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50.双子の女神


ここから第8章となります( ^ω^ )


 イスパーン王国の王都ヴァーミリアは、この日大混乱に陥っていた。王都の中心近くにある大貴族の邸宅が並ぶ一角にある一際大きな屋敷が、炎に包まれて燃えていたのだ。

 その屋敷の主人は、″オーガ侯爵″として名の知れたマンダリン侯爵。彼の屋敷が、大火に包まれている。


「貴様……何者だ」


 燃え盛る屋敷の中で、オーガのように巨軀の男──マンダリン侯爵が、全身血まみれになりながら呻くように言葉を発する。彼の持つ愛用の魔法具マギアである巨大斧『蟻蛾豚ギガトン』は、既に遠くに吹き飛ばされ手元にはない。

 一方、彼の前に立つのは、金色の髪を持ち半面を被った10歳くらいの少年だった。その横には、メイド服を着た黒髪の美女にピエロのような姿をした道化師、さらにはマントを着た──骸骨の男の姿もある。

 少年は、侮蔑の笑みを浮かべながら、マンダリン侯爵に言葉を吐き捨てる。


「ふふっ。かつて高名な冒険者だったあんたも、僕たち4人の前ではあっけなかったね。もっともシナリオだとあんたはラティリアーナにやられちゃってろくに登場もしないような存在なんだから、当然といえば当然なんだろうけどさ」

「な、なにを……言っている?」

「あーそっか、あんたはなにも知らないんだっけね。ふふふっ、まぁ良かったじゃない? 運命通りに・・・・・なった・・・んだからさ」


 この少年の言ってることは分からない。だけど、この子はとてつもなく危険・・・・・・・・だ。マンダリン侯爵は本能的にそう察知する。


 マンダリン侯爵邸に突如襲いかかってきたこの四人の集団は、瞬く間に屋敷を火の海に変え、衛兵たちを粉砕していった。そして歴戦の猛者であるマンダリン侯爵ですら、手も足も出ずに倒されていたのだ。


「きみは……モードレッドではないのか? 髪の色が……違う?」


 マンダリン侯爵は、震える手で金髪のメイド服姿の美女に手を伸ばす。だが美女はなんの感情も見えない瞳を向けたまま、問いかけを完全に無視する。


「あはは、ランスロットをあんな出来損ない・・・・・・・・と一緒にして欲しくないね。この子は別格なんだからさ。そんなことよりさっさと要件を済ましちゃっていいかな? ……ねぇマンダリン侯爵、ここにあることはわかってるんだ。どこにあるか教えてくれないかな?」

