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妹が可愛いすぎて困ってます。  作者: 蒼龍 葵
弘樹高校2年生
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文化祭その3(弘樹編)


俺達は雪も含めた女子チームの企みを知ってしまったので、SNSのメイン発信源になっている雪を止める作戦に出た。

多分、麻衣ちゃんは目立つのが嫌いなタイプなので、雪さえ止めてしまえば必然的に1人で告知にはいかないだろう。


今日も夕飯の時間を計算して何処と無くソワソワしている雪。もう企みを知っている俺は雪が部屋に逃げ込む前に捕まえる事にした。


「おい雪、お前俺に隠し事してるだろ」


「えっ、べべべべ別に何もしてないよ! ひろちゃんにはしてない!」


「……いくらで買収された? 金か? それとも……」


「違うもん! お金なんて貰ってない!」


雪がお小遣いではなく一体何でメリットのない女子チームに協力をしているのか。

女子チームの創設したSNSで有名にでもなってまさかもう一度ミスコンにチャレンジしようとでもしているのか?


「お金じゃなくて何で買収されたんだ?」


「う、うぅ……」


雪の目が明らかに泳いでいる。もう証拠はSNSに上がっているんだ、今更雪に弁明の余地はない。

ただ、追求した所で、結局雪が何目的で俺達よりも女子チームの応援に回ったのかそれだけは確かめたかった。

なのでここで必殺──磯崎大先生の伝授した『壁ドン』だ。


ところが追求していた場所が悪く、俺は手を滑らせてしまい、雪を床に押し倒す形になってしまった。これではきっと萌えとは違う。


「ひゃあああっ、ひろちゃんが近いっ……!」


なんかよく分からないけど興奮している雪。結果オーライなのか?


「……それで、お金じゃなくて何で買収されたんだ? 犯人は相澤さんだろう?」


「はぅい。すびまぜん。ひろちゃんの写真10枚で手を打ちました」


頬を赤らめながらとんでもない事を言った雪に俺は慌てて雪の上から身を引いた。

写真?! 一体いつ撮られたものだろう。そして相澤さんは写真に詳しくはないはずなので誰が何処で……?

思い当たる節と言えば……佐野は男子チームなので関係ない。女子チームにいるカメラマンと言えば須藤さんだろうか? 彼女は普段気配もないくらい大人しいので俺の変な写真を撮っているのかなんて分からない。

俺は惚けている雪をそのままに、申し訳ないと思いつつ彼女の机にある謎の封筒に手を入れた。


「一体いつの間にこんな写真……」


俺は須藤さんの盗撮力に恐怖を感じた。

雪が買収された10枚の写真は俺と田畑が教室で笑ってふざけてるものと、体育の授業の後にあまりにも暑くて体操着から着替えているもの。

他は普通に飲んだり食べたりしている日常のありきたりな写真だ。

たかがこんなもので買収された雪はどれだけ俺の学校生活が知りたいのか……。


「ひ、ひろちゃんにのしかかられた。まだ心臓がドキドキしてる……」


「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど……」


すぐに雪から離れたはずだったが、彼女の中ではかなりぶっ飛んだ妄想が爆発していた。


「はぁあ……これがマリマリっちの気持ちなんだ。好きな人にドンされる。ひゃあ〜やっぱ恥ずかしい」


マリっちとは多分、雪の学校で最近流行っている少女漫画の主人公だろう。

確か最近、女子の間でも人気があってそれの真似をしたがる人が居るとか何とか。俺はテレビもネットも全然疎いからそういう流行りみたいなものがちっとも分からないけど。


こんなつもりじゃなかった。これは磯崎大先生に伝授された壁ドンではない。

ただ妹を無駄に押し倒して、何となく囁いちゃったかなりヤバい奴になってしまった。

しかも雪はいつものように勝手に勘違いして興奮しているし、このままだと現場の収集がつかない。


「あの……雪音さん、今のは不可抗力ってやつで……」


「ひろちゃんが雪のこと押し倒した……これは明日麻衣ちゃんに報告しなきゃ。マリアちゃんの牽制にもなるから、ジェシカちゃんにも会えたらいいなぁ」


「あの……雪……?」


「もうっうるさいなぁ、ひろちゃん! 雪、今の事は絶対に忘れないからね!」


これはかなりマズイ、ヤバい、雪を怒らせた。

もしかしなくても、雨宮家初の大事件になるだろうか。


そりゃそうだ。妹を押し倒しましたなんて騒がれたら警察も絡むような大事件にしか聞こえない。

雪を口止めするのは絶対に無理だから、先に母さんに間違えて雪を倒しちゃったと報告するべきなのか。


俺があれこれ悩んでいる間に雪はヘラヘラ笑いながら先程の余韻に浸っているようだった。

これは……まさかと思うが、俺のした事を怒っていないのか?


「あれ……雪は怒ってるわけじゃないのか?」


「え? 何で雪が怒るの? ひろちゃん、次は何ドンしてくれるの? ねぇ、ねぇ」


え、しかもまさかのドン待ち?

つか俺だって知らない事を今日何とか磯崎にからかわれながら教わったんだ。いざ実践してみたけど、結局失敗したんだし、そんなバリエーションがある訳でもない。

もしかして、ドンって、壁ドンだけじゃないのか……!?

ただ、このよく分からないドン待ちに、雪は目をいつも以上に輝かせており、これを断ったらまた相澤さん達との約束の方に行ってしまいそうだ。


俺は女子チームの雪ちゃん写真SNSを止めるべく、それから文化祭が終わるまでの3日間、雪と変な壁ドンゲームに付き合わされる事になる。


せっかくの高校生活大イベントである文化祭が本当に本当に嫌いになりそうだ。

翌日、この事件を磯崎大先生に報告した所大爆笑されて終わってしまった。

誰か、本気で俺と変わってくれ……。

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