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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-025 鉱脈を見付けた


 俺達の仲間は、元ブリガンディ王国の兵士5個小隊と保護した元開拓村の11家族になる。

小隊編成は4分隊を基本にしているけど、分隊の人数は10人を越えてるところもあるし、第5小隊のダレルさんのところは6個分隊もあるからなぁ。俺が直接指揮する銃兵隊は2個分隊なんだが総勢25人になる。兵士の総数はおよそ300人というところだ。農民達も4人から7人の家族持ちだから、60人を超える数になる。およそ400人と考えれば良いだろう。

 規模的には、村と言ってもいいだろうな。少なくとも開拓村の規模を越えている。

 現在は森と雑木林を切り開いている最中だが、切り倒した木材を使って、ログハウスが数軒へ移行作業で作られている。

 横幅14ユーデ奥行き5ユーデの大きさだけど、2部屋にすることで1つのログハウスに4つの分隊を入れることができる。部屋の中央に石を使って暖炉を作ったから、冬の寒さも我慢することができるだろう。

 小隊長達は同じ大きさのログハウス内を4部屋にすることにした。暖房は小さな火鉢を使うことになりそうだけど、隙間が結構あるからなあ。案外寒いかもしれない。

 指揮所は一回り大きく作ったが、左右に俺とレイニーさんの住む小部屋を作って貰うつもりだ。まだ作っている最中だけど、指揮所の暖炉は大きく作るらしいから、両端の部屋も暖かいに違いない。


「食堂や保護してきた農民たちの家族もいますし、家畜小屋もあります。ログハウスだけで30棟近く出来そうです」


「ドワーフ族の仕事場や食料倉庫、武器庫も作らないといけない。中央広場はだいぶ踏み固められたんじゃないかな」


「この広場を中心にこのような配置を考えています。指揮所になるこの建物を広場の北に建て、その後ろが兵舎や住宅です。東に食堂や集会場を立てて西に工房が建つ予定です」


 50m四方の広場を中心にするのか……。食堂近くには菜園ができるらしい。


「畑は南西方向に広がるのか……」

「緩やかな傾斜地ですから、開墾がしやすいとのことです。南は塀をこのように伸ばして畑に被害が及ぶのを避けようかと」


 少し大きな砦と言えるのかもしれないな。

 中に村の機能まで持たせるんだから、名前を早く付けた方が良さそうだ。

 食料等の購入するために南に向かうことが多くなれば自然と道が出来てしまいそうだ。

 この砦の門を、しっかりと作っておいた方が良いのかもしれない。

 俺達を見限ったブリガンディ王国だけでなく、この場所から南にあるサドリナ王国からも、俺達の状況を偵察に来る部隊が無いとも限らないし、魔族の襲撃だって全くないわけではなさそうだ。


「この砦の門も作った方が良いかもしれません。それに、北にも柵は必要でしょう。

 急峻な崖ですが、下りて来ないとも限りません」


 レイニーさんが配置図に赤い点線で北の柵をかき込んだ。南の一角に丸を付けたのは、門をこの辺りに……、ということなんだろう。

 んっ! この印は何だ?


「レイニーさん。これって何ですか?」


「滝があるんです。結構な水量なんですが、川幅はそれほどありません。深さは膝ぐらいで、川幅は2mにも満たないそうです」


「出来れば、囲い込みたいですね。流れがそれなりなら、水車を回せそうです」


 粉ひきもできるし、鍛冶をするためのフイゴを動かすこともできるだろう。

 そうなると……、「この配置の東西を逆にした方が良いかもしれませんよ。水車があれば工房の動力にも使えますからね」


 レイニーさんが首を傾げているのは、水車を見たことが無いんだろうか?

 ドワーフ族なら容易に作ってくれるんじゃないかな。自分達にも利がある話だからね。


 開墾と砦作りは骨が折れるが、土地的にはかなり良さそうに思える。

 開墾は南西方向にかなり広げて行けそうに思えるんだよなぁ。

 とりあえずできるところから始めてはみたが、きちんと地図を作ることも必要だろう。

 簡単な測量器を作って、俺は地図作りに専念するか。

               ・

               ・

               ・

 毎日の夕食後に、レイニーさんが小隊長を集めた会議で報告を受け、板に描いた計画表を睨みながら人員の調整を行っている。

 まだここで生活を初めて数日だからなぁ。目立った遅れは無いみたいだ。

 ロバを5頭手に入れたから、農家の子供達が一生懸命に冬越しの飼料を荒れ地から運んでくれている。

 今のところ、柵で囲った場所に積み上げているだけだから、早めに小屋を作ることになりそうだ。そうでもしないと来春には肥料になってしまいそうだからね。

 広場の焚き火の灰も一カ所に集めて、落ち葉とロバの糞を交互に重ねている。来春には開墾した土地に鋤き込むことになりそうだ。

 立木を切り払い、根を掘りだしただけの土地だ。ライムギを育たられるには3年以上掛かるかもしれないな。

 とりあえず豆を蒔いて、出来を度外視してジャガイモを植えてみるか……。


 ドワーフ族の工房長に、1フール四方の板に角度を描いてもらった。

 工房長が持っていた金属製の分度器が欲しかったが、1つしかないらしいから板で代用する。それでも1度刻みに目盛りが付いているから十分に役立つはずだ。

 三角測量をしながら砦の中の建物の配置を描き、丸太の塀の高さと方向、その長さを記録する。

 時間は掛かるが、レイニーさんが最初に持っていた周辺の概要図よりは詳しいものができるだろう。


 最初の雪が降るまでに、2組の獣人の家族が難を逃れてやってきた。さすがに雪に包まれる季節にはやっては来ないだろうけど、雪が融けたなら何組かがやってくるに違いない。

 春分に商人から買い込む食料だけで、来年は乗り越えなければなるまい。

 それまでには、ある程度の自給自足と換金ができる品物を作る必要がある。


 そんなある日のことだった。

 雪の中をドワーフ族の工房長が、指揮所に慌てて駆け込んできた。

 濡れた体を暖炉で乾かそうともせずに、俺の前に小さな包みを広げた。


「見てくれ!」


 なんだろうと手に取ってみたんだが……、結構重いんじゃないか?

