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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-224 来春は忙しくなりそうだ


 開拓で農地が増え、住民が増えたことでお店がいくつかできた。

 そろそろ家族単位で家を持ち、集団生活を終える時期になってきたのかもしれないな。

 夕食後に指揮所に集まってくる連中も住民の意識が少しずつ変わってきているのに気が付いたみたいだ。

 だけど、元々俺達は軍人だからねぇ。集団生活が向いているんだよなぁ。

 強いて言うならマクランさんが一般人になるんだけど、けっこう集団生活が気に入っているようだ。

 案外開拓村の暮らしは、軍隊と似たような生活だったのかもしれないな。


「家族単位で家を持つというのは理解できますが、一度にすべての家族ということは不可能ですよ?」

「それは国会でも議論しました。いくつかの段階に分けて行うことになるでしょう。配ったメモを見てください……」


 住民が暮らす区画ごとに代表者を出して貰って、色々と審議をする場が国会だ。主に生活に直結している課題の対処について話し合っているみたいだが、いよいよ集団から個に暮らしの場を分かることになったか。

 エクドラさんが配ってくれたメモを見ると、いくつかの項目について書かれていた。

 

 1つ目は、家族単位で暮らす者達の優先順位ということになる。

 一番最初は、店の責任者と農家ということになるようだ。開拓農家の家族数はかなり多いんだよなぁ。その選択は元々一緒に集落を作っていた者達ということになるようだ。

 マーベル共和国に避難してから、開拓に手を出した者達はその後になるらしい。

 2つ目は、新たな村の建設だ。

 西の尾根の麓にある開拓村とこの街の中間に新たな村を作ることになる。

 村の規模は当座は50家族が住み、雑貨屋を1つ設けると書かれている。

 3つ目は、この街の住民区画の整備になる。

 2家族が住む長屋を取り壊して、家族単位の家を作るということだが、場合によっては集合住宅でも良いとの事だ。

 中央楼門の広場の周囲が石作の立派な建物に変わるのは案外早くなりそうだな。


「新たな村や農地近くに農家が移転することで町に空き家が出来ますから、住民街を家族単位の家に帰ることが出来るだろうとのことでした」


 うんうんと皆が頷いているんだけど、そんな俺達は今まで通りの生活で十分満足してるんだよなぁ。

 だけど、要望が多いともなればそれに応えるのは俺達の矜持でもある。

 さっそくエルドさんが話を始めた。


「家族単位の家を作るとしても、移住する人達の要望もあるでしょう。長屋よりは大きくすることになるでしょうが、建造する家の間取りぐらいは同じにしたいですね。準備も容易に行えますし、何といっても作るごとに立てるのに慣れるでしょう」

「賛成じゃ。木工工房の連中にも手伝って貰えば用意する家具も同じに出来るぞ。窓や扉もあらかじめ作って置けるじゃろう」


 なるほど……。要するに規格品を作るということだな。

 それなら長屋作りの経験が生かせるに違いない。

 どんな間取りにするか、家に置く家具はどうするかについては、エクドラさんが国会に持ち帰って議論してくれるらしい。


「あの辺りに村を作るとなれば、炭焼の職人や樵の連中も住まわせたいところじゃな。もっとも植林を上手く行わねば直ぐに山が丸裸になってしまうぞ」

「家作りもありますからね……。それは川下や、南の森から運ぶことになるでしょう」

「あまり森を伐採すると、獲物が減るにゃ。1本切ったら1本植えるぐらいはして欲しいにゃ」


 ヴァイスさんが困った口調で話してくれたけど、植林も大事な事業ではある。

 木材の消費はかなり多いのだが、何時までも現状に任せていると将来は冬越しの焚き木にさえ困りかねない。

 

「南に向かう街道沿いに植林を行いましょうか。少なくとも薪ぐらいは切り出せるようにしたいところですね」

「となると……、広葉樹じゃな。実がなる木や綺麗な花を咲かせる木もあるぞ。それに炭には最適な木材じゃ」


 接ぎ木やドングリを撒いて若木を育てるところから始めることになるのかな?

 森や林に行けば若木も見つかるだろうから、それを集めて来ても良さそうだ。エディンさんに頼めば取り寄せて貰えるかもしれない。


「街道は東の楼門から南に延びていますから、エニル達に頼んでみましょう。もっとも若木の入手はレンジャー達に頼みたいところですけどね」

「10本で銅貨5枚ということで、春になったらギルドに依頼しましょう。子供達も北の斜面で放牧しながらお小遣いを手にいれられそうです」


 あちこちに荷を運ぶ運送業も出来そうだな。レンジャーギルドに依頼してというより、マーベル共和国内の運送だけに限定するなら、年長組の少年達にやって貰うのも良いかもしれない。

伝令や光通信機の操作も行って貰っているから、戦がある時には臨時収入が親を越える時もあるらしい。

 

「色々と考えると、やはりまだまだ町というより砦に近いのかもしれんのう。雑貨屋も3軒になったらしいが、品揃えを変えているらしい。それを考えると、独立した酒場を作っても良さそうに思えるんじゃが」

「まだまだワインを購入してるんですから、まだ早いんじゃありませんか? ガラハウさんのところも強い酒を商人に卸すところまでにはなっていないでしょうし……」


 ガラハウさんの提案に、エクドラさんが釘を刺している。

 まだまだブドウ畑が小さいのかな?

