【2月号】【第3話 助ケ出サレタ少女】
【死亡予定少女 作;CS4.8】
【第3話 助ケ出サレタ少女】
『アイサから、あなたに向けてのニュースだよ! ニュースだよ!
四条大宮忍、4月25日午後10時18分頃、誘拐団から解放』
その文字が出たのを見て、僕は既に学校では無く、廃墟に向かって走り出していた。
誘拐団『暴風雨』。まるで暴風の台風のように狙った獲物を奪っていく、誘拐を目的とした組織団体の事である。1週間に一度、いや数か月に3,4度くらいの割合で世間のニュースに、新聞の一面を飾るくらいに犯罪を行っており、人攫いも一度や二度ではない。どうやらその組織が四条大宮さんを誘拐したんだそうだ。
(もしかして、これが原因で四条大宮さんは自殺する事になったんではないだろうか?)
四条大宮さんは決して社交的な性格とは言えないかも知れない。けれども、いきなり自殺するような事は考えられない。けれどもそれが、この誘拐事件に関連しているのだとしたらあり得ない話ではない。
四条大宮さんは誘拐事件によって心に傷を負ってしまって、その心の傷が原因で、自殺を決意したんだとしたら……あり得るかもしれない。
「となると、一番良いのはこの誘拐事件を解決する事だ」
解決する事によって彼女が自殺する原因を壊す事が出来る。そうすればきっと彼女は……
『来て良いよ、武人君……。君は私の命の恩人なんだから』
そう言いつつ、彼女は服をはだけながら、僕へじりじりと……
(……って、アホか! 何を考えてんだ!)
そう言う事を考えるのは、彼女を救った後である。そうこうしている間に、目的の廃墟へと辿り着いた。どうして一介の高校生でしかないはずの僕が、『暴風雨』の居る場所を知ったかと言えば勿論アプリを使ってである。アイサが未来視出来る情報は、僕の趣味嗜好から予測して未来を予測するのである。
僕は事故死とかのニュースをいっぱい集めていたから、四条大宮さんや桐ケ谷さんの未来の事故死のニュースを手に入れた。誘拐事件もいっぱい集めていたし、それで四条大宮さんの未来の誘拐事件も手に入れた。と言う事は、今の『暴風雨』の情報を手に入れようと思ったら、『暴風雨』のニュースを見まくる事によって未来の『暴風雨』の情報が手に入るだろうと思った所、
「本当に入って来たな」
そうしてやった所、未来の『暴風雨』のアジトが解散するニュースを手に入れる事が出来た。だからこそ、こうやって『暴風雨』を止めに来たのだ。四条大宮さんを救うためである。
「さて、どうするか……」
今だって怖くて仕方がない。けれども、彼女は助けたいんだ。
============
僕はそのまま廃墟の裏口へと行き、その廃墟の中に入った。中ではもう既に『暴風雨』の連中が、四条大宮さんをどう痛めつけるかを相談していた。これをどうにかしない限りは、四条大宮さんの自殺を止められそうにない。
「――――――けれども僕は、どうにかして彼女を救わないといけない」
力なんて何もない。警察に行ったってすぐに来るとは限らない。けれども僕が、なんとかして四条大宮さんを救う。そう、救った借りで彼女に……って、まずはなんとかしないと! 僕はそう言いつつ、手でカッターナイフをしっかりと掴み、そしてそのまま煙を発生させる手りゅう弾を投げ入れた。投げ入れられた手りゅう弾から煙が発生して、『暴風雨』の連中が戸惑っている。
(い、今の内だ)
僕はそう言って、カッターナイフで紐を斬って、四条大宮さんを助け出す。いきなりこんな状況になってしまって彼女は困惑しているようだけれども、けれども僕は『暴風雨』の連中に気付かれないように逃げ出した。
「ありがとう。助けてくれて……」
その言葉に報われた気分になる僕であった。これで全てがめでたしだ。僕は彼女を助け、助けられた彼女は僕の事を好きになり、それから始まる恋物語。まさにハッピーエンドじゃないか。その時の僕はそう思っていた。
もう既に次の死のニュースが届いているとは知らずに―――――――――――。
【続く】