 金のような光沢をした面があるんだが、金の重さとは明らかに異なる。ナイフを取り出して、金色の光沢面を削ってみると簡単に削れてしまう。

 

「銅ですか?」

「分かるか? 黄銅鉱という鉱石じゃよ。崩れた跡地を何気なく見ていたんじゃが、途中で変わった石を見つけてのう。ハンマーで叩いたらこの通りじゃ」


 山腹崩壊によって、鉱石が露出したってことかな? そうなると掘り出すのはそれほど苦労せずに行えそうなんだが……。


「精錬しようなんて、考えていませんよね?」

「なんだと! 精錬せねば使えんじゃろうが、それほど困難な作業ではないぞ。われらだけで掘り出して精錬すれば、銅じゃからのう……、高値で売れると思うぞ」


「ドワーフ族が鉱石の高い精錬技術を持っていることは知っているつもりです。俺が気にかけているのは、それによって魚の住まない川ができてしまうことなんです。場合によっては農業にも影響が出てくる可能性だってあります」


 工房長が驚いたような表情を俺に向ける。

 レイニーさんもちょっと驚いているようだったが、俺の言葉を待つようにじっと俺を見てるんだよなぁ。


「金、銀、銅……、鉄でさえも精錬作業によって本来の材質となり加工することができます。ですがその精錬によって俺達が使う金属、それ以外の鉱滓、それにガスで出てきます。

 金属そのものはあまり害はないでしょうけど、鉱滓とガスは生物にとっては猛毒となりえます。植物を枯らし、魚を殺す……。発生するガスを吸い続けるなら寿命を縮めますよ」


「ドワーフ族以外に、その秘密を知る者がいるとは思わなんだ……。確かにその通り、ドワーフ族の里においても精錬場所は離れた場所に設けるほどじゃ。その作業も、戦で得た奴隷を使うほどじゃからなぁ……。

 だが、それなりに注意するなら、作業に従事する者達の病害はそれほどでもないのじゃが、ここでやろうとするには早計じゃったか」


 気落ちしているのがちょっと気の毒になってしまう。

 だけど、それはそれということにならないか? 要するに、俺達で行わなければ問題ない。


「でも、量があるのであれば売ることができそうですね。銅鉱石ですから値段もそれなりだとは思いますが、それは量で補えるでしょう」

「精錬は他所でやらせるということか……。まぁ、それで良いじゃろう。精錬後の銅を渡してもらえれば十分じゃ」


 無駄な作業が省けると思ったのか、少し機嫌が良くなったな。

 さて、それでは一番大事なことを聞いてみるか。


「ところで、どの辺りで見つけたんですか?」

「ほう……、だいぶ良くできた地図じゃな。……ここじゃよ。水車を作ろうと滝の水量を見に行こうと、斜面を登った途中じゃった」


 工房長の指さした場所に、レイニーさんが素早く印をつけて鉱山と書き込んでいる。

 なるほど……、水系の近くということか。それなら、かつてはこの辺りに水が流れていたかもしれないな。


「銅鉱石を麻袋に詰め込んでくれませんか。数は20袋ほど用意してくださると助かります。来年の春分に商人がきますから、売り込んでみましょう」

「了解じゃ。われらへの見返りは酒と銅でお願いするぞ」


 互いに握手を交わしたところで、工房長は指揮所を出て行った。

 さて、試さないといけないな。

 地図を眺めながら屈曲部を探す。何か所かあるが、急に川幅の広がるこの辺りが良いかもしれない。

 ここから半日ほどだから、1個小隊ほどで十分だろう。


「急で申し訳ないんだが、1個小隊を5日ほど借りたいんですが……」

「急ですねぇ。先ほどの工房長との話に関係あるのでしょうか?」


「やってみないと分からないんだが、銅鉱石があるならその不純物も採れるかもしれない。量は少ないだろうし、採算がとれるか少し怪しくはあるんだけどね」


 冬に入る前に確認だけはしておいた方が良さそうだ。

 上手くいったなら、大規模に行えば良い。


「銅鉱石が取れたのは、ここだ。すぐ横に滝があるということは、かつてはこの場所にも川が流れていたに違いない。その下流で急に川が緩やかになった場所……。この辺りだろう。ここで砂金が取れるかもしれない」

「砂金ですって!」


 飛び上がるばかりに、レイニーさんが驚いている。

 その辺りの知識は、まだこの世界にはないのかもしれないな。


「可能性があるだけだよ。あればうれしいけどね。それにある程度取れないと採算が合わないと思うんだ」

「それで、試すと……。1個小隊を5日間で判断できるんですか?」

 

「実質3日間だ。それで、片手の平に一杯になるほどの量が採れないときにはあきらめるしかないけどね」

「直ぐに、エルドを呼んできます。彼に詳しい話をしてください」


 それこそ風のように指揮所から飛び出していった。

 あんなに早く駆けて行って、途中で転ばないかと心配になってしまう。


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