 北の斜面のブドウ畑はまだまだ広げられるからなぁ。それを知っているのだろう、ガラハウさんが隣のマクランさんと相談しているようだ。


「酒場はとりあえず、現状のままとします。当初に比べればだいぶワインも飲めるようになったはずですからね」

「まあ、見通しは明るそうじゃな。もう少し我慢するとしよう」


 納得しているようだけど、マクランさんと悪だくみが出来たということかな。

 出来たワインを蒸留酒にするために、かなりの量をガラハウさんにマクランさんが渡しているからなぁ。帳簿に記載される前なら、2人で何樽かを横流しするのも可能だろう。見つからないと良いんだけどね……。


「ヤギの飼育は子供達の任せていますが、だいぶ数が増えています。私の方で乳搾りやチーズ作りをしているんですが、これを独立させてもよろしいでしょうか?」

「チーズ工房ということですか?」


「はい。日中の世話は子供達に今まで通り任せても、乳搾りはかなり面倒な仕事です。その後のチーズ作りを考えると数人以上の雇用が必要になりそうです」


 町中の草刈りとヤギの見張りは子供達に任せるということかな?

 提案者がエクドラさんだから、すでにある程度の考えを纏めているに違いない。

 レイニーさん達も同じように考えているのだろう。全員一致で賛成しているぐらいだからね。

 ガラハウさんやマクランさんが笑みを浮かべているのは、ワインのつまみにチーズが良く合うぐらいの考えなんだろうな。たまに食べることが出来るチーズが増えるんだから、皆が賛成するのも良く分かる。

 今までは開拓農家の小母さん達が協力してくれていたらしいけど、正式な工房ということになれば少ないながらも安定した収入を得ることも可能だろう。

 子供達にも、ちゃんと支払わないとね。小さな子供だってしっかりと面倒を見ているんだから。


「色々と職が出来ますね。交代で行っていた仕事を専業化するとなれば、職業の内容、報酬、それに求人数をある程度まとめてください」

「国会で審議しましょう。職業が少し増えるかもしれませんが、それは仕方がありませんね。それに、その収益で一家を養わねばなりませんから、あまり報酬が低いということにならないようにしたいと考えています」


 エクドラさんの言葉にマクランさんも頷いているから、ここは2人の手腕に任せておこう。


「最後は、レオンからですね」

「俺の方は、あまりうれしい話では無いんですが……。尾根の南にある見張り台の改造についてです」

「リットン達にも関連する話だったな。上手く運用できるなら尾根の延長戦から東は魔族の脅威が低くなるはずじゃ。街道近くはエクドラル王国の領地になるが、ワシ等のマーベル共和国も歩いて半位置の距離は南に領地を持っておる。最初は放牧でも、将来は良い農地になるじゃろう」


「放牧といっても、囲いを設けてということでしたね。牧畜というか畜産というか迷うところですが、国営の放牧地として羊を預けられれば良いのですが」

「羊は個人持ちで、それを国に預けて育てて貰うと?」


 貯金のようなものかな?

 子供の羊を買って、子供達に世話をして貰う手間賃を払う。3年もすれば大きくなるから、それを肉屋に売るということかな? 毎年毛刈りをすれば毛糸の材料となる羊毛だって売れるからね。購入価格の2倍以上にはなるはずだ。

 子供達への対価と飼料代は羊の売値から天引きすれば良いだろう。新たな子羊を購入しても確実に黒字になるんじゃないかな。


 待てよ……、ガラハウさんが炭なら広葉樹が良いと言っていた。

 どんぐりが大量に採れるなら、豚を森に放しても良さそうに思える。ヴァイスさん達がイノシシやシカを狩って来るけど、マーベル共和国で全てを消費するわけにも行かない。

 どんぐりで育つ豚は美味しいらしいからなぁ。

 南の見張り台を改造することで東の脅威が低下するなら、また色々と出来そうな気もするな。

 さすがに農地にするに、はさらに年月が必要だろうけどね。


 皆が帰ると、レイニーさんとワインを飲む。

 既にナナちゃんは俺達の部屋で夢の中にいるに違いない。

 パイプに火を点け、今年出来たワインを味わう。

 まだ熟成が未熟だから、ジュースのブドウの味が強い。俺にはあまり酔うことが無いこのワインが一番だな。


「また兵士の皆さんに頑張って貰うことになりますね」

「住民が安心して暮らせるんですから、それも兵士の務めでしょう。それに戦と違って死ぬことはありません。材料を運ぶのが面倒ですけど、荷馬車はだいぶ余っていますからね。開拓民に荷馬車を提供することで協力を頼んでも良さそうです」


 荷馬車といってもエディンさん達が乗ってくる荷馬車よりはかなり小さい。ボニールが曳く荷馬車だから仕方が無いと言えばそれまでだが、10台以上あるからなぁ。東の河原から見張り台まで、1日に2回は砂利や砂を運べるだろう。

 案外早く見張り台の工事が終わるんじゃないかな。

 少なくとも、来年内には終わると思うんだけどねぇ……。


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