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オリガン家の落ちこぼれ  作者: paiちゃん
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E-219 お見合いの準備が整ったらしい


「すると、ブリガンディ王国は2つに分かれると?」

「はい。南岸の貴族領が連合化するとのことでした。動きは前からあったのですが、東の貴族領に王国軍が攻め入ったことから結束を堅固にするためにブリガンディ王国を見限ったのではとの噂です。オリガン領からの避難者を引率してきたレンジャーの話では既にブリガンディを見限っていたとのことですから、実態を正式にブリガンディ王宮に宣言しただけに思うのですが……」


 とは言っても、今までのようにブリガンディ王国の貴族ではなくなったということだ。

 ブリガンディ王国の建国にも関わったオリガン家の党首である父上はさぞかし悩んだに違いない。

 最終的判断は、今のブリガンディ王国に義は無いということになるんだろうな。

 父上の事だから、何度も国王に直訴して不義を戒めたに違いない。

 それでも国王の治政が変わらねば、父上としても見限るしかなかったのだろう。ブリガンディ王族の永続よりもオリガン家の永続に天秤が傾いたということかな?

 

「沿岸に領地を持つ貴族は4つあるのだが、全て連合に入ったということなんだろうか?」

「沿岸のオリガン家、ラインド家、パルバド家、エルモンド家、それにラインド家と地続きのモデム家の5家が手を結んだようですな。オリガン領から来たレンジャーの話ではもう1つ参加を打診してきているようですぞ」


 モデム家はオリガン家よりも小さい領地だったはず。となると参加を打診してきている貴族も下級貴族に違いない。さすがに貴族連合の飛び地になるような貴族領ではないだろう。

 現状で5つ、場合によっては将来6つになる各家の私兵の総数はどれぐらいになるんだろう?

 今までの睨み合いもあるからそれなりに戦力を上げたことは間違いないだろうが、3個大隊には達しないはずだ。

 ブリガンディ王国も北の魔族を考えると、簡単に貴族連合に手を出すことは無いだろう。しばらくは膠着状態が続くことになりそうだ。


「そうそう、忘れるところでした。これを奥様にと……」


 エディンさんがバッグから大事そうに紙包みを取り出して渡してくれた。

 俺の前にそっと押し出した包みを見ると、父上から母上への小包ということになるのだろう。本2冊ほどの大きさだから、手紙だけではなさそうだな。


「父上から母上宛てですか……。届けて頂き感謝します」

「これぐらいは容易いことです。それと、これはレイニー殿とレオン殿に……」


 今度は2つの書状を出してくれた。

 エディンさんが直ぐに返事を求めてこないところを見ると、後で開封すれば良さそうだな。


「それでは、この辺で……」

「帰る時には同盟軍に参加する兵士達をよろしくお願いします」

「もちろんです。最初の開拓村までということでしたね。1個小隊を越えるんですから私共も安心できます」


 2人が去ったところで、パイプに火を点けて書状を開く。

 差出人はグラムさんのようだ。中にもう1つ書状があって、これは母上宛てだな。父上からの小包と一緒に届ければいいだろう。


「王子殿下からの正式なマーベル共和国軍の派遣依頼ですね。同盟軍参加中のマーベル共和国軍に対してはエクドラル王国軍と同等の待遇を保証するとのことです」

「口頭で話はありましたけど、正式な文書でということでしょうね。これで同盟軍が正式に動くことが出来ますが……」


「指揮系統はエクドラル王国軍になりますが、石火矢と爆裂矢の管理と運用はマーベル共和国軍士官の判断に任せるとのことです」

「転用することは無い、ということですね。それなら安心です。リットンさんなら使用を躊躇うことは無いでしょう」


 ヴァイスさんなら積極的に使うんだろうな。リットンさんの考え方はエルドさんに近いから安心できるんだけど……。


 さて、特に何もないようだから母上達が暮らす長屋へと向かう。

 今夜はオビールさんから頂いたワインを目当てにいつもよりたくさん集まりそうだ。

 ある意味リットンさんの送別会にもなりそうだから、俺の方からも何本か出しておこう。


 母上の住む長屋の扉を叩くと、すぐに返事があった。

 扉を開けて、マリアンが迎え入れてくれると、母上が笑みを浮かべて編み物の手を休めて俺に顔を向けている。

 軽く頭を下げて挨拶を済ませると、テーブル越しに母上の前に腰を下ろす。


「珍しいですね。今日はナナちゃんを連れてこなかったのですか?」

「彼女も忙しく働いていますからね。俺の方は指揮所で暇を飽かしているところです。今日、エディン商会がやってきました。オリガン領からの避難者を11家族連れてきてくれました。里はオリガン領ではないでしょうが、仲間が増えて嬉しい限りです。それと……」


 バッグから小包と王子様それとグラムさんからの手紙を取り出して母上に渡す。

 最初に開いたのは、父上からの小包の方だ。

 中から出てきたのは、木箱が2つに手紙が1つ。木箱は大きいのと小さいのがあるんだけど、小さい方は立派な彫刻が施されている。大きい方は何の飾り気もない白木の木箱だ。

 箱を開けるのかと思ったけど、母上が開いたのは手紙の方だった。

 2枚の綺麗な用紙に書かれた文を1度読んだところで再度ゆっくりと読み返している。文脈に何か気になることでもあるのかな?