「……な、なんの話だ?」

「んもう、しらばっくれちゃって。分かってるんだよ、ここに『彼』と『彼をラスボスたらしめる究極の魔法具マギア』があるってことはね」


 こいつは何を言っているのか。マンダリン侯爵は混乱する。

 だが、おそらく″彼″というのは、石化した──″断魔″と呼ばれたあの男のことだろう。もう一方の″究極の魔法具マギア″の方についてはサッパリ不明ではあるが。

 とはいえ、安易に娘の恩人を危険に晒すような真似はできない。マンダリン侯爵は口を割ることなくただ少年を睨みつける。


「シッシッシ。ゲームマスター・・・・・・・、ターゲットを見つけましたワヨ」


 頭に直接響くような甲高い声。道化師の格好をしたラッキーラだ。彼の声に視線を向け、マンダリン侯爵は絶句する。

 なぜなら彼が片手で持ちあげていたのは、石化した″断魔″の像だったからだ。


「なっ!? それは″断魔″様の……」

「ふふっ、あっさり見つかっちゃったね。これはね、君たちが持っていていいものなんかじゃないんだよ」


 ゲシッ。少年はマンダリン侯爵を蹴り飛ばすと、石像に近寄り右手を差し出す。


「……ふぅん。石像として概念が固定化されてるね。だけど大丈夫、僕は『ゲームマスター』だからさ」


 ぶぅぅぅん。

 少年の周りに幾何学的な模様の魔法陣が幾重にも乱立する。彼が軽く何かを念ずると、魔法陣は七色の光を放ちながら一気に石像にぶつかっていく。


 ──次の瞬間、奇跡が起こった。


「ば、ばかな……」


 マンダリン侯爵が思わず声を漏らす。

 なんと、少年が放った魔法陣を受けた石像が、ゆっくりと人間の姿に戻っていったのだ。


「なんという……これまでどんな高名な魔法使いでもどうにもならなかったというのに……」

「ふふっ。概念に関与できるのはゲームマスターの特権だからね。それにしても誰だよ、こんな手の込んだことをしたのは……んん〜? なんか魂が不安定だな、すぐに固定化しなきゃ。ランスロット、彼を支えておいて」


 石化が解けて崩れ落ちようとする″断魔″を素早く支えるランスロットと呼ばれた美女。少年は満足そうに頷くと、懐から取り出した鬼のような顔のお面を″断魔″の顔に取り付ける。


「……よし、上手くいった。ふふふっ、ふはははっ! やった、やったぞ! 僕はついに──【 魔王 】を手に入れたんだ!!」



 深いダメージを受け、薄れゆく意識の中。マンダリン侯爵は少年が最高に楽しそうに笑う声を聞いたのだった。




 ◆◆




「モードレッド、そっち行ったよ!」

「はい、マスター」


 リリスの指示を受けたモードレッドが、目の前にいた5体の魔物──ケイブウルフを仕留める。


「ティア、前方7度の方向に攻撃を!」

「行きます! 《 鮮血の刃嵐 》!」


 続けてティアが放った吸血鬼魔法が、鋭い風の刃嵐となってケイブウルフたちの群れを蹴散らす。

 一方、俺はというと……「ラティ、ぼーっとしてないで! 討ち漏らしをケアして!」はいはい。たまに討ち漏らしたケイブウルフに、こうして【 ヴァイオ・ボム 】を撃ち込んで沈黙させるだけ。んー、楽だ。


「今だっ! レオル、進撃!」


 ──Wwwoooooww!!


 リリスのゴーサインを受けて雄叫びを上げた獅子王レオルが魔物の群れを突破し、中央にいた巨大な狼、フェンリルへと肉薄する。


「武神──【 金剛掌 】」


 黄金色の覇気──レオルが持つSランク魔法具マギアストレンクス 】の力が解き放たれ、空気を揺るがす一撃がフェンリルに向かって放たれる。この魔法具マギアは、使用主の筋力を極限まで高め、″オーラ″という魔法や衝撃を遮断する覇気を使用可能にする超強力な能力を持ってる。

 元々筋力が強いレオルはまさに鬼神のような強さを誇っていて、その強力無比な一撃にはダンジョンの主であったフェンリルでさえ耐えることが出来ず、躱す間も無く胸に巨大な穴を穿たれた。


 たった一撃。レオルの拳を喰らって、ダンジョンの最奥でボスとして君臨していたフェンリルは、光の粒子へと化して行った。



 強い。

 強すぎるぞ、このパーティ。


 レオルが鬼のように強いのは予測が付いてた。だってソロでSランクに到達するような規格外の存在だ、弱いわけがない。

 だけど……まさかダンジョンのボスを一撃で粉砕するほど強いとは思ってなかった。

 他のメンバーだって負けず劣らず強い。俺の出番がないくらいの圧倒的な戦闘力。いや、マジで俺、いらなくね?




