歪な世界 Ⅳ
ーDD119あさひ 艦橋ー
隊長の後に続いて艦橋に踏み込んだ俺は、手に持った9㎜拳銃で、予め決められた方向の敵を片っ端から撃った。
そう・・・天井に張り付いている奴、床を這いずっている奴、計器の上にいる奴、全部だ。
9発しか入らないマガジンを交換し、同じ動作を繰り返す。
奴等は俺達を見ると直ぐに襲い掛かって来るがーーそのタコのような柔らかい体に9×19㎜パラベラム弾が亜音速で突き刺さると、汚い悲鳴と青い血を撒き散らしながら倒れていく。
幸い、いつもやっている射撃訓練のおかげかーー心臓は早鐘のように打っているというのに、体は自然と動いてくれた。
そして、俺の視界の端を進んでいた隊長が最後の敵を撃ち殺し、
その滑らかな動きが不自然に止まった。
不審に思った俺は隊長を、そして次は死んだ化け物を見て
ーーそいつが乗っかっている赤いモノが何なのかを瞬時に理解した。
(・・・・・・ぇ)
「 ク リ ア ッ ! ! 」
俺が声を漏らしてしまう前に、隊長の怒号が艦橋に響き渡った。
「ーークリア。」
「クリア。」
「クリア。」
「ひッ・・・」
隊列の一番後ろを進んでいた年若い艦橋要員がくぐもった悲鳴を漏らした。
ーーああ、吐きそうだ。
床にぶちまけられた五臓六腑のせいか、それとも仲間を失った事への拒否反応かーー
「ーー衛生兵! 誰か医官を!」
「ダメだ。もう、死んでる。」
俺だって、1名が逃げ遅れたと聞いた時から覚悟はしていたさ。
だが、それとこれとは別だーー
≪あさひCIC、こちら立検第1班、艦橋を奪還した。班での負傷者は無し、計器に損害無し。
--隊員の遺体を発見。 送レ。≫
≪こちらあさひCIC、了解した。遺体収容班を送る。直ちに艦を第一戦速で動かせ。 送レ。≫
≪ーー任務了解。終ワリ。≫
こうして、戦闘は終わった。
だが、現実は何処までも続いている。
理不尽だと思わないか?
ーーおい、クソッタレの神サマよ、俺の部下を返してくれ。
クソッタレの神サマよ、俺達を地球に返してくれ。
今すぐにだ! 聞いているのか! おい!
俺の部下を今すぐーー
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ー港町フリート:???ー
「・・・彼らはとても心強い戦力になりそうだ。この件は元老院に報告する。」
「ああ、しかし・・・何処の国だ? あんな国旗は見たことが無い。」
「私にも分からんが・・・そうだな、カルラ王政府に打診してみよう。仮にも人界軍に関する事だ、彼らも情報を出し渋るような真似はせんだろう。」
「まあ、確実だな。・・・で、俺たちの他にもいるんだろう?」
「当然だろう。あれほどの騒ぎだ、一気に情報は広がるだろうさ。」
「・・・何はともあれ、戦力が増えるのはいいことだ。」
「さて、やるとするか。・・・帝国と人類に栄光あれ。」
「帝国と人類に栄光あれ。」
そう言って、2人は闇の中へと消えていった。
この日、日本国政府は初の外交的接触を行った。
結果は上々。・・・この一週間後、王都で正式に国交と通商条約を締結。
闇に差す光は、少しだけ強くなった。




