Counter attack
ー ゲンブ攻勢 ー
作戦目標:敵最上位種の排除、残党の殲滅、失地の回復、戦線の押し上げ
参加兵力:約3万
ー 戦力詳細 ー
主戦力:煌帝国陸軍:5個混成軍団 及び 勇者2名
(1個混成軍=重・軽装歩兵5300、魔道兵600、軽騎兵100)
陸上自衛隊:1個普通科中隊
・本部班
・4個小銃小隊 (89式小銃 他)
・迫撃砲小隊 (81㎜迫撃砲 L16)
・対戦車小隊 (84mm無反動砲、110㎜個人携帯対戦車弾)
・除染装置一式
有毒ガス発生地域の為、全隊員は18式個人用防護装備を必ず着用すること。
我々は煌陸軍の一部の部隊と共に行動する。また、可能であれば、勇者と接触すること。
積極的な戦闘は避け、煌軍及び魔物の情報収集に努めること。指定の情報の流出を固く禁ずる。 以上
ー ゲンブ樹海入口:30人隊付き白魔導士:リンファ ー
あの戦いから――砦の指揮官が大規模攻勢を採ると即断してから2日後。
私は何処か夢見心地なまま、神官服を着て立っていた。
僅かな風が地を駆け、濃緑の葉に霜が降りている肌寒い早朝。
眩しい程の恵みの光は、何もかも、葉先から落ちる水滴すら平等に照らしている。
まるで、神が私たちを祝福し、加護を与えるかのように。
「――次、ハク隊長の訓示である! 総員、傾注ッ!」
野太く精悍な声にビクッと驚き、夢想から現実に引き戻される。
気付けば、隊の集会は最後の方に差し掛かっていた。
ぼうっとしている間に、かなりの時間が過ぎていたのだ。
(いけない私ったら、初陣なんだし、ちゃんとしないと。)
私は周囲に少し遅れて、木を組んで作られた即席の高台に首を向けた。
ハクと呼ばれた背の高い騎士が台に上がり、周囲を見渡す。
本来ならば、この位には歴戦の老軍師が就くのだろう。
しかし、純白の気品あふれる軽鎧に身を包んだ男は、余りにも若い。
皇族か、それに近しい家系の者なのは火を見るよりも明らかであった。
そして、期待と不安が入り混る視線を受け、純白の騎士は第一声を発した。
「我が忠勇なる帝国兵諸君。私が、この300人隊の指揮官、ハク・シュエンである。――まず、訓示の前に、私は諸君らの疑問に答えなければなるまい。どうして私の様な皇族の若造が指揮官などしているのか、疑問に思っていることだろう。此処に私が立っている理由ーーそれは、この”300人の別動隊”は私が一昨日の作戦会議にて立案し、トウミ殿を初めとした名だたる軍師に満場一致で可決され、自ら指揮を執ることを望んだ部隊だからである。薄々感づいている者もいるだろうーーこの部隊の目的は”戦闘”ではない。そのようなことは、トウミ殿率いる3万の本隊に任せておけばよい。我々は、”同盟国の部隊の先導”と”連携の確認”を――」
彼は、透き通るような、しかし威厳のある声で訓示を始める。
どうやら、彼の地位を支えている土台は、血縁だけでは無いようだった。
将来に完成する器の大きさの片鱗を覗かせる彼は、更に言葉を続けていく。
「――であるからして、勇猛なる同盟国兵士であっても、かの樹海のような見知らぬ地形や魔物、環境の変化に戸惑うことは必至であり、我々はそれを補助しなければならない。そして何より、彼らと我々とでは”戦い方”が違いすぎるのである。・・・一昨日の戦いを目の当たりにした者は、私の言う事を理解できると思う。もし、何の連携も協議も無く、各々が戦いを始めたならば、”決して起こってはならない事”が起きるかもしれんのだ。いや、必ず起きる。我々は未だ、彼らを良く知らないーー故に、知らねばならんのだ。我らは、重責と栄光ある任務を与えられているのである。作戦の成功は煌を平和に導く第一歩となろう。各員の健闘に期待する!」
若き軍師の訓示が終わり、私たちはそれぞれ、進軍の準備に取り掛かった。
30人隊付き白魔導士ー新入りは大抵この肩書だーの私がやるべきことは、持続性の解毒魔法である”ベゾアール”を仲間に掛けていくことだ。瘴気が持続的に発生する暗黒領域で行動する為には、この魔法が必要不可欠なのだ。
私は魔力増幅効果のある杖を手に、長い詠唱を始める。
複雑怪奇な文言を唱え終わると、仲間の体の周りに薄く青い光が纏わりつき、やがて消えていった。魔法学校時代に幾度も見てきた、付与に成功した証だ。
早めに準備も終わり、何をしようかと歩いて考えていた時、私はふと思いついた。こちらと距離を置いて集まっている緑色の兵士達について思案を巡らせていたのだ。
彼らを観察した様子からして恐らく、未だベゾアールを掛けていないのだろう。
そして掛ける様子もない。瘴気を知らないのか、ならば。
(ふふん。私が掛ければいいじゃない!)
思い立って行動するが吉。私は彼らに近づき、話しかける。
解毒魔法を掛ける旨を伝えると、直ぐに隊長らしい人達が現れた。
「それは、なんとまあ、便利なものですなぁ。ーー予定にはありませんが中隊長、念のために。ええ、はい。――では、リンファさん、是非ともよろしくお願いします。」
「あっ、小早川士長、カメラ! あれだ、ビデオカメラ持ってきて!」
「了解しましたァ!」
いつの間にやら大事?になっているようだが、そんなに解毒魔法が珍しいのだろうか。さっき聞こえたカメラという単語は何だろうか。そんな事を考えながら詠唱を済ませると、いつもの魔法を発動した。
「ベゾアールッ!」
「おおおおおぉ・・・・・・お?」
「これで成功・・・えっ?」
「・・・えっ?」
光が無い。嘘。嘘よ。
発動しない――なんで?
ってあれ、この人たち。じゃあ私の魔法は――
「ごめんなさい。多分、ですけど。対象者に魔力が無いと駄目なんだと思います。」
「いや、我々としても、このことを早めに知れて良かった。ありがとう。」
まさか、こんな形で失敗するなんて・・・少々迂闊だった。
でも、彼らはどうやって瘴気を切り抜けるのだろうか。
私は、そのことがどうしても気になって仕方がなかった。
「――何、心配無用だ。我々にはこれがある。」
そう言って彼らが手にしたのは、複雑で精巧な、しかし、どこか非人間的な不気味さを漂わせる、面のような物だった。
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