覚悟
ー港町フリート沖合:DDH‐182いせ甲板ー
「皆さん、後は頼みます!!」
「全力を尽くします!!」
外交官達とその護衛が乗り込んだMCH-101が声をも掻き消すほどの爆音を立てる中ーー
艦長の梅崎一等海佐は、未だ混乱の続く港町へと目を向けた。
(・・・・・・)
ーー彼らは今からあの中に行くのだ・・・
そう思うと同時に、彼は自分の責任の重大さを再認識し、足早に艦橋へと急いだ。
「対空・対潜警戒を厳となせ! 我々には無事に外交官を日本へ帰す責務がある!」
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ー港町フリート:領主の館ー
領主フランシス・ドレークは、観音開きの窓を通して、呆然と謎の艦隊を見つめていた。
(”帝国”か・・・?)
否。 例え列強国であろうとも、あんな馬鹿げた大きさの船は所有していない。
(一体何処の国だ?)
例え掲揚されている旗を見ようとも、分かる訳が無い。
それは領主が無知なのでは無くーー
(そもそも、だ。何故帆が無いのに進んでいる?)
「ともかく状況をーーん?」
規則性のある”何か”の音が聞こえてくる。
ーー全くの”未知との遭遇”であったからだ。
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ーMCH-101機内:港町フリート・広場上空ー
陸上自衛隊水陸機動団直轄、第1水陸機動連隊、第1中隊所属のレンジャー徽章持ち2等陸曹ーー
誰もが精鋭と認める彼は、9㎜拳銃が収まっているホルスターを強く握っていた。
(・・・・・・)
装填数9発の自動式拳銃のみが自分達の命を預ける装備であると考えると、些か心許ない。
もし、もしーー
(・・・・・・。)
そんな隊員達の顔色を見て悟ったのだろうか、
顔を緊張で青くさせた1人の外交官がカラ元気を張る。
「何。拳銃を使うような事態にはさせませんよ。任せてください。ハハハハ・・・。」
「・・・ありがとうございます。」
「今から開けた場所に着陸します。準備をーー」
パイロット2名、外交官3名、水陸機動団1個分隊、計15名。
今この時、彼らは異世界の大地に降り立った。




