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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-226 まだ見ぬ魔族


 ネジを切った後に、雌ネジと雄ネジを十文字に削りとる。

 切り取った部分と残った部分を合わせればスムーズに挿入できる。この状態で90度回転させれば、ネジがしっかりと噛み合う。

 これなら、後装式大砲の尾栓を確実に塞ぐことが出来るはずだ。

 尾栓もかなりの重さになるから大砲からズレ落ち無いようにヒンジ機構を頑丈に作る必要がありそうだ。

砲身にも砲弾を回転させる溝を掘る技術があるし、点火は魔石を使った魔道具を尾栓に組み込めば良い。

 砲架は仰角と回転角を限定して微調整が出来れば十分だ。

 さすがに荷台に搭載できないから,砲架に車輪を付けてボニールで曳けるようにしないといけないだろう。

砲撃時には反動があるから車輪を畳んで地面にしっかりと止められるようにしないとな……。発射時の反動を相殺できるような仕組みも、将来は考えねばなるまい。

 まあ、とりあえずはこんなものか。

 着発信管も作りたかったが、あまり凝った仕掛けは止しておこう。爆弾と同じように砲弾の中に銅性のパイプを組み込み、その中に導火線を入れて発射時に導火線に点火させれば十分だ。発射から爆発まで3秒もあれば良い。


 数門作ったところで、滝を睨む東の門に備えておこう。

 あそこなら試射したとしても町に音が聞こえるだけだろうし、直径2イルムの砲弾はエニル達の大砲と同じだからなぁ。既存の大砲の訓練位に、皆思ってくれるに違いない。

 大砲は、石火矢と違って目標からあまり大きく外れることはない。攻城兵器対策としては十分すぎる代物になる。


「後は、この銃の改造だけになるな。とりあえずは上下2連にはなったけど、装弾数がもう少し欲しいところだ」

「終わったんですか? それにしても銃に銃身を沢山付けると重くなりますよ。これで十分に思えるんですけど」


 レイニーさんの銃は、俺が少年時代に練習していた代物だ。

 1発ごとに銃口から火薬と弾丸を詰める前装式の銃だったんだが、ガラハウさん達が縦に2つの銃身を持つ銃に改造してくれた。

 改造というよりも、ほとんど作り直したと言っていいだろう。今では中折れ式に銃身が上に上がって銃身の後部から真鍮製のカートリッジを素早く交換できるようになっている。

 確かに前の銃よりは優れてはいるんだが、2発撃ってしまうとカートリッジの交換という余計な仕事が入ってくる。

 指揮官だから、ある程度儀礼用だとはいうものの、やはり2発ではなぁ……。

 せめて数発は続けて撃ちたいところだ。


「現状でどうにか使えるというところですね。銃端今後も発展していくでしょう。最終的には弓兵を全員銃兵にしたいところです」

「装填が面倒ですから、ヴァイスは嫌がるでしょうね」


 たしかに嫌がりそうだ。だけど数発続けて撃てるなら欲しがりそうにも思えるんだけどなぁ。でも面倒なことを嫌う性格だから、最後まで弓兵であり続けそうな気もする。


「銃はクロスボウと似たところがありますからね。クロスボウよりは発射間隔を狭められるんですが、銃身内の掃除という面倒な作業があります。魔法を使うことも出来るんですが、獣人族が使う魔法の回数は生活魔法が数回というところです。魔法で銃身内の掃除をするのが前提になることが無いように考えてはいるんですが」


 俺なんかまったく魔法を使えないからなぁ。姉上が作ってくれたバングルでどうにか日常生活に不便は無いんだけど……。


「銃の有効射程はクロスボウを越えるということでしたね。でも練習での的は20ユーデ程先でしたよ」

「銃身が短いからですよ。エニル達が使っている長銃なら100ユーデ先を狙えます。200ユーデ先でも威力はあまり変わりませんから、弓よりも遥かに威力があって遠くに飛ぶということなんですけど問題は先ほど言った通りです」


 通常の火薬と弾丸を紙の筒に入れたカートリッジよりも、真鍮の筒の中に火薬と弾丸を入れたカートリッジの値段が高くなってしまうのも問題ではある。

 エニル達銃兵には20発の真鍮製カートリッジを全員携行させてはいるけど、直ぐに使い切ってしまいそうだ。

 出来れば携行段数を今の2倍にしたいところだな。予備弾数は千発以上欲しいところではある。

 旧来の長銃は楼門に10丁ずつ保管しているし、使う紙製カートリッジも300発程常備しているから、予備兵器として十分に役立つ。

 旧来の拳銃については、新たな銃兵達に2丁ずつ渡している。1個分隊だけではあるが、素早く2発銃弾を放って後方でゆっくりと装填するからカートリッジだけでなく火薬と弾丸を別に携行させているようだ。


長銃も縦に2つの銃身を持つ物を作ってみるか。今の1発ごとにカートリッジを入れるよりも素早く弾丸を放てそうだ。

 1発目が外れても、直ぐに次を撃てるから次弾装填までの緊張を少しは和らげることが出来るんじゃないかな。

 

 リザードマンは矢が利き難いからなぁ。

 クロスボウを至近距離で放つか、銃弾を浴びせるしかなかった感じだ。

 オーガも似たところがあるけど、的が大きいからウーメラで放つ投槍も役立つ。バリスタなら一撃なんだけど尾根には設置できないのが難点だ。

 ゴブリン、コボルト、オーガにリザードマン……。それ以外の魔族はまだ戦場に現れないがきっといるに違いない。

 ティーナさんが戻って来たなら、エクドラル王国で確認された魔族の種類について教えて貰おうか。ついでに他にも魔族の伝承等があるなら対策を考えておかないといけないだろう。