 俺たちはガルムヘイムの街を起点として、近隣のダンジョン制覇をしていた。理由は、チームとしての連携を高めて──強くなるためだ。


 きっかけは、『黒死蝶こくしちょう病』の一件が片付いたあとに起こった、衝撃的な出来事にあった。



 それは、Sランク冒険者たちの手によって『黒死蝶こくしちょう病』撲滅作戦が決行されてから一週間ほどが経過した日のことだった。

 この日、俺たちはガルムヘイム湖を元に戻す作業に没頭していた。いよいよこの作業が終われば、ガルムヘイム復旧作業は全て終了する予定になっていた。

 夕方には他の作業をほぼ終えて、最後に恥ずかしいことにラティリアーナ湖と名付けられた湖の水を、ルクセマリア王女が魔法を使って注入していくことで、ついに全ての作業を終えた。その場にいた全員が歓声をあげて、他のSランク冒険者たちや獣人たちとハイタッチを交わして喜びを露わにしている。


 ──リンゴーン……──リンゴーン……。


 突如頭の中に鐘の音のような音が鳴り響いたのは、そのときだった。

 驚いて周りを見渡して、異常な状況にすぐに気付く。

 微動だにしない冒険者や獣人たち。ジャンプしたりハイタッチしたりと様々なポーズのまま固まっていたのだ。

 これは……周りの人たちの動きが、全部止まっている?


 そういえば、かつて似たような経験をしたことがある。あれは──Sランク冒険者ウタルダス・レスターシュミットが時を止める能力【クロノ・ダイヴァー】を使った時。ということは、これは……時が止まっているのか!?


「お姉様!」


 静寂の中に飛び込んできた声は、ティアだった。今日はルクセマリアの手伝いで湖の水を戻す作業をしていたはずだ。


「ティア、あなたは動けますの?」

「ええ、でも凄まじい濃度の魔力がこの場に満ち溢れています。これは……なにかとてつもない魔法によって時が停止しているようです」

「マスター、動いているサブマスターを発見しました」

「ラティ!」

「ラティリアーナ、お主も動けるのか」


 すぐにリリスやモードレッド、レオルも集まってきた。どうやら俺たちパーティメンバーだけが動けるらしい。


 明らかに、なんらかの人為的な手によって起こされた状況。恐らくは俺たちに用がある何者かの仕業。

 であれば、次に起こるのは──。


 ──ぶぅぅん。

 鈍い音ともに、目の前で黄金色と白銀色の輝きが爆発したのはそのときだった。あまりの眩しさに、一瞬目を細める。

 再び目を開けたとき、目の前には──見たこともない二人の美女の姿があった。



 二人は、身震いするほど整った顔立ちをした美しい少女だった。まるで双子のようにとてもよく似ている。

 ただ、二人には決定的な違いがあった。一人が太陽のように輝く黄金色の髪の毛で、もう一人が月の光のように光る銀色の髪だったのだ。


 即座に戦闘体制に入ろうとする。だけど体が動かない。まるで……捕食者を前にした小動物であるかのように。

 なんだ、こいつらは。背筋に、冷たいものが流れ落ちる。


 だけど二人の美女はにこやかに微笑むと、整った唇を優美に開いた。


『おめでとうですわ』

『おめでとうですの』

『あなたは《 シークレット・ミッション 》をクリアしましたわ』

『クリアしましたの』


 ……は?

 なんだ、今の台詞は。

 シークレットミッション? 意味がわからない?


「もしやお主らは……″双子の女神″エル・エーレか?」


 かろうじて体が動くのか、レオルが呻くように呟く。


 ──″双子の女神″エル・エーレ

 その名には聞き覚えがあった。たしかスレイヤード・ブレイブスたち【 聖十字団クルセイド 】の母体団体である神聖教会が崇めるのが、双子の女神エルエーレだったはずだ。

 創世の女神と崇められる存在。それが……目の前に立つ二人の美女が、その女神様だっていうのか?


