表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神への抵抗ー日本召喚ー  作者: とっしー
第三章:本格的介入
42/48

A wholesale slaughter

ー ホウライ大陸東部戦線:最上位種族:ゴブリンロード ー


 深き樹海。不気味な蟲が蠢く未踏の地。そして、魔物の闊歩する暗黒領域。

常人が吸い込めば死に至る瘴気が漂う中、粗悪な作りの松明と篝火が無数の小さな影を照らす。その数、およそ数万――いや、十万は軽く超えるか。ある影は未だ蟲の体液が糸を引く棍棒を手にし、ある影は風船の如く膨れ上がった筋肉に襤褸布を纏わせている。

炎にくべられた枯れ枝が弾け、舞い上がった火の粉は凶悪な容貌を鮮明に浮かび上がらせた。珍しくも魔物の集団は、蟲を潰して嗤うのではなく、無秩序に騒ぐのでもなく、ただ一点を見つめている。

それら十数万の視線を一手に集める主は、威厳ある口調で、彼らの言葉を発した。


GOBUAGU(時は来た) GYBAA(奪え) GYBAU(犯せ) GYUUA(殺せ)! GUUUUUUUAAA(全軍突撃)AA! 」


その号令に共鳴するかのように魔物達が雄叫びを上げ、冷たく湿った大気を揺るがす。獣の喜びに満ち溢れた集団は、ニンゲン共が溢れる西方へと進軍を始めた。

灯りを消し、音を殺し、欲望を煮詰めた黄色い目をぎらつかせながら。



 未だ訪れていない勝利の余韻に浸りながら、かの主は空を見上げた。

この時を「小鬼の王」は待っていたのだ。我々を照らす忌々しい月が姿を消す、この時を。愚かなニンゲン共は眠りこけ、闇は我らを覆う。夜目の利かぬ奴らは成すすべなく十数万の軍勢に飲み込まれる。

もしニンゲン共に「勇者」とやらが混じっていても問題は無い。戦いの中で鍛え抜かれ上位種に進化した数千の魔物は、奴らのはらわたを引きずり出し一匹残らず殺し尽くすだろう。

彼は鮮明な妄想の中で残酷な勝利を思い描く。結果は変わり得ない。

そして、己の玉座で軍団の凱旋を迎えんと、彼は傅く配下と共に東へ歩き始める。


まさにその時、であった。

あるはずのない光が大地を照らし、彼らの足元に影を作った。

彼は驚愕と共に振り返る。

宵闇の空には、忌々しい光を放つものが、ゆっくりと落ちてきていた。

彼は、足元に転がっている死にかけの蟲が、ひどく嗤った気がした。




ー ゲンブ砦城壁:煌派遣特科戦闘団:前進射弾観測部隊「ゴライアス」 ー


「敵襲! 敵襲ー-ッ!!」

「鐘鳴らせェェ!!」


ーーカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン!!


音と共に顕現する光に照らされた大軍を視認した帝国兵は、櫓の上にある、襲撃を知らせる警報ーーそれも最上級のものーーを打ち鳴らした。十秒も経たない内に、仮眠を取っていた完全武装の兵が隊舎から次々と飛び出してくる。彼らは虚空に浮かぶ幾つもの光の球に瞠目するも、それらが何ら己に害を及ぼさないことに気づき、真昼と変わらない明るさが自軍に与えるアドバンテージを察知すると、自らの持ち場に急いで駆けだした。

そして、城壁へと伸びる階段を駆け上がった新兵達は、前線における最上級警報とは何なのかを理解するに至った。


「――終わりだ。」


魔物。全てが敵。殺すべき敵。地面が3分、敵が7分。

黄土色が広がるはずの大地には、グロテスクな色をした魔物しかいない。

この砦の兵力を知る兵士の視界は、絶望に埋め尽くされた。



「――ら――イアス、照――発射完了、FH――砲、観測――要求、座標525-639 着発1 了解か 送れ」

「ゴラ――ス、こちら01大隊、全て了解、復唱、FH榴――観――撃 525-6―― 着発1 砲撃開始」



たった数十名の、斑緑の鎧を纏った援軍が視界の端に映る。

煌が条約を結んだとされる国の軍隊だ。

奇怪な箱から微かに聞こえるのは後方にいるという本隊の者の声だろうか。

不明な単語もあるが、恐らくは救援を要請しているのだろう。

――もう手遅れだが、国の為にも家族の為にも、座して死を待つ訳にはいかぬ。

彼は腰に下げた矢筒から矢を抜き、遠方から迫りくる大軍に向けて獲物を構えた。

渾身の力を込めて弓を引き絞り、狙いを定め――

巨大な爆炎が、上がった。


「・・・はっ?」


「初弾命中、初弾命中、範囲指定、524-638より526-640 全FH榴弾砲、効力射撃要求 エアバースト20 送れ」

「524ー638より526-640四方、全FH効力射、エアバースト20了解」


――ああ。


「ゴライアスより02大隊、持続弾幕射撃要求、520-634より530ー634 着発40 持続砲撃 送れ」 

「こちら02大隊全て了解、520-634から530-634、後退阻止、持続砲撃、着発40」


彼らなのか。あの攻撃は、いや、違う。

詠唱ではない、魔法ではない。そもそも彼らは攻撃していない。

ただ、後方の仲間と連絡を取っているだけ。

――そう、「奴等を攻撃せよ」という連絡を。

あのふざけた威力の爆炎は後方から投射された何らかの攻撃なのだ。

その驚くべき事実を帝国兵が理解した時、先ほども聞いた、口笛のような形容しがたい音が耳に入る。

それも、幾重にも重なって。


「またかっ!?」


最早何度目かも分からぬ驚愕。

あの威力の爆轟をこの間隔で投射する――何という反則か!

戦場にいる者すべての鼓膜を揺さぶる轟音。

帝国兵の目先に一斉に出現したのは無数の空中爆発。

そして地上に作られるのは阿鼻叫喚の地獄絵図!


「GYBAGYBA! GYBAGYBA!」

「GYAAAAAAAAAAー--!?!?」

「GJU BUUUAG!」


我々を殺すはずだった魔物が、死に絶える。

腸が腹から飛び出し、頭が欠け、四肢がもげ、のたうち回る。

既に先頭の軍団は壊滅していた。


「「――ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!」」


暗雲から希望の光が差し込み、砦の各地で歓声が上がる。彼も死を回避できたことに高揚感を感じながら――しかし、心の何処かに違和感を覚えていた。


(何だ、この感情は。悔しさ――違う。畏怖――少し違う。)


彼は、気付いた。


「こちらゴライアス、03大隊応答せよ、送れ」

「こちら03大隊 送れ」

「効力射撃要求、座標520-634より530-644四方、M26改(クラスター弾)一斉射、了解か、送れ」

「520-634から530ー644四方、面制圧射撃一斉射、全て了解、全車両(MLRS)攻撃開始」



これは、この嫌な感情は。

――恐怖だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いやぁ己らの欲望に従うようなクズゴブリンが、科学文明の利器によって機械的に処理される姿…いいですね。もっとやっちゃいましょう!!! [気になる点] 勇者の存在って日本側に知らされてる?知ら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