表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/61

26 お弁当を持って

 26話


 ゴーンゴーンと2鐘が鳴るとほぼ同時刻。

 待ち合わせ場所の空き地へ到着した。

 さすがワシ。

 ギリギリ間に合ったようじゃな。


 不機嫌そうな4人娘が待っておったので、ワシは爽やかに挨拶をした。


「おはよう、小娘共。ワシの分の食料は買ってきたじゃろうな?」


 ごく普通の挨拶じゃな。


「「「「へ?」」」」


 4人が間の抜けた声を出しおった。


「あんた、なんで手ぶらなのよ?それにその格好……」


 ヴィオラがキレ気味で言った。


「めっちゃナメた格好してんじゃん?ウケる」

「あれぇ?もしかして、行くの、わ、わたし達だけ?」

「そんなかわいい格好で来られましても、ねぇ?」


 弓娘、盾娘、杖娘は三様の対応じゃった。

 かわいい格好、か。

 カカカ。

 杖娘め、なかなか見る目のある奴じゃ。

 この膨らんだスカートは、ワシのお気に入りトップ10に入る代物じゃ。


 じゃが、けしからんな。

 人間としての基本がなっておらん。


「小娘共よ。普通は、まず挨拶じゃぞ?人間関係の基本は挨拶なのじゃ。——それに手ぶらではない、ホレ」


 手に持った小袋を掲げてみせた。


「——一応聞くけど、なにそれ?」


「宿屋『猫の尻尾亭』の名コック、ゴウ殿特製ウマウマ弁当じゃ。愛情と栄養がたっぷり詰まった究極の弁当じゃぞ? もちろんアビーの分も入っておる」


「にゃんにゃん♪」


 ワシとアビーは、満面の得意顔で自慢してやった。

 知っておるぞ。

 今日の弁当には、なんとワシの大好物の旨味たっぷりチキンソテーが入っておるのだ!


 今からヨダレが止まらんわい。


「……あのねぇ、あんた、私達の格好見て、なんとも思わない?」


「ん?」


 言われてよく見ると、4人全員が巨大な荷を背負っておった。

 特に巨漢盾娘の荷の量は、ワシが5人は入るのではなかろうか。


「3日分の旅装にしては多いのう」


「10日分よ!」


「3日分でよいといったじゃろ?」


「んなわけにはいかないでしょ!イースティア村まで片道3日!つまり往復6日かかるのよ?」


「ふむ。説明が面倒じゃな。——小娘共よ、荷を下ろして一箇所にまとめるが良い」


「なんなのよ、いったい……ブツブツ」


 小娘共はブツクサ言いながら、ワシの前に大荷物を置いた。


「置いたわよ。で、どうすん——」


「——《無限収納》」


 ワシがそう呟いた瞬間、大量の荷物が地面から消え去った。


「「「「はい?」」」」


 小娘共の反応がいちいち面白いが、時間がないでのう。


「《転移》」


 問いも許さず、一瞬でその場を移動した。



 ‡



 次の瞬間、ワシの眼の前に知った顔があった。


「——は?」


「久しぶりじゃのう。ハンス殿」


 初日に世話になった門番の男——ハンス殿じゃ。


「な、な、な、な!?」


「これこれ、落ち着くが良い、まずは深呼吸じゃ。ホレ、スーハースーハー」


 ハンス殿が深呼吸をしていると、ワシの後ろがワーワーキャーキャーとやたらうるさい。


「へ?こ、ここって……塀の外だよね?」

「はは、ウチってまだ寝てるんだ。変な夢ー。超ウケる」

「こ、ここって……北門ですか?」

「空間……転移!?魔法陣なしで!?ホホホ……こんなのありえませんわ!」


「呆けてる時間はないぞ?——アビー!」


「にゃー!」


 ボンッ。


 一瞬でアビーが変化する。

 今までで一番の大きさじゃ。


 ピョンとアビーに飛び乗り、あんぐりと口を開ける4人娘に言った。 


「さっさと乗るがよい。グズグズしておったら、アビーが咥えて運ぶことになるぞ?」


「「「「は、はい!」」」」


 妙に素直な返事のあと、小娘共は慌ててアビーによじ登った。


「では、ハンス殿。これにて失礼するのじゃ。——ゆけ、アビー」


「にゃっ!」


「「「「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」」」」


 小娘共の絶叫を残して、ワシ達はハンス殿の職場を風のように走り去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