『はい。私は太陽の女神ノエルですわ』

『私は月の女神エクレアですの』

『私たちはシナリオの管理者にして──』

魔法具マギアの管理を司りますの』


 ……マジか。俺たちはどうやら本当に″神″と対峙しているらしい。どうりで圧倒されて身動きすらできないわけだ。


「……ふん。神とやらがわたくしたちに何の用ですの? 疫病を駆逐したわたくしたちに【 聖女 】にでもしてくださいますの?」


 だけどさすがはラティリアーナ。彼女の口の悪さは女神相手でも変わらないらしい。ある意味尊敬するよ。


『残念ながら【 聖女 】はユニークタイトルなので、ファルカナ・バープ以外にはつけれませんわ』

『そのかわり、あなたたち二人には別のユニークタイトルをつけてますの』


 不意に脳裏に、リリスが見せてくれるのと同じような情報が浮かび上がり、俺とリリスのステータス情報が映し出される。俺のところには【 伝道者エヴァンジェリスト) 】、リリスのところには【 救世主 】と表示されていた。

 どうやらこれが、女神によって与えられたユニークタイトルというものらしい。


『ユニークタイトルが多ければ多いほど、強さは増しますわ』

『そして、既にあなたたちは、通常シナリオのクリアに至るに十分なタイトルを手に入れてますの』

「ちょ、ちょっと待って! シークレットミッションにユニークタイトル……。そ、それは……あのゲーム『ブレイヴ・アンド・イノセンス』 と同じじゃないか! しかも、チュートリアルで出現する創世の双子の女神たちまでが本当に存在しているなんて……」


 それまで沈黙を守っていたリリスが、絞り出すようにして声を出す。動揺を隠せないまま、立て続けに女神たちに問いかける。


「誰なんだ?キミたちを創ったのは誰なんだ? 誰の指示で、キミたちはシナリオを進めている?」

『残念ながら、イレギュラーな質問にはお答えできませんわ』

『私たちは今回、あなた方にある連絡・・・・をしに来ただけですの』 

「連……絡?」

『ええ。今回のシークレットミッションクリアで、あなたがたは最終シナリオ《 英霊の宴 》への参加資格を満たしましたわ』

『参加資格者が揃い次第、強制イベント《 運命の戦い 》が発動しますの。そしてそれはそう遠い未来ではありませんの。ですのでそれまでの間、皆様には個々のレベルアップに努めてほしいですの』


 ……なんだ?

 この二人は今、もしかしてとんでもないことを口にしてないか?


「……ほほぅ、オレたちが《 英霊の宴 》に招待されるのか。まさか夢にまで見た最後の舞台が、このような形で目の前に現れるとはな」


 レオルが皮肉めいた口調で呟く言葉に、俺はようやく双子の女神が口にした台詞を咀嚼する。どうやら俺たちは、『あらゆる願いを叶える』と言われる《 英霊の宴 》に招待されたらしい。

 本来であればそれは、信じられないほど光栄で素晴らしいこと。


 だけど……なんでリリスの顔は歪んでいる? なんであんなにも苦しそうにしてるんだ?

