猫カフェ
猫カフェ
家から徒歩10分くらいの場所に猫カフェなるものがオープンしたので、猫好きな雪音を連れて行ってみた。
「はわわ〜」
赤ちゃん猫がじゃれあっている姿を見て雪音は涎を垂らしそうな勢いで見つめている。そんな顔で見たら猫の方が驚いて逃げるんじゃないのか?
「こ、この猫ちゃんってお触りしてもいいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「わ、わわ……可愛い」
しかし雪音の邪なオーラを猫は敏感に感じ取ったらしい。突然違う猫にシャー! と威嚇された。慌てて店員が近寄ってくるが、俺には警戒しない猫が何故か雪音には触らせてくれない。
「そ、そんなあ……雪も猫ちゃんなでなでしたかったのに」
「うーん……猫って色々な気配を敏感に感じ取るからなあ。たまたま機嫌が悪かったんじゃないのか?」
「うう……肉球触ろうとしたからかなあ」
「はい?」
雪音は突然とんでもないことを言う。動物にとって肉球は大切な部分で、よほど信頼した人間でないとそりゃあ触れないし、嫌がられるに決まっている。
普通、初対面の猫には頭やボディの毛を優しくなでなでが基本だろう。なのに何故いきなり肉球触ろうとする変人プレイに行き着いたのか。
「猫ちゃんうちで飼えないかなあ」
「あー、母さんが動物アレルギーだからダメだよ。また今度行ってみような」
俺の言葉に雪音がぴたりと歩くのをやめた。嫌な予感がする。
「ひろちゃん、また雪と猫カフェ行ってくれるの!?」
「あ、ああ……それくらい別に」
確かに大学が忙しくなるとあまり雪音とお出かけするのは難しいかも知れないけど、そんなに長居する場所でもないし、俺も猫には癒される。
雪音は思い切り勘違いしており、何回か猫カフェに行って猫と仲良くなれたら肉球を触れると思っているらしい。
単純だが、多分それは何十回通っても無理だろう……逆に警戒されて他の猫に威嚇されないことを祈るしかない。




