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彼女と別れたら周りの女子が慰めて  作者: 魔桜


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第33話 仲良し女子二人組に置いてけぼりにされる

 ストーカーの件があった週明け。

 その朝。

 俺は眠かった。


「ふわあああ」

「大きな欠伸ですね、兄さん」

「ちょっと、ね」


 最近、SNSの検索をしたり、とか、警察の事情聴取だったりとか、色々あったからな。


 ストーカーの件では父親にコッテリと絞られた。

 包丁を取り出して、万が一怪我をしたらどうなっていた。

 どうしてもっと相談しなかったとか色々と。


 だが、最終的にはみんな怪我がなくて良かった。


 ストーカーの件は解決して、少し気持ちが緩んだのかも知れない。

 そのせいで今日は朝から眠い。


「ライカさんは?」


 朝の登校時間。

 ツユと一緒に学校へ行く準備ができている。


「姉さんは先に生徒会の仕事があるって学校行っちゃいました。一緒に登校しようって言われたんですけど、姉さんには姉さんのやらなきゃいけないことがありますから」

「生徒会か」


 ツユが不登校になってから、今日は初めての登校日。

 ライカさんも本当はツユにずっとついていたかったはずだ。

 ならその代わりに、俺がツユの傍にいてやらないとな。


「ツユはどうするんだ?」

「どうするって?」

「配信とか、そういうのだよ」

「VTuber活動ですか……」


 あれからちょくちょく『雨傘レイン』のVTuberのアカウントやSNSを覗くと、復帰の声が叫ばれている。


 色んな人に望まれているのだから復帰するのはどうだ?


 と、そんな軽口は叩けないけど、実際、これからどうなるかは気になる。

 学校に登校できるようになっただけ、かなり精神的には落ち着いたのだろうけど、すぐに活動再開とはいえないだろうが。


「実は事務所からのお誘いが来ているんですよね」

「え? 事務所って? VTuberの?」

「はい。それを受けるかどうか迷っているんです。親の反対もあるだろうし、それに配信者がどれだけ危ないかは身をもって味わったので」

「スカウトって本当にあるんだな」


 VTuberが事務所に所属する為には、オーディション、面接といったものの他に、事務所側からコンタクトを取るって話はどこかで聴いたことはあった。

 でも、まさか身内がスカウトされるとは思わなかった。


「ストーカーの件をみんなに報告したら、それがプチバズって、今まで出していた配信が再生されるようになって、それでスカウトの目に留まったみたいです」

「なるほどな……」


 怪我の功名というか、なんというか。

 ストーカーのお陰で、企業勢になるかも知れないのか。

 世の中どうなるか分からないな。


「まだVTuberを続けるかどうかすら迷っているんですけど、どうすればいいでしょうか?」

「話だけでも聴いてみるのはどうかな?」

「え?」

「話を聴いてみて条件を聴いてから決めてもいいだろ。こんなこと滅多にないだろうし、条件が酷かったら断ってもいい。それに、企業に入ればストーカーのことだってもっとスマートに対処できたかもしれないし」

「ああ、それは企業の人にも言われました。ウチだったら、もっと所属タレントを守ることができるって」

「うん。そうしたら、もっと安心してツユがVTuberをできるかも知れないしな」


 ツユがVTuberを続けるかどうかなんて俺には決められない。

 本人が決めるべきだ。


 ただ、辞めることはいつだってできる。

 だから、続けるかどうかは考えるべきだ。


「分かりました。そうですよね。もっと、考えてみます」

「そうした方がいいよ。どんな道に進もうとも俺は応援するから」


 ツユのやることを応援する為にも、彼女を守らないとな。


「今日は一緒に登校しようか」

「いいですよ、別に」

「いやいや。もしかして、俺と登校することが恥ずかしいとか思っている?」

「そんなんじゃないですよ! ただ、先約があるんです」

「え?」


 家の玄関を開ける。

 そこに立っていたのは、


「遅いわよ、妹風情」


 アイだった。

 制服を着て、鞄を持って髪の手入れをバッチリしている。

 朝の登校準備はバッチリのようだ。


「え? アイ? なんで家の前に!?」


 俺の疑問に答えたのは、アイではなくツユだった。


「実は車で登下校を送ってもらうことになったんです」

「そうそう。私と妹風情はか弱い女の子だから車で送迎してもらった方が安全でしょ?」

「か弱いね……」

「どういう意味よ、それは」


 あっ、やばい。

 心の声が漏れてしまった。


「いや、ツユはともかく、アイは逞しいと言うか、なんというか」

「どういう意味よ、それは!!」


 カツン、と靴を鳴らしてツユが前へ出る。


「行きますよ、アイさん」

「フン」


 二人とも並んで送迎用の車に乗り込もうとしている。

 その動きがあまりにもシンクロしていたので、思わず思ってしまった。


「……なんか、二人とも仲良くなってる?」

「なってません!!」

「なってないわ!!」


 随分と息が合っていたので、思わず俺は笑ってしまった。

 それを見咎めた二人は、俺を置いてさっさと車に乗ってしまった。


「……やっぱり仲良しだろ」



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