 何かを口にしようとしているのに、唇が震えるだけで言葉が出てこない。あんなリリス……初めてみたぞ。


『伝言は以上です。それでは時が来たらお知らせしますわ』

『それでは、またお会いする日まで。御機嫌ようですの』

「──待てっ!」


 双子の女神が優美に頭を下げ、そのまま立ち去ろうとしたとき、突如鋭い声が飛び込んできた。


 全ての時が静止したこの空間で、聞こえてきた男の声。

 神が制御する空間に、許可なく飛び込んできた存在。


 そんなことができるヤツがいるわけない。だけど──いた。いたのだ。

 その男の名は《 愚者の鼓笛隊フールズ・オーケストラ 》のリーダー、ウタルダス・レスターシュミット。


 神をも恐れぬ所業を成し遂げたウタルダスは肩で息をしながら、双子の女神を鋭い目つきで睨みつけながら言葉を投げかける。


「やっぱりお前たちか……ノエルにエクレア。それにしても今回は例の不思議な空間・・・・・・・・じゃないんだな」

『ウタルダス・レスターシュミット、あなたは女神魔法《 ディメンション・ストップ 》によって動けないはずですわ』

『神の魔法を前にして、なぜ動けるんですの?』

「そんなの決まってるだろう。あんたたちにまた会う・・・・ために・・・、あらゆる対策と手段を手に入れたからだよ」


 なぜ女神が時を止めた空間でウタルダスが動けるのか。なんとなくだけど、彼が前に使った《 クロノ・ダイヴァー 》という魔法具マギアに起因している気がする。

 それよりも気になるのは、どうやら彼と女神たちの間に何らかの・・・・因縁がある・・・・・らしいことだ。


「ウタルダス……」

「悪いなラティリアーナ、邪魔して。でもあんま時間が無いんだ。おい、ノエル! エクレア! お前たちはいったい何が目的なんだっ!? ……うっ!?」

『システムコマンド──《 アクティベーション・ロック 》』


 大声を上げるウタルダスの動きが急に止まる。強烈な魔力の波動を感じることから、おそらく女神たちが彼に何かをしたんだろう。


『知りたいことがあるのであれば、《 英霊の宴 》にくるのですわ。ウタルダス・レスターシュミット』

『その前に《 運命の戦い 》をクリアするんですの。そのとき私たちは──再びあなたたちの前に現れますの』

「ま、待つん……」


 ぶぅぅぅん。


 発生した時と同じように、急に時が動き出す。

 そのときにはもう──双子の女神ノエルとエクレアの姿は完全に消え去っていたんだ。




 ◆




 その後、ウタルダスは俺たちと言葉を交わすことなく、パーティメンバーを引き連れてガルムヘイムから立ち去って行った。

 彼らが女神たちとどんな因縁があるのかは分からない。だけど、ウタルダスたちも何か譲れない理由で《 英霊の宴 》を目指しているようだった。


 そして、それは俺たちも同じだった。

 あの日以来、リリスの態度が変わった。強くなることに拘り始めたのだ。



 リリスが特に重視したのは、俺たち5人の連携についてだった。


「いい? この5人で戦う場合は、レオルとモードレッドが前衛になる。中衛がラティとボク。そして後衛がティアだ。だけどボクは実質戦闘力を持たないから、全体のサポートと指揮命令に集中するね」


 レオルの参加により、俺は中衛に専念することになった。たしかに《 紫艶の魔道書バイオレット・グリモア 》の能力は強力で、相当な戦闘力を持つんだけど、とてつもなく燃費が悪いのだ。持って一分くらい。これじゃあいくら強くても使い物にならない。

 だから常時高い戦闘能力を持つレオルとモードレッドが前衛に立ち、俺は中距離から《 ヴァイオ・ボム 》でサポートするスタイルを取ることとなった。


 この戦術は、かなり功を奏した。

 実際、ガルムヘイムの近隣にあった未知のダンジョンに挑んでみたところ──先ほどの結果のとおり。大して強くないモンスターたちが相手だったとはいえ、僅か一週間で完全踏破してしまったのだ。


「……大したことなかったね。ドロップアイテムもあんまり良いものはなかったしさ」


 ぶつぶつと文句を言いながら、それでも魔法具マギアを拾い集めるリリス。確かに基本の戦術が出来上がっている俺たちに、たとえAランクとはいえ弓や兜は確かに要らないよな。とはいえ、この指輪タイプの魔法具マギアなんて役に立ちそうなんだけどなぁ。


「お姉様、それは女性限定装備のDランク使い捨て魔法具マギア【 バックアタック 】ですね。そんなものに興味が?」

「ええ。どうやって敵の背後にいくのかしらと思って」

「なんでも敵の背後に瞬間移動するらしいですよ。ただ、1回しか使えないのと、敵の3メートル以内に近接している必要があるという使い勝手の悪さもあって、あまり人気はないみたいですが……」


 まぁDランクだと値段も高いし、1回しか使えないんじゃなかなか使い勝手が悪そうだよな。とはいえDランクなら装備もできるし、せっかくだからこれはもらっちゃおうっと。


 ──リンゴーン……。──リンゴーン……。


 聞き覚えのある″鐘の音″が聴こえてきたのは、そんなときだった。


 それは──俺たちを《 英霊の宴 》へと誘う、運命の戦いの開始を告げる音だった。


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