未知との遭遇 Ⅰ
ー”異”世界上空40000フィートー
ーーそこには、この世界にあるまじき2つの物体があった。
微動たりともしない灰色の体躯。
側面と翼には赤い丸が描かれーー
雷鳴の如き轟音を響かせ、音速に近しい速度で空を泳いでいた。
その名は マクドネル・ダグラスF-15J改”イーグル”。
空の王者の名を冠する筈の戦闘機は、どこか弱々しく、不安そうに見えた。
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「・・・・・・」
重苦しい沈黙。
体に掛かるGにはとうの昔に慣れた筈なのに、スカイ2--芥川2等空佐は今までに無い位の重圧を感じていた。
(ああ、そうか。体力が落ちたんじゃない・・・緊張しているんだ。)
「こちらスカイ2。 どうだ? 何か見つけたか?」
「いや、小島一つすらない。」
「既にここは朝鮮半島の上空の筈だ・・・。
やはり直に見てみると・・・これが現実なのだと理解してしまうな。」
「スカイ2、任務中に私語は慎め・・・と言いたい所だが、同感だ。」
「転移」後、諸外国との連絡が例外なく途絶したことを受け、日本政府は直ちに海上・航空自衛隊に周辺海域の調査・捜索を要請。国会に現れた自称「神」の映像のこともあり、日本中は大混乱に陥っていた。
基地に待機していたパイロット達は要請を受け、半信半疑ながらも調査を開始しーー
「日本は異世界に”神”によって召喚された・・・か。」
「有り得んがそういうことだ。」
「どこのSF小説だと最初はおもったんだがなあ。」
「ああ、俺も流石にそう思ったさ。
遂に政府の頭がオカシクなってしまったってな。」
「ハハハ・・・。これが夢ならどんなに良いことか。」
「だが現実だ。ほっぺを抓ってみろ。」
「やれやれだ・・・・・・おい、陸だ。陸地を発見した!」
「あー、AWACS、こちらスカイ1。陸地を発見した。
・・・スクランブルは出てこない。指示を請う。」
『こちらAWACS。位置情報は記録した。スクランブルが遅れているだけかも知れない。
5分間現上空を旋回し、迎撃機が現れなかった場合、陸地への侵入を許可する。
但し、侵入したことを全周波で呼びかけろ。いいな?』
「スカイ1、了解。」
「スカイ2、コピー」
ーーだが、幾ら待てども一向にスクランブル機は現れない。
「・・・AWACS、こちらスカイチーム。5分が経過した。これより侵入を開始する。」
『了解した。幸運を祈る。』
・・・・・・
『ーー我々は日本国航空自衛隊である。この通信を傍受した者はこれに答えられたし。繰り返すーー』
「・・・うんともすんとも言わんな。この国の防空網は一体どうなってる?」
「ーー通信を傍受できる文明が存在するのか疑うべきじゃないのか?」
「おっと。なら、知的生命体がいるかどうかも疑わしいぞ?」
「高度を下げてみるか・・・目視だ。」
「うげっ。SAMにーー」
「それを確かめてみるんだろう?」
「・・・コピー。」