「これで、問題は無くなったわ。アレクサンドも賛成してくれているのはありがたいわね」


 マリアンに手紙を渡しながら呟いている母上にマリアンがほっとした表情で頷きながら手紙を受け取って読み始めた。

 母上の乳母だからなぁ。色々と助言しているに違いない。

 

「ありがとう。これでライザの輿入れは本人の自由ということになったわ。とはいえ、エクドラル王国にライザを愛してくれる人物がいればということになるんだけど……」


 今度は王子様からの手紙を開いて読み始めた。

 中身を読んでいて途中で驚いているようなんだけど、何か進展があったのだろうか?

 グラムさんからは特に何も無かったはずなんだが……。


「招待状になるのかしら? 今年の冬は旧王都で暮らして欲しいとの依頼になるんだけど……」

「母上だけですか?」

「私とライザの名が書かれているけど、マリアンも一緒に出掛けても問題ないようね」


 それって、本国の御妃様が相手を何人か選んだということなのかもしれないな。

 お見合いを兼ねたパーティを何回か行いたいってことなんじゃないか?


「1つ確認したいのですが、母上達のパーティ衣装はオリガン家から持ってきたのでしょうか?」

「残念ながら持ってきていないし、レオンも知ってる通りオリガン家はあまり裕福ではないわ。王子様からのご招待と言えば断ることは出来ないでしょうから、少し上等の服を着ていくことになるでしょうね」


 さすがに少し上等では済まないだろうな。

 旧王都に行くまではそれでも問題はないだろうが、向こうに着いたなら早急に衣服を整える必要がありそうだ。

 ここは……、レイニーさんにわけを話して借金をするしかないかもしれないな。

 ティーナさんにも話をしておいた方が良さそうだ。さすがにデオーラさんのドレスまでとはいかなくとも、エクドラル王国の貴族並みには形を整えてあげたい。


「母上としてはどのようにお考えですか?」

「ライザの婿候補を交えたパーティとオリガン家をもっと知りたいというところでしょうね。レオンがオリガン家としては異質であってもオリガン家尾という名を持っていることは間違いありません。となると、本来のオリガン家を知りたいんじゃないかしら」


「兄上が一緒なら何ら問題はないんですが」

「ライザでも問題はないですよ。ブリガンディで最年少の魔導師になったのですからね。武は魔法と同じ意味を持ちます」


 母上の言葉ではあるが、俺には魔導士の方が上に思える時がある。長剣S級の兄上は戦場で大活躍するに違いないが、重傷者を救うことは出来ないからなぁ。

 それに姉上宇野広域魔法は防衛戦では大活躍するだろうから、やはり魔道師が上になるはずだ。

 とはいえ、オリガン家と言えば武を誇る家柄だからなぁ。姉上の存在はオリガン家としても異質な存在なのかもしれない。


「心配ありませんよ。オリガン家の家訓を大切にしているのですからね」

「力ではなく、その精神が問題だと?」

「レオンもオリガン家の分家なのでしょう? それが分かれば父上も安心すると思いますよ」


 奥が深いというか何というか、オリガン家で割るという誇りを常に保てば良いってことかな? それを鼻にかけるようでも問題だけど、選択を迫れるようなときの判断基準はオリガン家の家訓を元にすれば良いということになるんだろう。

 常に義はどちらにあるということを考えれば良いだけだ。だけど、その義が上辺だけでないことを確認する必要が出てくるんだよなぁ。

 義を大事にするというのは案外難しく思えてきたぞ。


「この地に虐げられた人達を避難させて建国したのですから、レオンの行動には父上も喜んでいますよ。種族が変わっても私達の子供であることは確かですからね。この国の生末を長く見守っていけるでしょう」

「ある程度の見極めまではこの地に留まるつもりです。ですが、この地で最期を迎えることにはならないかと」


 俺の言葉に、母上が寂しげな表情を浮かべながら頷いてくれた。

 あの出城から脱出したレイニーさん達が亡くなったら、その後はこの地を去ることになるだろうな。

 それを考えると30年ほどの時間があるんだが、その間にどこまでマーベル共和国を発展させられるかが問題だ。

 このまま共和国で維持できれば良いのだが、都市国家並みの大きさだからなぁ。下手な治世を行うようでは、エクドラル王国内の自治都市に成り下がるのも時間の問題に思えてしまう。


 もっとも、それはブリガンディ王国から袂を分かった貴族連合についても同じことだろう。マーベル共和国よりも大国に取り込まれる可能性は高そうだ。

 それでもブリガンディ王国に属するよりは自由度が高そうだし、何と言っても獣人族が弾圧に合うことはない。

 案外父上達は、完全な独立国家ではなくエクドラル王国の従属国家を目指しているのかもしれない。エクドラル王国の傘の下に入るなら、早々ブリガンディ王国としても手を出すことを躊躇うに違いないからなぁ。


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