歪な世界 Ⅱ
ー港町フリート沖合:DD119あさひ CIC-
「総員、対潜戦闘用ー意!!」
艦が戦闘状態になった事を知らせる耳障りなサイレンが鳴り続ける。
「これは訓練ではない! 繰り返す、これは訓練ではない!」
護衛隊の司令を兼任するいせの艦長ーー梅崎1等海佐の指令によって、4隻の艦は一斉に二百数十もの所属不明艦を迎撃する準備を整えた・・・いや、そうではなくーー
「目標群は生物です。 現在10ノットで本艦に接近中。記録された音源を照会した結果、、一部は「はやぶさ」と交戦した生物である可能性が高いです。」
ーー彼らは不明生物を迎撃する準備を整えた。
(だが、まだ”用意”に過ぎない。)
「いせからの攻撃命令はまだか。」
「まだです、艦長。」
「・・・そうか。」
(そうだ。たまたま近づいて来ているだけかもしれない大型生物を攻撃する道理は無ーー)
「ーー目標群α接近! 15ノットに増速、接触まであと3分!
進路変更なし! 真っ直ぐ突っ込んでくる!」
「クソッ・・・あいつーー」
中世程度の文明に潜水艦はないだろう。
護衛艦のような大型の船に生物は襲い掛かってこないだろう。
現地住民をこれ以上無用に刺激してはならないーー
ここが地球ならば当然のように行っていた対潜哨戒を止める”配慮”をするように指示されたと、盟友の梅崎に聞かされた時、鮫島艦長は”配慮”を指示した防衛省の上層部に猛然と抗議を行った。
結果はNO。
全ては交渉成功の為にーー
その気持ちはわからないでも無かったが、やはり彼は納得がいかなかった。
ーーここは地球ではない。
そのことから目を背けた代償がこの状況だ。
「艦長、いせより攻撃許可が発令されました!」
「よし、攻撃を許可する。左舷短魚雷、1番から3番、撃ちー方始め!」
「左舷短魚雷、1番から3番、トラックナンバー0275、撃ちー方始め。」
「撃ちー方始め。」
旧海軍から続く伝統的な発声の元ーーあさひのHOS-303短魚雷発射管から3本の槍が発射され、艦隊に危害を加えんとする生物に喰らいつく為に海へと潜っていった。




