青い、青い海 Ⅱ
ー日本海:P-1哨戒機・機内ー
作戦開始ーー
JUPITERー1がそう告げるや否や、20機の哨戒機のパイロット達はゆっくりと、迷いなく爆雷の投下スイッチに手を掛ける。
使い古され、P-3Cに至っては塗装が剥げているスイッチが至る所にある中でそれは新品同然の光沢を有していたが、数年後にはその光は失われているだろう。
その遠因となる行為が今為されたのである。
≪ Drop・・・ready・・・Now. ≫
複雑に組まれた回路に微弱な電流が流れ、爆弾倉の制御システムに信号を伝えた。
そしてコンピュータはその命令を実行せんと、格納していた150㎏対潜爆弾を次々と切り離した。
その数、200発。
ダークグリーンに塗装された炸薬の塊は慣性の法則により、真下の蒼い海ではなく、その先にあるモノに向かって吸い込まれーー
雷鳴轟轟。
星野3等海佐は大気が震えるのを感じ取った。
(・・・こりゃあすごい。)
一斉に投下された200もの爆雷は、海面に触れた瞬間にその内に秘めた膨大な化学エネルギーを超音速で解き放ったのだ。
水中で発生した衝撃波とバブルパルスは地上のそれとは比べ物にならず、周辺に浮かんでいた魔物の生命を刈り取り、内臓と肉片を辺りにまき散らした。
透き通っていた蒼い海は既に青く汚濁し、南国の世界遺産を彷彿とさせる特有の美しさは面影もない。
(・・・・・・)
そのことを想像してしまった星野は、生物の予想だにしない攻撃を受ける事なく攻撃任務を成功させた高揚感と、環境を破壊してしまった事に対する罪悪感を抱えながら予定通り機体を反転させた。
≪こちらJUPITERー1。”さわぎり”応答せよ≫
≪こちら”さわぎり”。 攻撃成果を報告せよ。≫
≪こちらの損失無し。 攻撃成功。 甲8割、乙損害不明。≫
≪了解。 艦砲射撃を開始する。空域より一時退避されたし。≫
≪JUPITERー1了解。 オワリ。≫
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ー日本海:目標群から15㎞地点:DD-157 さわぎり CICー
OPS-24 対空レーダーが捉えた哨戒機の編隊を表す光点が離れていく。
第13護衛隊の装備する艦砲では届かない距離に退避したのを見て、”さわぎり”の艦長は予定通り第二波攻撃の命令を下した。
「全艦、対水上戦闘始め。」
OPS-28Cと81式射撃指揮装置2型は目標群を捕捉し、完全に無人化された高性能な両用砲はレーダーからの情報を基に高速旋回を行い1度のずれもなく対象を指向した。
「目標”乙”。 主砲、撃ちー方始め!」
続く