「どうしました? 会話の途中でも考えこんでしまうのは昔からのレオンの悪い癖ですよ」

「済みません。色々と兵器を考えてはいたんですが、果たして魔族相手にどこまで通用するかと。まだ知らぬ強力な魔族がいるんじゃないかと心配になったものですから」


 癖だからある程度は認めて欲しいところだ。俺にだって悪気があるわけでは無いんだが、確かに失礼ではあるんだよなぁ。

 俺がそんな状態に陥ったら、早めに教えて欲しいところではあるんだけど……。


「昔話の中には色々な魔族が出てきますよ。レオンは昔話をあまり知らないようですね」


 レイニーさんが、まだ見ぬ魔族として挙げたのは巨人とガーゴイル、それにドラゴンだった。

 巨人はオーガの2倍ほどの大きさらしい。全身を鉄の鎧で覆って大きな棍棒は城壁さえ破壊するとのことだった。

ガーゴイルは鳥人らしい。地上300ユーデほどの高さをゆっくりと飛ぶことが出来るそうだ。ガーゴイル部隊が上空から放った火矢で王都が大火に包まれたことから王都では民家でさえも石造りの家になったらしい。

 ドラゴンはトカゲの化け物らしい。尾まで含めると30ユーデを越える体は固い鱗で覆われ槍すら通らないということだった。

 蹂躙されるままに逃げるしかないってことかな?

 かつてドラゴンを倒した方法は至近距離からのバリスタ攻撃と、深い落し穴に誘い込んで上から松明をそれこそ沢山投げ込んで焼き殺したとのことだ。


 今度作る大砲なら、何とかなるかな?

 唯一考えないといけないのはガーゴイルだな。300ユーデとなると矢では届かないし、銃弾の有効高さについても確認しておいた方が良いかもしれない。

 銃弾さえ届かないとなれば、まったく別な手段が必要だということになる。


「ガーゴイルが問題ですね。これは少し考えないといけません。他の魔族なら何とかなるでしょう」

「ドラゴンでさえも?」


「大砲を少し改良します。現在は楼門に押し寄せてくる連中をまとめて倒すために用意しているんですが、あれはかなり威力があるんですよ」

「あまり使っていないのは威力が高すぎるということですか?」

「そうなんです。あまり敵に知られたくないですね。難点は重いですから尾根に設けることが出来ないんです」


 尾根なら石火矢と爆弾で十分だろう。爆裂矢は将来的に銃に変わるだろうけどね。

 だけど上空からの攻撃手段が無いのは痛いところだな。

 ガーゴイルの飛行高度がいつも同じなら上空で爆弾を炸裂させても良いだろうけど、早々都合よくせめて来るとも思えないからなぁ。

 火矢対策だけでも、早めに考えておいた方が良さそうだ。

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 春分が近付くにつれて根雪がだんだんと浅くなっていく。

 すっぽりと雪に埋もれていた長屋も、だんだんとその姿を現してくる。

 まだ春分を過ぎてもたまに雪が降るからなぁ。開拓農家の人達は会議室に集まって今年の開拓場所を皆で相談しているに違いない。

 散歩していると堆肥置き場から盛んに水蒸気が立ち上っている。

 上手く発酵が進んでいるのだろう。今年もエディンさん達が運んでくる肥料と混ぜて畑に鋤き込む作業が雪解けと同時に始まる。

 秋の実りが楽しみだな。マクランさんの事だから、また新しい野菜を試験栽培するに違いない。

 人参かな? それとも蕪かもしれないな。蕪のスープは美味しいからなぁ。

 そんなことを考えていたら急にお腹が空いてきた。夕食にはまだ間があるから、指揮所に戻ったら焼き菓子でも食べるとするか。


 指揮所に戻ると、レイニーさんとナナちゃんが編み物の手を休めてお茶を楽しんでいた。2人の前の木皿の上には美味しそうな焼き菓子が乗っている。

 ゴクリ! と喉を鳴らしたのが聞こえたのかな?

 レイニーさんが直ぐにお茶をカップに淹れて渡してくれた。

 ナナちゃんが渡してくれた焼き菓子をさっそく戴く。クッキーのように焼しめていないしバターも少ないんだが、マリアンの作るクッキーよりも二回りほど大きい。やはり味より量が大事だと思っているんだろう。

 2個頂くとお腹も満足してくれた。

 2人に散歩してきた感想を話してあげると、やはり堆肥の上げる水蒸気は気になっていたみたいだな。


「別に火を点けているわけでは無いんですけど、白い煙のように立ち上っているんですよ。マクランさんに聞いたら、良い堆肥である証拠だと話してくれました」

「畑には肥料が欠かせませんからね。西にはいくつか堆肥置き場があるそうですけど、あの山が春先には無くなってしまうんですよね」

「毎年荷車で運んでいるにゃ。でも畑に撒くと直ぐに無くなってしまうにゃ」


 それだけ畑が広がったということなんだろう。

 それを感じたからこそマクランさんが集団農場から家族単位の農業に変えようと言い出したに違いない。

 集団で農業をやるのは初期だけだと、昔マクランさんが話してくれた。

 一生懸命頑張る人とさぼる人が出てくるらしいんだが、集団であれば収穫は均等割りだからなぁ。頑張る甲斐が無いってことになるんだろう。

 だけど家族単位の農業を始めても、仕事をさぼるような人物が出た時にはどうなるんだろう?

 収穫高が少ない時には補填しようと考えていたけど、農作業をさぼって収穫が減るということなら補填するのも考えてしまうな。

 これも1つの課題としてエクドラさん達に審議して貰おう。


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